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#872
2023年6月25日

内館牧子さんとテレビ(後編)

【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】内館牧子
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)

<プロフィール>
1948年・秋田県生まれ
幼少の頃、東京に移り住む
武蔵野美術大学 デザイン科
重工業メーカー 総務部に勤務
13年半勤めた会社を退職
1988年 脚本家デビュー
「ひらり」 NHK 連続テレビ小説
「毛利元就」NHK大河ドラマ
「白虎隊」 テレビ朝日 などヒット番組の脚本を多数手がける
現在、高齢者小説4部作が100万部を超える大ヒットとなっている

<高齢者を題材にした理由>
会社勤めをしていた時、社内報の編集をしていたんです。
大きな会社でしたから毎年100人近くが退職していきます。
退職者に「今後何をしたいですか?」と質問すると「孫と遊ぶ」とか「菊を育てるのが趣味だから菊を育てる」、「妻と温泉に行く」とか。
その時は、あぁいいなぁと思ったんです。
でも、私が会社をやめて、時が経つにつれ、「実はもっと仕事がしたかったのでは?」。と思うようになって。
特に私は、造船現場にいましたから、船を造る腕がみなさんあったわけなんですね。
もっともっと会社にいて仕事をしたいと思っている人がいたんだろうなぁと。
「もっとできたよね」と思っているのでは?と、それがきっかけなんです。
登場人物は、私が作りました。
人物をきちんと作り上げるとストーリーは、動くんですね。

東大の法学部を出たエリートに設定したら、「なんで東大の法学部の必要があるんだ」「あまりにも自分とかけ離れている」「もっと一般的な人を書け」と言うご意見をたくさんいただいたんです。
でも、あれは絶対、東大法学部じゃなきゃダメなんです。
東大法学部を出ようが、大学を卒業していなかろうが、結局着地は一緒でしょ。
東大法学部という綺羅星を纏った男が、結局は一緒か!と。
ソフトランディングできないガーンという衝撃があるんです。
その悲哀を書きたかったんです。



<著書「老害の人」>
昔話、自慢話、愚痴をばら撒く高齢者たちとその家族を描いた物語。

老人側にも若い人側にも、一緒に生きる上でお互いに言えないことっていっぱいあると思ったんですね。
現実社会ではなかなかぶつかれないから、そこをぶつからせようと思ったんです。
どんな老害があるかな?と思ったら、同じ自慢話を繰り返す、病気自慢、元気自慢、孫自慢。あとは「死にたい。死にたい」と言う。
それらを毎日聞かされる家族はたまんないですよ。
全ては、認めてもらえないからじゃないかと思って、その話を書こうと。

<年齢の重ね方>
若い時は、40歳になるなんて考えてもいなかったし、まして74歳なんて。
でも実際なってみてよ~くわかったのは、年齢相応に間違いなく衰えてくるんですね。
体力、気力、持久力の衰えは間違いなくあるんです。
だから、やれることを今やっておきなさい。と。

<生まれ変わったら>
私は、医者になります。
小児科かスポーツ外科。
若い人たちをなんとか元気に生かしたいんです。
若い人の力になりたいなぁと思って。
間違いなく医師になります。
生身の人間を苦痛からなんとか助けたいんです。



<脚本家として守っているルール>
普通に暮らすってことなんです。
橋田壽賀子先生に教わったんです。
「脚本書く人はね、今、大根の値段が一本幾らかわかってないとダメよ。
朝と夜が逆転するような生活をしていると、人に寄り添ったものは書けないから。」と。
いまだに心の中にあるんです。
だから、朝ごはん食べながら「羽鳥慎一モーニングショー」を見たり。
「羽鳥慎一モーニングショー」を見終わったら、お茶碗洗って。
10時くらいから書き始めて、夕方5時のチャイムと同時に終了。
それから筋トレやるんです。



<脚本家を目指す人へ>
とてもいい仕事だと思いますが、一人でやる仕事ではないんです。
小説は編集者と、脚本はプロデューサー、監督や出演者、スタッフと意見を交わすので、胃袋が強くないと参っちゃうんです。
いつでもどんな状態でも眠れて食べられるってことは絶対条件だと思います。



<テレビの役割>
だんだんテレビを観る人が少なくなってるとか言いますけど、WBCは視聴率40何%もとったんですよね。
昔は朝ドラだって視聴率40%くらいあったわけですから。
時代に呼応して、今の時代にWBCがもっていた何かをどう還元していくかということだと思うんですね。
大谷翔平選手のようなスターがいて、後を継ぐであろう佐々木朗希投手がいて、突然ヌートバー選手がきた。そういったこと全てがドラマを作ったと思うんですね。
ですから私は、テレビは、常に時代と向き合って時代よりも半歩先を行けば、絶対に見捨てられることはないと思いますよね。
難しいですけどね。



<テレビとは>
大事な情報源であり 憧れの場所