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#871
2023年6月18日

内館牧子さんとテレビ(前編)

【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】内館牧子
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)

<プロフィール>
1948年・秋田県生まれ
幼少の頃、東京に移り住む
武蔵野美術大学 デザイン科
重工業メーカー 総務部に勤務
13年半勤めた会社を退職
1988年 脚本家デビュー
「ひらり」 NHK 連続テレビ小説
「毛利元就」NHK大河ドラマ
「白虎隊」 テレビ朝日 などヒット番組の脚本を多数手がける
現在、高齢者小説4部作が100万部を超える大ヒットとなっている



<観てきたテレビ>
大相撲とプロレス中継、ファイティング原田(ボクシング)が今でも私の3本柱でw
スポーツ中継が一番多かったです。
4歳くらいの時に、誰も信じないんですが、私いじめられっ子だったんです。
ちょっと触られるとすぐ泣いて、「え~っ」ってみんな言うんですけどw
いつも私を助けてくれたのが、力道山によく似た男の子。
その子のことがずっと胸にあったんですね。
だから体が大きくて、威勢のいい人は私を騙さない。いじめないみたいなことがすりこまれていて。
「そうでもない!」ってわかりましたけどね、大人になってw

<脚本家を目指したキッカケ>
男女格差がすごい時代でしたし、女子社員は、お使いとかコピー取りとかお茶汲みとか。
それは4年制の大学を出ようが関係ないんですね。
何年かそこで頑張ればいろんな仕事ができるようになるって言うんだったら私多分、会社にいたと思うんですね。
でもそうじゃないって言うのが途中でわかって、「ここにずっと定年までいてもしょうがないな」と思いましたね。
そんな時、新聞に脚本家養成学校の広告を見つけたんです。
「業界は若い力を求めています。プロになるまで指導します」って書いてあったので、これは行くべきではないか?と思ったんです
当時は、ろくに映画も舞台も観ていなかったのに学校に入っちゃった。
学校に入って初めてわかったことがあるんです。
脚本家っていうのは作家の一種なんだ。
脚本家って技術者で、原作を渡されてシーンで切っていくテクニックを学校で教えてくれるんだと思ってたんです。
自信はなかったんですが、得意なものを一つ作ってそれについて書きなさい。
って先生がよくおっしゃってたので、私は相撲ドラマばっかり書いてたんです。
全然役に立たなかったですけどねw



<脚本家として花開くキッカケ>
脚本家になりたい人たちが読む月刊誌を毎月購読していて、その一般公募に応募したんです。
まだ会社で働いている時に、現役の大企業のOLの悲哀を書いたんです。
そしたらそれをNHKのプロデューサーがたまたま目にして、「この人は鍛えればつかえるかも」って思ったって。
それで電話がかかってきて。それがキッカケなんです。
当時は破天荒な生き方をする人のドラマが多かったんです。
そこにOLが「毎日毎日つまんないわ」って言ってるドラマが新鮮だったって言われました。

<脚本家になってからのテレビドラマの観かた>
変わりましたね。
こうやってセリフを書かないんだな。でもわかるな。
わからせるためにどういう工夫をしているな、というところが気になってきました。
橋田壽賀子先生は、はっきりと私に「セリフは全部書くの。」っておっしゃった。
テレビドラマは、何かをしながら見ている人が多いから、セリフで説明しないとわからないから全部書くのよ。
「そおかぁ」と思って。
で、橋田先生のドラマを見ると、「なるほど。こうやって書くんだな」と。

<脚本の書き方>
大きな企業に13年半勤めてましたから、それがものすごく大きかったと思います。
ゆくゆくは脚本家になるんだと思って勤めていたわけではないので、日常のいろんなことが、いちいちリアルに響くわけです。
その度にズキーンときたり頭にきたりするわけですよね。
男の人を上手に騙す人もいたし、こうやって手練手管を使うんだとか。
そう言う日常を物語を書く時に思い出すんですね。

<テレビの移り変わり>
テレビは時代と呼応していくものだと思っているんですけど、ちょっと呼応しすぎて、最近は若者至上主義が過剰じゃないかという気はしています。
良かれと思ってやったことがウケない。
若い人はもっと先を行ってるわけですから、その辺は考えるべきかもしれないですね。

<一番好きな自分の作品>
「ひらり」っていう朝の連続テレビ小説を書くまでは、「脚本家」って職業欄に書けなかったんです。
「脚本家と呼べるレベルにないな」と思っていましたし、恥ずかしかったので常に自由業、自営業って書いてました。
「ひらり」を書いて視聴率が40%を超えて、「おもしろい」ってたくさんの人に言ってもらえて。
あの頃から職業欄に「脚本家って書いてもいいかなぁ」って思うようになりました。
主人公のセリフは相撲の好きな女の子だから、バンバン自分のことが書けて、主人公のお姉ちゃんは、大きな会社に勤めていて、私が経験したことが全部書ける。
再放送を観直したら、「何これ、私、自分のこと書いてる」って思ってw

<今、観てみたいドラマ>
熟練俳優による本格的な時代劇を観たいです。
例えば、亡くなった方ですけど、勝新太郎さんや山田五十鈴さんとかが出演される時代劇を観てみたいなぁと思いますね。
時代劇は、今もありますけど、出演者が若くなりますでしょ。
今、若くて非常に上手い役者さんもいるわけですが、勝さんを主役にした時代劇ってどんなに面白いかなって思うんですよね。



<テレビ朝日の放送番組審議会委員を17年間勤めた内館さん
 記憶に残る議論は?>
毎回すごく激しいんですよ。
メンバーをご覧いただくとわかるように、歯に絹を着せると言うことを知らない人たちばっかりですから、毎回面白かったです。
褒めるよりも、こうしたらどうか、ああしたらどうかという代案がすごく出てきて、特にバラエティの時は面白かったですね。
私がテレビ朝日で放送された「白虎隊」の脚本を書いたんですけど、「課題番組にしないでくれ」ってお願いしたんですw
あんなうるさい人達に言われるの嫌だからw
でもすっごく審議委員に褒められて、「課題番組にすれば良かったなぁ」って」w

<放送番組審議会委員になって
 執筆活動への影響>
審議委員のみなさんは、各ジャンルで第一線にいる方達なので、何かに対する物をおっしゃる時に、全然違う角度から意見をおっしゃるんですね。
それがすごく刺激的で、「あぁ、こういう考え方もあるのか」と。
それらがすぐに脚本のセリフに生かされると言うことはないんですけど、自分の中では(言葉の世界が)広がったなという印象です。

<テレビ朝日の個性>
「極端に破天荒じゃない」ところだと思ってます。
ノリをわきまえた破天荒。
そこはすごく大事だと思ってます。
最後に真面目が勝つと私は思ってるんですけど、「真面目」という言葉を今、すごく嫌うケースが多いでしょ。「あいつは真面目だからよう」って。
その真面目で取られるとちょっと困るなと。
ノリをわきまえた破天荒だと思います。