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#777
2021年6月20日

テレビ塾「プロデューサーの仕事」

【講師】
テレビ朝日コンテンツ編成局 ストーリー制作部
内山聖子 エグゼクティブプロデューサー

テレビ朝日スポーツ局 スポーツセンター
小林麻衣子 ゼネラルプロデューサー

【進行】大下容子(テレビ朝日アナウンサー)

【番組司会】寺崎貴司(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
「第54回テレビ塾」のテーマは「プロデューサーの仕事」。
ドラマとスポーツそれぞれで活躍する2人に仕事の内容や魅力を語ってもらいました。



<ドラマプロデューサーの仕事>
【講師】
テレビ朝日コンテンツ編成局 ストーリー制作部
内山聖子 エグゼクティブプロデューサー


どうやってドラマのプロデュースをしていくのかというと、私の場合は大きく3つの入口をとっています。

1)ものすごく面白い漫画や小説や原作に出会った時

2)キャストからイメージする時

例えば「ドクターX」は米倉涼子さんが、私が好きだったブラックジャックだったら?という妄想からスタートしました。

3)日常への怒りなどをモチベーションにしてオリジナルの企画を作る時もあります。


企画が決まると、私の一番好きな「キャスティング」という仕事があります。
役名をつけることも大事な仕事で、実は「ドクターX」では。。。

『大門未知子』という主人公の名前は、「ドクターX」というタイトルから「未知」なる医者という意味で『未知子』と私が名付けました。
『大門』という名字は、占い師でもある脚本家の中園ミホさんが字画で縁起がいいと言うことで決まったんです。
他の役名も中園さんが占いで決めました。

<印象に残っている仕事>
第1シリーズの第1話の冒頭のシーンは、「失敗」から転じて生まれました。

当時ブロードウェイミュージカル「シカゴ」で格好良く踊っている米倉涼子さんからイメージして「クラブで激しく踊る大門未知子」を最初のシーンと設定していたのですが、「どうして医者が踊るの??」と言われ急遽変更することに!
「シーン1」の前に「シーン0」を作り、米倉さんのエピソードが伝わるような登場場面を作ったんです。
結果的にそれが組織に絶対「御意」と言わない大門未知子のハングリー精神を産んだ場面を表すことにもなり功を奏しました。
それ以降「ドクターX」の台本には毎回「シーン0」が登場するようになりました。

<スポーツ番組のプロデューサーの仕事>
【講師】
テレビ朝日スポーツ局 スポーツセンター
小林麻衣子 ゼネラルプロデューサー


今年10月に開催される世界体操、世界新体操の中継を担当します。

世界体操のメインキャスターである松岡修造さんには、入社当時からずっとお世話になっています。



<松岡修造さんから見た小林プロデューサー>
松岡「ひとことで言うと…情熱麻衣子 情熱朝日というか人への想いが強いから、選手に対してもスタッフに対しても心の部分で動く。

冷静な部分を切り捨てないといけない部分が、この仕事ってどうしても大事になってくる。
それをするのが本当に大変な人だと思う。」

スポーツ番組のプロデューサーとしていつも考えていることは、「スポーツの枠を超えて伝えられることとは何か」。

今回、福岡県北九州市で「世界体操 世界新体操」が開催されます。
街が一つになって元気になれるだけではなく、この大会が来ることでどのように街が変わっていくのかも伝えていきたいと思っています。

母になって強く考えるようになったことは「子育てにスポーツが与える物とは?」。

「体操には子育ての大きなヒントがある」と感じるようになってきました。

最近子育てのキーワードとして「自己肯定感」が挙げられますが、体操の初歩である「でんぐり返し」や「逆上がり」の中に、子どもだけでなくそれを見守る親も「自己肯定感」を感じられる瞬間があると思うんです。

内村選手のようなアスリートだけでなくどんな選手も「でんぐり返し」や「逆上がり」が出発点だったことは確かで、「競技」だけではなくそういった「未来に繋がる何か」をこれからのスポーツは伝えていかなきゃいけないと思い番組作りに生かそうとしています。



<印象に残っている仕事>
プロデューサーとして携わった世界体操の一年目「2017年男子予選」の中の『内村航平選手が白井健三選手の背中を叩くシーン』が印象に残っています。

実はこのシーンの30分前、大会の主人公でもあった内村選手が予選で左足を痛めてしまうアクシデントが起きてしまったのです。

私はカナダで行われていたその中継の後に現地に向かう予定で、東京のテレビ朝日で観ていましたが、その瞬間は本当に頭が真っ白になりました。

色々皆で策を練った挙句、当初予定にはなかった「決勝をスタンド席で観戦する内村選手」、その姿を試合の映像だけでなく中継の中に加えることに。
その結果、想像を超えるストーリーが生まれました。
スポーツはナマモノであると身に沁みて実感したシーンでした。



<仕事の魅力&やりがい>
小林麻衣子プロデューサー:
閉塞感のある毎日の中でアスリートの素晴らしいプレイや心に響く言葉を伝えることは「誰かの何かを変えられている」と信じています。


内山聖子プロデューサー:
フィクションという物語は辛い時や理不尽な思いをした時に一番必要な分野だと実感しています。
「一滴の嘘」で全然違う世界に行けたり、勇気を与えられるようにしたいです。