バックナンバー

#767
2021年4月11日

尾木直樹さん 新型コロナウイルス禍の教育とテレビ(前編)

【番組司会】寺崎貴司(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】尾木直樹(教育評論家)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)




<尾木直樹 プロフィール>
1947年 滋賀県生まれ。
中学・高校教師として22年。
大学教員として22年。
計44年間 子供を主役とした教育を実践。
その成果は230冊を超える著書、DVD、映画などにまとめられています。
現在は、テレビ番組や講演会などで日本の教育の問題点などを提起。
臨床教育研究所「虹」の所長として現場を訪れ、子育てや教育などの調査研究に精力的に取り組んでいます。

【信条】
子育てと教育は愛とロマン
学校は安心と失敗と成長の砦

<教育現場の現状>
去年の2月に総理が「休校に入ります」と発表したので、現場は慌てました。
指示もできなければプリントも渡せていなかったので大変でした。
子供たちも大変でした。
オンラインの整備が遅れていたため、プリントばかりが送られてきた。
そして自宅学習の成果を成績に反映すると大臣が発表したため、家庭内での関係がおかしくなることも。
私立校ではオンラインが整備されているところが多かったが、公立校ではそうではなかったところも多かったため、夏休みも返上しての授業が始まった。
公私間の格差、地域間の格差が生まれた。
そんな中での子供たちのメンタル面が一番心配だと尾木さんは語ります。
相談したくても先生方も衛生面の管理や業務に追われて忙しく、なかなか相手ができない状況。
新しい出会いを求めて入った大学でリモート授業が続くと、友達もできない。
3000人規模までの大学だと、オンラインでも双方向の密な授業ができるが、マンモス大学になると一方通行になりがち。

<リモート授業によるメリット>
12月に大学で「休校中に何か身につけたことがありますか?」と質問したところ、ほとんどの学生から「自発的」というキーワードが出てきた。
どんどん自分で課題を決めて行った結果、哲学に辿り着いた学生や、体育会系の女子は、これまで与えられたトレーニングをやっていたが、一人でやらなくてはならないため、今は、自分で考えたメニューでトレーニングを始めた。など。
深く自分を見つめて、友達ってなんだろうとか、すごく考える良さはあると思う。
チャット機能が使えることで、これまで質問してこなかった学生が積極的に発言してくるようになった。


<学生たちのメンタルケア>
座談会をやることがメンタルケアにつながってます。
悩みは個々バラバラです。オンラインでも個々と繋がる努力を先生方にもしてほしい。
自分の話を聞いてくれる、寄り添ってくれている人がいるという安心感を与えることが大切。

<教師になったきっかけ>
教師は嫌いだった。
中学時代に理不尽な思いをしたことがあったので学校の思い出は嫌なことばかりだった。
いざ就職を考える時期になった時、母親から「直樹は教師が向いてるよ」と言われた。
母親は何も理解していない!と思ったが、「学校で嫌な思いをした直樹は、子供の気持ちがわかるいい先生になれる」と言われハッとしたそうです。


<教師になってみて>
公立校に赴任した時、天職だと思った。
色んな家庭環境の子供、成績の子供、不登校の子供、色んな子供たちに接することで、世の中が初めて見えた気がした。
環境的に恵まれない子供、非行に走る子供など、マイノリティな子供たちに寄り添うようになっていった。今、彼らの成長ぶりが自分のこと以上に本当に嬉しい。