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#764
2021年3月21日

メディアフォーラム2021
東日本大震災から10年
「メディアは何を伝えてきたのか」後編

【番組司会】寺崎貴司(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【テーマ】
テレビ朝日と朝日新聞が共同で2012年の3月から開催している「メディアフォーラム」。
今回はリモートで開催しました。

東日本大震災、全国で起きている自然災害や新型コロナウイルスなど、10年で変化していくメディアの使命を考えました。



【出演者】
<コーディネーター>

池上 彰/ジャーナリスト



<司会・進行>
下平さやか/テレビ朝日アナウンサー



<パネリスト>
丹羽美之/東京大学大学院情報学環准教授
メディア・ジャーナリズム・ポピュラー文化を専門に研究。



安田菜津紀/フォトジャーナリスト
夫の両親が岩手県で被災 陸前高田市を中心に記録し続けている。



箭内道彦/クリエーティブ ディレクター
福島県出身 地元を応援するためバンド「猪苗代湖ズ」を結成。
CDなどの売り上げ全額を寄付。



<中継>
東野真和/朝日新聞編集委員 釜石支局長
震災の直後から岩手県 大槌町に駐在 現地から復興を見る記事を書く。



千葉顕一/東日本放送 気仙沼支局カメラマン
気仙沼の大津波を撮影 テレメンタリー「津波を撮ったカメラマン」は、ニューヨークフェスティバルで国連賞(銅メダル)を受賞。




<復興とメディア>
◇安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
「復興五輪」と掲げられているが、綺麗に整備されたところだけでなく、中間貯蔵施設など何十年先まで人が暮らせない場所もあることなど、光だけでなく影の部分も伝えることが大事。

◇箭内道彦(クリエーティブ ディレクター)
「もう10年。」「まだ10年。」と感じ方は様々のように、被災された方にも「もう大丈夫だ」という人もいれば、「今一番辛いです」という人もいる。


<メディアが伝えなかったこと>
◇安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
震災直後は避難所で女性達が着替えの場所に困っていたり、物資を管理している人に男性が多く生理用品の事を言いにくいなどの声が上げにくかった。
メディア側にも女性が増えてきてはいるが、これからはジェンダーな意識とバランスを保つことが重要になっていく。

◇東野真和(朝日新聞編集委員 釜石支局長)
当時は「釜石の奇跡」と賞賛された「岩手県 釜石市の防災教育」自体は褒めるべきことであるが、犠牲になった人も多くいる中で、「釜石の出来事」と呼び方は変わっている。

◇丹羽美之(東京大学大学院情報学環准教授)
放送されたドキュメンタリーの10年を見ると、「東日本大震災関連の報道」は年々減ってきてはいるが、これまでテレメンタリーで120本以上、NHKスペシャルで200本以上放送されている。かなりの数が放送されているので、この記録を今後生かしていく方法も大事。

<新型コロナウイルス禍とメディア>
◇東野真和(朝日新聞編集委員 釜石支局長)
大槌町は現時点で感染者がゼロ。外からの人を快く受け入れている方が多いが、本心は非常に怯えていると感じる。

◇千葉顕一(東日本放送 気仙沼支局カメラマン)
地元では感染に関して震災の時より情報を出す側もかなり、慎重になっていると感じる。
しかし報道のスピード競争(抜きネタ)は変わっていない。


<メディアフォーラムを10年続けてみて>
◇池上彰(ジャーナリスト)
10年経つと、当時のことその後の経緯を知らない若い人も増える。
伝える側では「取材経験や体験」を継承していくことが大事。

新聞と放送は違うメディアだが同じことを取材していると、同じような課題って出てくる。

今回、NHKと民放が一緒になって様々な映像を互いに使いながら、取り組んでいるように、メディアの枠を超えてきちっと継承していくことが、私達10年目の大きな責任だなと思う。