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#763
2021年3月14日

メディアフォーラム2021
東日本大震災から10年
「メディアは何を伝えてきたのか」前編

【番組司会】寺崎貴司(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【テーマ】
テレビ朝日と朝日新聞が共同で2012年の3月から開催している「メディアフォーラム」。
今回はリモートで開催しました。

東日本大震災、全国で起きている自然災害や新型コロナウイルスなど、10年で変化していくメディアの使命を考えました。



【出演者】
<コーディネーター>
池上 彰/ジャーナリスト




<司会・進行>
下平さやか/テレビ朝日アナウンサー




<パネリスト>
丹羽美之/東京大学大学院情報学環准教授

メディア・ジャーナリズム・ポピュラー文化を専門に研究。



安田菜津紀/フォトジャーナリスト
夫の両親が岩手県で被災 陸前高田市を中心に記録し続けている。



箭内道彦/クリエーティブ ディレクター
福島県出身 地元を応援するためバンド「猪苗代湖ズ」を結成。
CDなどの売り上げ全額を寄付。



<中継>
東野真和/朝日新聞編集委員 釜石支局長

震災の直後から岩手県 大槌町に駐在 現地から復興を見る記事を書く。



千葉顕一/東日本放送 気仙沼支局カメラマン
気仙沼の大津波を撮影 テレメンタリー「津波を撮ったカメラマン」は、
ニューヨークフェスティバルで国連賞(銅メダル)を受賞。




<2012~20年 メディアフォーラムで指摘された問題点>
*いざとなると、メディアはパニックを恐れ、自己規制する。
*権力側の発表を垂れ流し「専門家」の権威にたよる。
*メディアが「単純化」して伝えてしまう。
 「風化」「風評」などありふれた言葉で、一括りにしてしまう。
*「寄り添う」という言葉への違和感。

◇千葉顕一(東日本放送 気仙沼支局カメラマン)
津波は撮れたが近所の人たちの自分の家が流されていく表情や愕然とする様子を撮影できなかった。
なぜあの時カメラを回せなかったのか?と今でも反省している。

◇安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
震災直後に陸前高田市の海沿いに一本立っている「奇跡の一本松」を撮影。
勇気付けようと義理の父に見せたが、「何万本もの松林と一緒に暮らしてきた自分たちにとっては、津波の威力を象徴するものでしかない」と言われ伝える難しさを痛感した。

◇箭内道彦/(クリエーティブ ディレクター)
千葉カメラマンは反省しなくていいと思う。
撮らないこともジャーナリズムだと思う。


<伝える側と伝えられる側のギャップ>
◇千葉顕一(東日本放送 気仙沼支局カメラマン)
仮設住宅に取材に行った時に、テレビカメラを見ただけで嫌がる人がいるのでテレビカメラを持って団地内を歩かないでくださいと言われた。
雨が降れば仮設、雪が降れば仮設、台風がくれば仮設、選挙があれば仮設、大臣が来れば仮設、ありとあらゆる取材が仮設住宅のドアを叩く。
理解を示してくださる方もいるが、今後ますます取材が厳しくなると思う。

◇東野真和(朝日新聞編集委員 釜石支局長)
新聞の取材はテレビカメラを持っていくことはないので、そんなに嫌がられた記憶はない。

◇箭内道彦/(クリエーティブ ディレクター)
新聞とテレビの差ではなく、人と人の取材であることが大事。

◇丹羽美之(東京大学大学院情報学環准教授)
テレビと新聞の違いはあると思う。
カメラ用語に「ロケーションハンティング」「シューティング」などがあるが、狩猟用語。カメラを向けられた側にとっては、狙われているような感覚を受けることも、「カメラの持つ暴力性」を使う側が自覚し取材することが大事。


<2012~20年 メディアフォーラムからの提言>
*正直に伝える メディアの「自己規制」も伝える。
*プロセスを伝え「歴史を刻め」!「石碑」として伝え続ける。
*「無関心」のせいにしない。
*「被災地」は「課題先取り地域」→「理念」のある報道をもっと良い国に。

◇池上彰(ジャーナリスト)
私たちが記録して後世に伝えていく「石碑」になること。
無関心を視聴者や読者のせいにしない。
日本中が抱える「過疎」という課題が被災地には先取りしてやってきている。
つまり、被災地の問題は日本の未来の問題でもある。
そして報道をする場合は「理念」を持って伝えることが大事。