バックナンバー

#749
2020年11月22日

リサーチャーの仕事 喜多あおいさんに聞く

【番組司会】寺崎貴司(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】喜多あおいさん(リサーチャー)

喜多あおいさん
リサーチャーの第一人者と言われ数々のヒット番組を裏方として支えてきた喜多あおいさん。
2014年 放送界でその功績が認められ放送ウーマン賞を受賞。
自分で培ってきた情報収集のテクニックやノウハウをまとめて本も出版。
最近ではリサーチャーの育成問題やインタビューをまとめた本も発売されました。
バラエティからドラマ、ドキュメンタリーにいたるまで、テレビ界でリサーチといえばこの人と言われています。


<リサーチャーの仕事とは?>
制作者のクリエイティブ、創造のスイッチを押すことが仕事。
プロデューサーから「こんなモノが創りたい」「こんなテーマでやりたい」と言われたとき、具現化する材料を探してきてスタートが切れるようにするパターンと、具体的に「これ」を調べて下さいと言うパターンがあります。


<リサーチャーになろうと思ったきっかけ>
調べ物が好きでした。
母が難しい言葉で話していて、意味は辞書で調べなさいと言う教育を受けてきました。辞書で意味を調べて理解するとそれを話したくなる。
子供の時に話すとその意味を聞かれ、自分で咀嚼した言葉で教えると周囲が喜んでくれる。それが嬉しくて。なんでもわからないものは調べるようになりました。




<ドラマのリサーチ>
ドラマのプロデューサーや演出家によって調べる方向性が全く違うところが面白いと思います。現実には存在しないものが主役だった場合の整合性を問われたりします。スタートラインに立つ前の世界観作りのお手伝いになります。
また、視聴者の皆さんはどう言う気持ちになるのかを迎合するわけではなく、どんな反応があるか推測できる材料を集めたりします。
様々な立場の人を自分に憑依させて台本を読むと、気づきが出てきます。
その気になるところについて再度調べます。
ヘルメットを被ってロケの場所を探したりもします。


<喜多さんの仕事 風景>
喜多さんの職場を訪ねました。
辞書や事典など、およそ三千冊ある資料室で仕事をするという喜多さん。
情報収集するための道具がこちら。



なかでも、タブレットの使い方には、ポイントがあるそうです。

ターゲット層が10代や20代、男の子、男性のような視点でものを提案したり調べものを要求されることもあるので、タブレットの中に自分とは違う性別や年代の世界を作り上げた中から情報のインプットを日々するようにしています。
気をつけなければいけないのは、閉塞した中にいるのに、世界と繋がっている気になってしまうことがリサーチャーとして一番危ないと思っています。
タブレットは、私にもう一つの世界を作ってくれるツールです。



“いま女子高校生には流行っている洋服”を調べてもらうと、すぐにインターネットを使って調べるのではなく、オシャレなどの属性やシーンを書き出すことで、何から取り掛かるべきか分かり、軸となるキーワードが見つけやすいです。



検索のキーワードを頼りにすることが大切です。


<心がけていること>
プロの三原則
・情報の出典がどんどん変転するので原点を探す(いつ生まれた情報なのか?)
・複数ソース主義
・アフターイメージ(集めた情報が及ぼす影響を常に考える。)

調べ物は、その日が終わったら全部白紙にして、翌朝はゼロから調べ直します。
関西では一回アホになると言うのですが、これをやらないと情報はどんどん新しいものになってしまうので。




<好きな番組>
「徹子の部屋」
番組を通して世の中が見えます。
一番のポイントは話し言葉の変遷です。
昔の映像の中にかつて日本人が使っていた日本語や立場の違う人それぞれの言葉選びが観てとれてとても面白いと思います。
徹子さんは、相手の話し方やトーンや言葉やテンションを写しているところがとても楽しく。


<リサーチャーの今後>
情報は、テレビに限らずどの分野においても、とても必要とされるものなので、情報のプロであるリサーチャーは必要とされ、フィールドはどんどん広がっていくと思います。
自分しか探せないソースを見つけるのか?、日々ソースをアップデートするのか?、自分にしかアウトプット出来ないものを作るのか?
なんでもいいので自分のオリジナル、専門分野を明確に作ることをした方がいいと思います。


<テレビとは?>
『頭の中を見ることができる鏡』