ごはんジャパン

過去の放送

2018年12月8日放送 「山形県 里芋」

『室町時代から一家相伝の里芋 “甚五右ヱ門芋”』
ロケ地:山形県最上郡真室川町

今回注目する食材は、山形県最上郡産の里芋“甚五右ヱ門芋”(じんごえもんいも)。室町時代から550年の歴史を持つ芋で、なんと日本で栽培しているのはたった一家族のみだという。
そんな“日本でたったひとつの里芋”甚五右ヱ門芋のおいしさの秘密を求めて、洋食界の重鎮・大宮勝雄シェフと前川泰之が現地へ。大宮シェフが里芋でしか作ることができない超クリーミーなグラタンを披露する!

2人が訪ねたのは、里芋づくりの“匠”、佐藤信栄さんと妻の清子さん。夫妻は後継者である孫の春樹さんと共に、およそサッカーコート3面分の畑で年間15トンの甚五右ヱ門芋を育てている。

収穫を手伝った2人は、一般の里芋と違って細長く曲がった形をしている甚五右ヱ門芋にビックリ。その後、蒸かしたものをご馳走になると――2人はその粘りにさらに驚愕! 実は、甚五右ヱ門芋の特長は、舌触りの滑らかさと驚異の粘りにあるのだ。

佐藤家では大昔の大飢饉の際、この甚五右ヱ門芋だけが実ったと言い伝えられ、以来、550年もの間、代々、大切に受け継いできたという。稲作農家として生きてきた信栄さん、清子さんも20株ほどの甚五右ヱ門芋を裏庭で細々と栽培し続けてきたが、後継者もおらず、甚五右ヱ門芋の歴史も途絶えてしまうだろうとあきらめかけていたと話す。
ところが10年ほど前、春樹さんが後継として名乗りを上げてくれたことから、甚五右ヱ門芋の生産を続けることになったという。

そんな甚五右ヱ門芋と佐藤家の歴史を聞いた大宮シェフは、一家が楽しめる料理を作ろうと決意! 大自然の中に得意のダッチオーブンを運び込み、3種類の料理を作ることに。その3種類とはロースト、グラタン、コロッケ。揚げればホクホク、焼けばホクネバ、蒸せばクリーミーに…と変化する甚五右ヱ門芋の食感と味を楽しんでもらいたいと意気込むが、はたして大宮シェフの料理は一家を喜ばせることができるのか!?
さらに、生物学者の福岡伸一教授が、甚五右ヱ門芋の舌触りと粘りの強さについて解説。大宮流ふわとろグラタンのおいしさも、科学的な視点から分析する。

今回のシェフ・レポーター

前川泰之(俳優)
大宮勝雄(『レストラン大宮』オーナーシェフ)

地元の匠

里芋の匠 佐藤信栄さん
妻 清子さん

地元の匠

匠の孫 春樹さん 妻 衣利子さん

今回登場した料理

大宮勝雄シェフ
「甚五右ヱ門芋のロースト」

大宮勝雄シェフ
「甚五右ヱ門芋のコロッケ」

大宮勝雄シェフ
「甚五右ヱ門芋のとろふわグラタン」

『里芋』

里芋の粘りの秘密


福岡伸一(生物学者、青山学院大学教授)

福岡:ネバネバ成分っていうのは多糖類によるものなんですけど多糖類の作用っていうのは保水です。我々のお肌の保水と同じようにプルプル成分をたくさん持ってるっていうことは水を繋ぎ止めて、簡単に蒸発しないようにしているっていう、全体をお水の層でカバーしてお芋を守っているっていうことです。

お肌に水分が欠かせないように、里芋のネバネバ成分も、保水効果で、里芋を乾燥から守っているんです。
さらに…
福岡:ネバネバ成分は水分を保持するのと同時にアミノ酸とか水に溶けやすいうま味物質をも保持するということなんでネバネバ自体においしさが含まれるっていうことなんです。

粘りと滑らかさを残す技

福岡:里芋は多重構造になっていて周皮って言われる外側の厚い皮が外敵から身を守っている。これをむくと皮層というものがコーティングしているんです。

里芋の皮むきといえば…和食の六角むきが一般的ですが、大宮さんは、たわしでこすり、表面だけ削り取りました。
里芋の一番外側を覆っているのが「周皮(しゅうひ)」。その内側に皮層(ひそう)という「第2の皮」があります。

ため込んだデンプンを守るために里芋の内側にはたっぷりのネバネバ成分があります。皮層までむいてしまうと、ネバネバ成分に含まれるうま味物質も抜け出してしまうと考えられています。

大宮さんは皮層を残し、うま味物質を逃がしませんでした。甚五右ヱ門芋(じんごえもんいも)の粘りと滑らかさ、そしてうま味も、余すところなく生かした技でした。