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2023.8.24

特別インタビュー/Special Interview with Perth Nakhun and Shiori Izawa井澤詩織

ドラマ「KinnPorsche」などに出演しているPerth Nakhunさんと、タイドラマ好きで知られる声優の井澤詩織さんのスペシャル対談。 『タイの俳優』と『日本の声優』。 一見全く違うものに思えるが、実はとても共通点のある職業であり、大盛りあがりのインタビューとなった。

日本でもタイドラマが徐々に広がってきたが、タイドラマを知る「きっかけ」はさまざま。
ドラマに実際に出演している立場のPerthさんと、それを客観的に見つつも自身も声優として活躍する井澤さんが、疑問をぶつけ合い、普段聞けない話にまで踏み込む。

Q:Perthさんがタイで俳優になろうと思ったきっかけは何ですか?
歌うこともダンスにも興味はあったのですが、恥ずかしくてできなかったんです。
特に歌うことは家族の前でも無理。ダンスも、1人で部屋で踊ってみてもダサいと思うほどでした。
タイに引っ越したときに、母が「モデルでもやってみない?」と勧めてくれたことがきっかけで、モデルや俳優をすることになりました。今は俳優になれてよかったと思っています。お母さんが自分の一番のファンです(笑)

Q: 井澤さんがタイドラマにハマったきっかけは何ですか?
最初は双子の姉が「おっさんずラブ」をきっかけにタイドラマにハマりました。面白いものは共有したいという姉妹なので、勧められるがままに「2gether」から始まり、その後も時間を惜しんでさまざまなタイドラマを見続け、今に至ります。もちろん(Perthさんが出演している)ドラマ「Cutie Pie(2022)」も「KinnPorsche(2022)」も見ています!

【タイドラマのワークショップについて】
Perth: 声優も俳優も役作りの時間があるかと思いますが、どのように作り上げますか?
井澤: 例えば「EDENS ZERO」という作品で私はピーノという役を演じています。アンドロイドやロボットは、
人間と同じようには呼吸をしないと思ったので、呼吸に気を付けながら演じています。役作りというよりは感覚で演じています。 
Perth: タイでは、(原作小説などの)作者がワークショップで物語の背景を説明してくれることもあるのですが、その機会に恵まれない時は台本を見ながら組み立てていきます。 どこが自分と似ているか、などを考えながら進めていく感じです。
井澤: タイのワークショップについて興味があるのですが、あれはどのようなもので、どのくらいの期間やるものなのですか? 
Perth: 時間は短くて1カ月。長くて3カ月のワークショップがあります。(演技の)先生と一緒に、演技をする際に恥ずかしくないように準備をしていくようなイメージです。 喜怒哀楽を出す時に恥じらいが出ないようにしたり、共演者との相性を「作る」のがワークショップです。ゲームのような感覚で、組み合わせや相性を確認していきます。役者側の演技の準備ができたな、と先生が感じたら、実際の演技をやってみる というような流れです。
井澤: 声優の世界では、前日に台本が来て、テスト1回だけやって本番に挑むということも多いので、タイのドラマの世界の話は面白いですね。日本の声優はどちらかというと瞬発力の仕事が多いと言われていたこともあります。

【演じる上での喜怒哀楽について】
Perth: 井澤さんは、怒ったり泣いたりする役をやるとき、マイクの前で声色を変えるだけですか?
井澤: いや、私はがっつり泣いてしまいます。
Perth: どのような演技が難しいですか?
井澤: 実は高笑いが難しいです。たとえばお嬢様の「オーホホ」というような笑い方は日常生活でも出すことがない声なので一番難しいです。 Perthさんは喜怒哀楽、どれが得意ですか?
Perth: 演技で泣くことはできますが、明るくてニヤニヤしたりする方が自分に似ていて得意です。
悲しい曲を聴いたり、悲しいことを考えて世界に入り込むとすぐに泣けるのですが、それでも本当に演技中に涙が出るか心配になることがあります。

【タイのドラマと原作について】
井澤: 日本は漫画を原作にしたアニメやドラマが多いですが、タイのドラマには原作があることが多いですか?
Perth: 原作があるものもあります。
井澤: 漫画原作が多いですか?
Perth: 漫画よりも小説をもとにしているものが多いと思います。

【タイ俳優とSNSについて】
井澤: SNSについて聞きたいことがあるんです! タイの方は、SNSを上手に使っているように見えますが、使い分けていますか?
Perth: 僕はあまり得意ではないんです。この仕事をしてなかったらやっていなかったと思います。
ドラマ「My Engineer」の放送1週間前に、宣伝のためだけに作ったぐらいです。
井澤: タイの俳優さんを追っていると、SNSをかなり頻繁に更新してくれるので、嬉しい反面、時々心配になることもあります。日本の俳優さんは「今どこにいるか」などの投稿は避けがちですし、更新頻度もそこまで高くありません。
Perth: 例えばカフェの中にいるときではなく、店を出た後に、そのカフェについて投稿するみたいなことを考えてやらないと時々危険ですよね。この前、日本のアニメJAPANに行ったときに、「ここは撮影してはいけません」と主催者の方が呼びかけたら、本当にお客さんみんなが撮影をしなかったことに、とても驚きました。日本はスゴイですね。
井澤: 確かに私たちの肖像権が守られたり、ルールを厳守してくれることはとてもありがたいです。
でも一方で、あまりに閉鎖的過ぎても海外のファンの方にイベントや活動について知ってもらうチャンスが減ってしまうので、難しいなと思います。
Perthさんはプライベートな時間にファンの方から写真を撮ってくださいなどのお願いをされるのはどう対応されていますか?
Perth: 2~3人ぐらいであればありがたく応じますが、自分で対応できない人数の時とかはごめんなさいと伝えることもあります。
井澤: でも時々、声をかけたいけどかけないみたいな人を見かけると、声かけていいよーとか思ったりしますよね(笑)
Perth: します、します(笑)
<アニメについて>
Q:Perthさんが日本のアニメを見始めたきっかけは何ですか?
子供の頃から、「セーラームーン」「カードキャプターさくら」「ポケモン」を英語で観ていました。
実はその頃は、日本ではなくアメリカのアニメだと思っていました。 

【日本のアニメについて】
Perth: 井澤さんも漫画やアニメが好きですか?
井澤: はい。オタクだったからこそ声優になったので、もちろん大好きです。 
Perth: (井澤さんが出ている)「チェンソーマン」も見ています。好きです。
井澤: すっごく嬉しいです。 
Perth: でも実は、アニメにするとカットされてしまうシーンが出てきて残念なので、どちらかというと僕は漫画の方が好きなんです。 あと、日本の漫画やアニメには、「はじめと終わり」がちゃんとある。 欧米のものは、永遠に終わらない作品が多いです。 主人公のキャラクターが死んでも、数年後に戻ってきたりすることがあるが、日本はちゃんと1つのストーリーが終わる。
井澤: なるほどー。そんな違いがあるんですね。
Perth: 日本のアニメは、子供だけがみるものではなく、大人向けの作品もあると思うのですが、例えば自分の父は、アニメというだけで、子供のものだと思って見ることもしない。 海外では、大人向けのアニメが少ないような気がします。

【のどのケアについて】
Perth: のどのケアはしていますか? カラオケに行ったときにあまり声を出さないとか?
井澤: カラオケは全力で歌います(笑)。 のどのケアは手洗いと塩水でのうがいをしています。 Perthさんは何かしていますか?
Perth: 特にしていません。筋トレやスキンケアなどは気を付けています。
井澤: 一般の生活をしていたら鼻声でも日常生活に支障はないかもしれませんが、声優だと大問題です。風邪をひくことが一番危険だと思っています。

【アニメの声優について】
Perth: 声優になったきっかけは何ですか?
井澤: 人前に出るのが苦手で、緊張すると泣いてしまうような子だったのですが、小学3年生の時に文化祭で観た演劇クラブの公演を見て感銘を受けて演劇をやることを決意したんです。でも中学校には演劇部がなく、高校では部員が3人しかおらず、「どうしようかな」と悩んでたんです。 そんな中、ラジオドラマと朗読があった放送部への入部を決意しました。 その後、声だけの仕事が楽しくなりました。
Perth: 大人になってから、俳優になろうとは思いませんでしたか?
井澤: 思いませんでした。声だけの仕事の方が、男の子にもなれるし、動物も演じることができて楽しいと思ったんです。
Perth: 俳優の仕事とは違う次元のお仕事で、声優という仕事をとても尊敬しています。
井澤: 私は人間ではない役をいたただくことがとても多いんです。この世界に入るまでは、自分の声が特殊だと感じたことはなかったのですが、やはりPerthさんから見ても私の声はアニメ声ですか?
Perth: はい、とても特徴のある声だと思います。
井澤: 誉め言葉ですよね?(笑)
Perth: もちろんです(笑)
Photo:トモノユウ

後編はリーズンルッカで8/25(金)からお届けします!
https://note.com/lesenlucke/


パース・ナクン(Perth Nakhun、1994年7月6日生まれ)
オーストラリア出身。タイ語、日本語、英語のトリリンガル。
タイで芸能界デビュー。「My Engineer(2020)」「Cutie Pie(2022)「KinnPorsche(2022)」など、さまざまな人気ドラマに出演。日本の漫画を好きになったことをきっかけに日本語を勉強。
Youtubeの登録者数は40.9万人。

井澤 詩織(いざわ しおり、1987年2月1日生まれ )
埼玉県出身。ボイスキット所属。愛称は、「しーちゃん」「しーたむ」など。
2007年に声優デビューし、アニメ・ゲーム・ラジオなど多方面で活躍中。
独特の声質を生かし声優として活動する一方、カメラやイラスト、深海生物、妖怪など多方面への関心を持ち
活動の幅を広げている。さらに、タイドラマ好きとしても知られており、姉と一緒にイベントに参加するなどして楽しんでいる。

【後編予告】
後半は、井澤さんがずっと思っていたタイ俳優についての疑問と、声優との類似点についてディープな会話となります!