「桂治は強い。やりやすい、やりにくいのレベルなどではない」
4月4日の選抜柔道体重別選手権に向けた記者会見で、井上康生は、そう語った。
シドニー五輪金メダリスト、
言わずと知れた柔道界の「天才」井上康生が、唯一ライバルと認める男、鈴木桂治。
対戦成績は、桂治の2勝3敗1分と拮抗。
その実力は、あの斎藤仁をして「戦ってみなければ、どちらが強いか分からない」と
言わしめるほどである。
だが、同じ100kg級、アテネに立つことが出来るのは、ただ一人。
過去の実績から、康生が有利であることは間違いない。
桂治が五輪に立つためには、2004年、全ての大会で「完璧な内容で優勝する」
それしか道はない。
2月22日、鈴木桂治が臨んだドイツ・ハンブルク国際。
そこで見せた先輩・井上康生への思い、そして柔道家としての驚くべき進化。
「天才」井上康生を脅かす、もう一人の「天才」鈴木桂治。
アテネをかけた宿命の戦いが、幕を開けようとしていた。
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