------このインタビューの数週間後、太田哲也に新たな、そして大きなハードルが待ち構えていた。事故以来初めてサーキットでファンの前に姿を現し、しかもレースをするというのだ。

栗山)7月22日サーキットに戻るわけですよね。

太田)今度は、初めてファンの前で走るってのがあるわけですよね。僕が言ってる「プライド」と言うのが左右する時なわけですよ。ファンとか昔の僕の事を知ってる人の前で僕が走る。昔のプライドをどのくらい僕が引きづってるか、あるいは捨てる事が出来てるか、「プライド」って、持ちつづけなきゃ行けないプライドと捨てなきゃいけないプライドがあるとしたら、どのくらい僕が捨てる事に成功してるかって言うのが、その時自分に問われると言うか、自分でハッキリ分かるんじゃないかなと。そこは自分がどう言う風に思うか興味ありますよね、凄く。

栗山)その瞬間に太田さん自身が、何を感じるのか…そうですよね。申し訳ない言い方ですけど、太田さんカッコ良かったわけですよね、存在そのものが。それだけにって言うのもありますよね、見てる人はそう言うイメージが強いですから

太田)走りもそうだし、自分の外見もそうだし。昔の価値観で言えば見せたくないモノなわけですよ、自分の劣った走り、衰えた外見とか、そう言う物は見せたくないもの。それを何故見せたくないかと言うとプライドがそれを見せたがらない。そのプライドを何処まで僕が捨てる事が出来ているか。簡単じゃないと思うけど、ポンと捨てられるならアレだけど、今までずっと、事故から1年後クラッシュさせて、自分の殻をクラッシュさせて、殻をこうやって壊し続けていきたい。3年目にどれくらいその殻を壊すのに成功してるのかなって言う感じなのかなぁって気がしますよね。

栗山)まだ走ってないですけど、終わった後のイメージ、今どんな事を感じるんだろうなって想像はつかれますか

太田)恐らくね…今までサーキット走った時も走る前はかなり不安だったんですね。この間富士スピードウェイのゲートをくぐるって言う時に前日になって40度の熱が出たんですよ。「これ一体なんだろう」って思って病院行ったら「入院しろ」って言われるし、入院するわけにいかないって言って、(富士に)行ったんだけど。結局それって恐怖感だったんですよね。サーキット行って半日したら直ちゃった。40度
の熱普通下がらないですよね、そんな半日で。前日に出たというのもおかしいんだけど。でも行って良かったって思ったんですね、あの時。それを乗り越える、何か一つハードルをまた乗り越える事が出来たんだなって。だから恐らく、今、はっきり言っちゃえば、何か行くの嫌なんですね、何か気持ち的に、何か雨でも降って中止にならねぇかなって気持ちあるけど、でも、行ってやってみれば意外と「来て良かった」って思うんじゃないかなって思うような気がしますね。

栗山)これは僕らが突然来て言うような事じゃないですけど、何かまた物凄く大きな壁だし、もし越えていければ、太田さんの言われるもっと大事な事があるって言う、自分が純粋に感じられれば、何かものすごく大きな事かもしれませんね

太田)凄く大きい事だと思うし、何か大きい事ですよね、やっぱりね。

栗山)これからの太田さん。新しい太田さんと言う言い方していいのかどうかわからないですけど…

太田)そうです、いいです。って言うか僕そういう風に自分で言ってるんです。

栗山)これから多分、また自分がやりたい事とか言うのを見つける旅に出られるのかなって言う感じも、ちょっと僕受けてるんですけど。