中:次に戦術的な部分。最初ゲームに入るときにいろいろトルシエから指示、ある程度もらうと思うんだけど、細かい指示はないと思うんだけど、守備と攻撃に関して明確な課題は1つか2つあった?

森:どうですかね。3バックはいつもどおり練習してて。ただまあ練習してるところがたまたま人工芝だったと。いろんな向こうの天候の理由だとかあったんだろうけど.試合前々日までは人工芝で練習してたんで。それで3バックの動きの練習はしてたんですけど、試合前日にサンドインとかあそこに入って、同じような事やると当然足場が違うわけですよね。そこでまあアンリとかがくるんだなって想像した時には「大丈夫かな」っていうのはありましたけどね。

中:ちょっとやばいかなって思った?グラウンドが違うってことで。

森:それでぼくはナーバスになってましたね。グラウンドが。あんまり上から見てたんじゃ見えないと思うんですよ。で、コパアメリカのときも、グラウンドは似たようなものだったんですけど、ただあのときにはまだ準備期間として、1試合とかやってたんで

中:向こうのグラウンドでやってるからね

森:やってましたからね。ずーっと。最後のボリビアのときにはだいぶ普通に動けるようになってたんでね。立ちあがりは最初にプレッシャーをかけていこうっていう感じで

中:それは話があった?

森:話があったというか、プレッシャーの練習は当然普通にしてて、どこのポジションからつぶしにいくっていうよりも、選手間で最初の10分くらいはボール際もガンガンいこうっていうのはでてましたから。

中:じゃあ最初からプレスいこう、って選手間ではそういう話があったんだ?

森:
どうだったかな。都合の悪い事すぐ忘れちゃうタイプなんで。

中:でも最初にいってたのは分かるんだよね。テレビ見てても。

森:だから、そうですね。そういう所とあんまりラインはひきすぎないようにしようと。

中:その二つは考えてた?

森:やっぱりぼくらはまあ、それでやってきましたから

中:始まって、試合前はそういう戦術的な、精神的にはそういう状態で、戦術的には最初からいこうっていう状態で始まったじゃないですか。で、その中で1つ目の問題は、まずグラウンド。グラウンドに入って試合が始まった瞬間に「これはやばいぞ」って多分全員思ったと思うんですよ。こんなに動けないっていうか、こんなに寄せられない。こんなに走れない。こんなに止まれない。で、それに関しては今言っても意味がないと 思う。それは慣れれば出来るから。あのグラウンドに慣れてれば。例えばフランスでW杯があって、フランスのああいうグラウンドに対して準備をするのなら、早めに入れば慣れとかもあるし。

森:それはありますね

中:で、日本で2002年やるわけだから、こんどはあのグラウンドでやるわけじゃないから、あれに対しての準備っていうのはある程度省いちゃってもいいと思う。そのことをまずみんながごちゃごちゃ「フィジカルの違いだ」とか言うから。あれはただ慣れだけで

森:それは思います。やっぱり慣れっていうのもそうだし。ただまあ、2002年は確かに日本でやるけど、今回みたいにポンポンと入ってやるときがあるわけじゃないですか。そうなったときには子供の頃からああいう所でやってるやつは、腰周りだ、体感がすごいしっかりしてるんですよね。だから実際ボールキープとかはいったときに、ジダンとかの体の使い方とかはすごいものがあったし。バランスもいいなっていうのは感じましたから。

中:あのグラウンドで…日本人は固いグラウンドに

森:慣れてますからね

中:スパイクに頼って止まろうとしますよね。そうするとそれごと滑る。

森:そうですね。それをいろんな所で補いながら

中:やれればよかったかな、と。

森:本当にこればっかりはそこに行かないとできない問題だし。日本のグラウンドがこういうグラウンドになるかっていわれたら、ならないし。

中:土壌が違うからね。それはまあひとつ置いといて。最初その立ちあがりの3、4分くらいまでかな。完璧に機能してました。ほとんど相手が何もできなかった。まだ最初はね。その時は全員同時にボールに対してプレスかかってた。同時性があった。4分くらい過ぎてから同時にいけなくなったのね。立ちあがり5分で疲れたと思った?

森:思いましたよ。最初の5分くらいは、ぼくすごい感じてたのは、前を向かせちゃうと、多分ステップが踏めないから、ぼくも。あのグラウンドでは。中途半端にいっちゃうと、抜かれるなっていう気はすごいしてて。じゃあボール来たときにばっといかないと、と思うじゃないですか。行って、止まって。でも勝負しにきてくれれば多分止められるっていうのはあると思うんですよ。だからこの試合ですごい感じてたのは、ボールに全然触れられない。相手の体に全然触れられないっていう感じの試合だったんで。その前に本当にボールをうまく動かされて、それでアップダウンの繰り返しだったんで。すぐ疲れましたね。

中:相手は何もできなかったけど、そのプレスに対して

森:だからぼくなんかが勝手に頭が、気持ちが先走って疲れちゃったっていうのもあるかもしれないけど。

中:そこからいろいろずれてきたと思うんですけど、ずれてきた要因っていうのは、デュガリーとピレスの選手をどうするか。

森:それは本当に悩むというか、毎試合そうなんですけど、こういう相手とやると。

中:まず絶対迷うじゃないですか。この選手をどう捕まえるのか。試合前にこういう状況になるのはある程度予想してた?

森:予想しててまあ、サウジの時とかもこうなってたんですけど、ずっと前の話しちゃえば、キリンカップのときとかもこういう風になるんですよ。スロバキアかなんかのときに。そのときぼくが右かな。でここに、前半、明神にデュガリーをつかせてたらDFが浮いちゃうじゃないですか。そうすると、明神が引いて空いたスペースが使われて、やりたい放題にやられてしまう、と。で、まあやれるときには明神が、前にプレッシャーをかけて、で、前線にきたらいくって感じで。俺はほんと一対一を止めなくちゃいけないんですけど、うまくいくときはこれでいくわけですよ。ここから先がこういう布陣にしても引っ張られて、走られて。ラインを止めよう、止めようって気にしすぎたと思うんだけど、3枚。どんどん崩されて。