遠藤:去年1年というのは今年に向かって何か収穫があったんじゃないかなって。

黒木:うん、やっぱりオリンピック前ですよね。ここで一ヶ月ほど二軍に落ちた時に、やっぱり技術的なことじゃなくて、精神的なことを一番感じたんですよね。僕は、いくら成績悪くても投げる場所を与えてもらっているし、結果出さなきゃいけないんですけど、幸せですよね。二軍に落ちた時に、パッと見て、成績が残っててもタイミング悪くて上がれない選手とかね、今から一軍目指して頑張るぞっていう人がいっぱい、一生懸命泥まみれになって練習をやっているんですよ。だから、上でやるも二軍でやるもアマチュアも少年野球も草野球も、やることはいっしょなんですよ。野球を楽しくやるっていうこと。だからそういう、ピリピリしたものが一気にはじけました。二軍に落ちた時。それから、気持ちが楽になって、「じゃあ、野球を楽しもう」と。ピンチになって、打たれたらどうしようじゃなくて、「こんなピンチを、したくても出来ない人もいるんだ、楽しまなきゃいけない」と思うようになって、それなりにいい成績が残るようになったんです。

遠藤:じゃオリンピックとかっていうのは、もう完全に楽しみながら野球をやっていた?

黒木:プレッシャーを感じながら楽しみました。サードにノリ(中村紀洋)がいますし、ファーストにまっちゃん(松中)とかね、いましたよね。

遠藤:同い年(27歳)ですもんね。

黒木:はい。だからあいつら、「楽しめ-、楽しめー」って言うんですよ、ピンチでも。やっぱそういうの聞くと、「ああ、こういう場所で投げさせてもらえる幸せを感じながら投げなきゃいけない」っていうふうに思ったんですよ。

遠藤:じゃ、今年はもうハナっから野球を楽しもうという気持ちで、やっていくんですね。

黒木:うん、そうですね。人間楽しいことにのめりこむじゃないですか、だからやっぱり楽しくならないと、野球もうまくならないし、上手くなるためにはやっぱり練習もしなきゃいけないでしょ。だから、「芯から野球を好きになろう」というふうに思いましたね。去年の7月から8月にかけては。

遠藤:楽しくなったら、野球もやっぱり変わってきましたか?

黒木:変わりましたね!これ不思議ですよね。だから、どこか変な意識というのが体を動かさなかったのかなって思うんですよ、春先は。変な意識があって体をどこかセーブさせたりとか、というのがあったと思うんですよ。それが一気にはじけて、体が思うように動くくようになったんですよ。こう、いろんなことが。

遠藤:はー。そういうのってあるんですかね。

黒木:うーん。あるんじゃないですかね。

遠藤:野球意外でも、僕らみたいなお笑いの世界でもあるかもしれないですね。

黒木:うん。だから遠藤さん達が楽しくやればみんな楽しいと思うんですよ。

遠藤:そうですよね。仕事によっては、ん?ッて言う時も・・・

黒木:昔あったじゃないですか。漫才とかやってると、やってるコンビたちが笑ってると、お客さんが笑わないって。今、違うじゃないですか。今、本当にやってる方が笑ったり、おもしろくやると、お客さんたちも反応するでしょ。やっぱそんなふうに時代も変わってきてるのかなって思うんすよ。

遠藤:ははははは。教えられちゃったよ。

黒木:(笑)でもなんか共通すると思いますよ。

遠藤:でも・・・そうですよね。それはでも、わかりますよ。自分が楽しんどけば自然とお客さん笑ってるし、とか。野球やったらいい成績、僕らも変な話、視聴率だとか、そういうのがよかったりしますからねえ、楽しんどけば。そういうのちょっと教えられたということで、ありがとうございます。また戻るんですけど野球を楽しんで、ボールが変わった。あ、変わったなって感じた一球っていうのは、覚えてます?

黒木:一番は、秋山さんが2000本安打打ったときの北九州のダイエー戦ですかね。真中に投げてもみんな打ち損じするんですよ、ダイエー打線が。で、2000本打ったイニングだけ、ものすごいたたみ込まれたんですよ。点を取られて。やっぱりその時「2000本打たれた」というのもあるし、何か変な意識持っちゃったから。自分でも、「秋山さんにここで打たれたら、波にのって来るだろう」っていう変な意識があったんですね。だからそういう意識が何か変なふうに結果につながっていったと思うんですよ。

遠藤:ああ、やっぱありますね。

黒木:うん。その辺からですね。「変に、コースに投げなくてもいい」と思ったのは。「ど真ん中でもいいけど、打ち損じを狙ってくれればいいわ」と思って。いいバッターで3割しか打ってないから、7回失敗するわけでしょ。だったらその確率でやれば いいかなと思ったんですよ。その辺、楽になりましたよね、野球はね。

遠藤:でも今年は、もうハナからそれでいくわけですから。でも、どっかであるでしょうね、「ここで打たれたら、マズイぞ」とか。 よく先発ピッチャーじゃなくても、5イニング投げ終わったら勝ち投手の権利とかって、本当に画に書いたようによく5イニング目に打たれたりするじゃないですか、若干そういうことってあるんですかね。意識しすぎるんですかね。

黒木:意識するんでしょうね。僕らもね、若い頃、若い頃というか2年目とか3年目ぐらいの時に、9回ですかね、最終回に、ヒーローインタビュー考えたりとか、完投して何て言おうかなとかって考えたりしたことあったんですよ。その時に限って完投できないんですよね、打たれて。

遠藤:やっぱりあるんですかね。

黒木:やっぱりそういうのってあるんじゃないですかね。だからその辺が僕は甘さがあるんですよ。


 

遠藤:黒木さんの中で、もちろん自分の為というのはあるんでしょうけど、「ナニナニのために野球をした」っていうのは、あります?

黒木:まず、高校生時代の時っていうのは、親父、お袋のためにやりました。親父とお袋を仲良くしたいっていうかね、そういう親孝行したいがためにあまり好きじゃないけど野球をやりましたよね。高校卒業したら、また自分のためにやろう。ま、彼女、っていうか今の嫁さんですけど、のためにやろうとかね。そうふうになりますけどね。なぜかね、幸せなことに周りの人にものすごい恵まれるんですよ、僕は。だから、そういう人のためにも頑張らなきゃいけないなっていうのがありますよね。ものすごく恵まれてますね。プロに入ってもいい先輩にめぐり逢えたし、いい家族にもめぐり逢えてるしね。

遠藤:そうやってねえ、思えるっていうのってねえ、凄い僕はすばらしいと思いますよ。

黒木:僕は当たり前だと思うんですよ。

遠藤:でもなかなかそうやって思われへん人って多いじゃないですか、最近。僕もどっちかっていうと、同じ意見なんですよ。すごい周りに恵まれてるなって、普段から思うんですね、こういう仕事させてもらって特に千葉なんて、もうファンがすごい・・・ね。熱狂な応援じゃないですか、ファ ンのためにっていうのもやっぱり、絶対ありますよね。

黒木:ありますよね。ファンのためにっていうのもあるし、ロッテっていう、僕を引っ張ってくれたね、僕を拾ってくれた会社にも恩返しをしたいとも思います。自分の為と家族の為が一番だと思うんですけど、今の僕があるのは、拾ってくれた会社であるし、それで応援してくれて、力を貸してくれてるファンでもあるし、そういう人 のためにもやっぱりやらなきゃいけないかなって。

遠藤:今年は、何の為に、誰の為に戦っていきますか、一年間。

黒木:うん、誰の為というか、優勝のためにいきますね。僕は。

遠藤:優勝のため。そうっすよね。でも優勝・・・黒木さんがもう20勝てば、しますよ。

黒木:僕が20勝っても、他が勝てなかったら駄目でしょ。(笑)

遠藤:いやー。相乗効果で。

黒木:うん。だから僕だけじゃなくて、みんな優勝するためにって思えば、何でも乗り越えていけると思うんですよね。仲悪くていいんですよ。その時にガーっと一つになれば。

遠藤:いろんな選手に話を聞くと、やっぱり優勝って言わはるじゃないですか。ものすごいしたいですか、優勝って。

黒木:したいです(即答)。はい。ビールかけあるでしょ。

遠藤:ビールかけとかも。でも、なん・・・例えばね、僕らとか、素人から見たら、自分の成績が良くて、それこそお金もいっぱい貰ったら、それはそれでいいじゃないかと思うとこもあるんですけど、「いやそれじゃない、やっぱり優勝だ」ってたいがいの選手が言うんですけども、優勝、ってやっぱりすごいものなんですか。

黒木:うん、やっぱり優勝、したいですよね。ビールかけをしたいです、とにかく。でね、いろんな人が僕らに携わってくれるじゃないですか。裏方さんを含めてね。そういう人らにおいしいお酒を飲ませてあげたいというのがありますよね。だからねえ、本当、自分の個人成績を残して、お金いっぱい貰って、それもいいですよ。プロとして当たり前のことですから。でもそれだけじゃないと思うんですよ。僕らプロですから、お金貰うことだけじゃないですよね。周りの人を感動させなきゃいけないですから。

遠藤:それは僕の仕事も同じような仕事ですもんね。今ロッテの中に「あ、ちょっと俺と考え方が似てるな」っていうようなプレイヤーの方って、どんな方がいます?

黒木:うーん。そこまで深く話したことないですよね。ただ若い選手でも、ピッチャーで小林雅英とか、あの辺はそういう考え持ってますね。で、小野晋吾、去年ブレイクしたよね。あれなんかもだいぶ性格も変わってき ているし。

遠藤:ずっと黒木さんがロッテの投手陣を引っ張ってこられてて、で、去年調子悪くなった時に、小野さんがスコーンと出てきたじゃないですか。 その時って、どういう心境になるんですか?

黒木:嬉しい反面悔しいです。やっぱりどこか僕、一番になりたいところあるんですよ。去年は一番を晋吾に獲られましたから。やっぱり優勝した中で、一番の成績を残してMVPを獲りたいっていうのがあるんですよ。

遠藤:やっぱりチームが優勝するっていうのはもちろんですけど、やっぱりどこかで、自分の力で優勝させて、

黒木:させてっていうかね、一番活躍したっていう評価ももらいたいし。

遠藤:ま、それは本音ですよね。