(聞き手:中山貴雄アナウンサー)
 

中山:日本代表がフランス戦では歴史的大敗でした。そしてその後臨んだスペイン戦では、5バックともいえる守備的布陣で臨んでこちらも負けました。セルジオさん、この結果をどうみればいいんですか。

セルジオ:アジアの、ひとつのこなさなくてはいけないスケジュールですね。オリンピックの中で予選を突破できて、ただオリンピックのレベルがアトランタより質がちょっと落ちてたのは全体的にあったと思うんですね。そして、アジアカップ。優勝するという事はどのレベルでも、やっぱり活気付けるし、錯覚するんですね。勝った時にどのレべルでもいいから勝ったんだということになる。で突然、年明けていきなり世界の強豪と、世界一のフランスとアウェーで戦う。モロッコで一回フランスと当たっていなければまだよかったんだけどね、2−2で惜しくもPKで負けたのが、ヘンに自信過剰で出ていったんですよ。トルシエ監督も選手も記者会見でやっぱり、ジダンが追いかけるんだ、俺達じゃないんだ。と言って、あまりにも衝撃的な差と、スコアだけじゃなくて中身でも全部やられて、そこでパニックになってしまった。今までやってきた事がどうなってんだって。それで次にスペイン。またフランスにすぐ後に勝った相手だから、こりゃ大変だと今度はちょっと構えていきましたよね。戦術的に気持ち的に、フランスでもその気持ちでいけばよかったんですけど。まあ僕は、フランス戦でいい餞別を受けて、まだ時間がタップリある中では、中田も言ってましたし、「早めにやられてよかった。これが年末だったら困った」と。それで当然守っていくんだ、それはいいんですけど僕は個人的に、どうしてこんなに対策が崩れるんだという心配を持ちましたね。もう少し冷静に負けた後、次にもう一回チャレンジするという、ちょっと変え過ぎじゃないか、2連敗したら困るんだ。大敗したら困るんだという目先の事だけにいってしまった所がね、個人的にちょっと心配。

中山:中西さん、目先のことにで一番うなずいていましたけど、中西さんはどうですか。

中西:僕はW杯2002年でベスト16に入るにはどうすればいいかという事を念頭において全てのゲームを戦わなければいけないと思うんですよ。だから2002年のW杯でベスト16に入るために何が今必要で、何が出来ているのか。そういうチェックポイントが何もないままにフランス戦に入ってしまった。要するにフランスは日本より1ランク上のチームだったんですけど、1ランクというよりは、2ランク・3ランク、もう今は世界のトップですからね。そのチームに対して正面からぶつかってね、もうどうしようもなかったと分かった事がよかったなと。もうそのチームに対しては何も手も足も出なかった訳ですから。スペイン戦に関しては、もうそれを受けた上で、衝撃を食い止めるために守備的にいった。守備的にいってある程度の戦いは出来た。それは元々わかっていたことなんですけど、ある程度評価は出来るんですけど。あのままじゃ一生、点は取れないですよね。そういう意味じゃスペイン戦では出来たことと出来なかったことが分かったんですけど。でもそれはスペイン戦以前に分かっていた事なんですよね。前回のW杯でも守る事は出来ていたわけで、しかし、点を取る事が出来なかった。それを受けた上でこれからどうするかがこの4年間の命題だったんですけど。また全ての事が元に戻ってしまって、また2002年に向かって、今何が足りなくて何が必要なのかを再確認しなければいけないのは時期的に遅いんじゃないかなと、もう少し早く分かっていればよかったなと、そう思いますよね。

セルジオ:そうですね、だからねトルシエ監督が今年から新監督としてきて、最初の試合がフランス。負けた。次の試合にメンバーを入れ変えて、まだ事情がわからないから、いい試合をした。これはすごくプラス志向ですね。でも彼はチームを作ってきたんですよね。要するに、ワールドユースの準優勝、オリンピックを中心に若手、若手を口すっぱく。それは積み重ねるのに時間が必要だと、間違いなく成長してきている。モロッコのときのフランス戦では、もう出来あがった、そのときに守りが弱い、守りを中心にやらなくてはいけないじゃなくて、この中でいくんだと公約的な話をしているんですよね。負けたとき、大敗したときに全くその積み重ねがどこかに忘れられてたみたいに。彼はフランスW杯の後に来たんですから。確かそこにアルゼンチン、あるいはクロアチア、まあジャマイカ戦はもうモチベーションもそんなに無いと思うんですけど。惜敗で惜しくもいけなかった。ということは、1点差で負けて、1−0で負けて、点が取れなかった。ただ日本は守って、守って逆襲。これからもう一つステップアップ。要するに世界ともしかしたら勝てるチームを4年間で作るためにトルシエ監督を挙げたんですよね。その積み重ねてきたものが、5−0で負けたら、若手がいなくなったんですよね、スペイン戦に。要するに稲本が戸田の代わりに出てきて、中田浩二と高原だけの先発はね。あれって思いますよね。フランスのメンバーを多少切って、試合出てない選手を切って新しい選手を連れて行った。これは変わるかなと、また連れていった選手を使わないんですよね攻撃に。で守りの選手を入れるんですけど、攻撃的な部分がフランス戦にしても大敗した、惜しくもスペインに負けたけど攻撃する部分がどうなるか、そんなに数多くそういう国が相手になってくれないと思う、スケジュール的に。まあ2つの大事な相手でどれくらい攻撃的にチャレンジできる事は無しで帰ってきた事が、そこが僕は心配。

中西:そこがやっぱり心配なんですけど、僕は今言ったメンバーが詰み重ねになっていないと話があったんですけど。守備の戦術が積み重ねになって
いないと思うんですよ。当時トルシエ監督が日本に来たときに、フラット3という新しい言葉を使って、フラット3は斬新なものだと、確かに斬新なシステムで世界の最先端をいっているシステムだったんですよ、それを持ちこんだんです。で、すごく攻撃的な戦いを目指したんですけど、今ここにきて、なぜそれを5バックじゃなかったですよ、5バックのような形に戻したんですよ、リスクを回避する為に、両サイドの中盤の選手を守備が出きる選手に変えて、要するに積み重ねが無かったですよね。そこのフラット3の問題点を解決してより、発展的に積み重ねてフラット3を上に積み重ねていくんじゃなくて、フラット5にして。

セルジオ:プラス、ボランチ3人にして。フラット3がバックの前にいっちゃったんですよね。(笑)

中西:後ろ5人で前3人。そこがまた積み重ねじゃなくて、トルシエが5−0で負けたときにパニックになっちゃったと思うんですよね。それですべて選手のメンバー起用、選手選考、サッカーの戦術も全部退化してしまったんですよ、進化しなければいけないのに。

 

 

セルジオ:例えば、左サイド。今このスペイン戦が終わって両サイドが良かったという右サイド、左サイドが機能した。左サイドの服部は彼はマーカーで非常に優秀な選手と誰でも知っている。いまさらそこに革命というわけじゃない。ただトルシエサッカーはマリノスというチームの試合を観にいって、三浦淳宏がまだヴェルディにいってないで、マリノスでやっているところを選ぶ、中村もハーフ、ようするにトップ下をやっていて彼の攻撃的な技術を買って選ぶ。しかし代表には中村をそこの左のサイドハーフに使うんですね。どう見ても守りを育てるという意味でやらせているかもしれない。攻撃が出来ても守れなくてはいけない。ずっとやっているなかに、三浦淳宏はなんで自分のチームに、違うチームの選手にポジションを取られるならいいけど。何で俺のチームにポジションの無い人にやらせるという、これは面白くは無いという気持ちにはなりますよね。フランスに大敗したら、中村は守れないから、日本の守りシステムは難しいから外したんですよね。そこに服部入れるんですけど、三浦淳宏もいれていない。だから左サイド二人、試すにはいかないし、無くなっちゃったんだよね。その部分がやっぱり服部でいくのか、攻撃的にいくときは、誰を使うかっていうのが見えない。ただ、この間来て2試合目の監督だったらまだ十分待たなくていいんですけど、3年目ですよ。

中西:でもそこが一番象徴的でしたよね。左サイドの選手起用が一番象徴的なんですよ。攻撃的な選手をあそこにおいて、フラット3という形を後ろに3枚置いたじゃないですか。それで、左サイドのアウトサイドは攻撃の出来る選手。右サイドのアウトサイドの選手は、守備が出来て、起点になれる選手。ということをトルシエは常々言っていた訳ですよ。それを全部積み上げてやってきてたんですけど、いきなり2人とも守備が出来る選手じゃないとダメだと。そこが僕は矛盾しているし、じゃあ、それが解決策かと、ああいう風に守るのは前回のW杯でできているんですよ5バックにして守る事はね。じゃあその5バックのときは守れた、今回もまあ守れた。じゃあ3バックのときはフランスに5点取られている、それからサウジアラビアでも完全に優勝はしたけども決勝戦はさんざんやられた。そういう中で、一番いい守り方は何なんですかね。僕は答えはあるんですけど。

セルジオ:僕はね、システムというのはイメージというんですね。ある程度何をするかという要するに白いキャンパスでね、ある程度、ここに木があって、川があって、山があって、要するにそりゃ、こっちに川があって、山がこっちにあるんですよ。川がこっちにきて、山がこっちにあったら、絵にならないですよ。ある程度鉛筆でこうやって、監督が渡して、その色付けを選手がやると思うんですよね。これが例えば、中西さんがここは川を塗るとか、緑を塗るとか。僕がここを黄色に塗るとか。これが選手の個性と思うんですよね。どの色でも絵になるんですよ。この色でみんな絵を塗りなさいという写真的なことはね、一歩、思うようにならないと、すごく現場で戸惑うんですよ。その柔軟性を与えるのが監督。こういう戦いたいですけども、もし相手が先に先行した場合、うちが先行した場合という色々な可能性を与えてやらないとどうしよう、どうしよう となる。そこの部分がちょっと型にはまりすぎて、それから独立できない、監督も選手も上手くいくときは上手くいった様に見えるんですけども。困ったときには、どうしよう、どうしようとなるんですね。そこがやっぱりチーム作りとして特に大人のチーム作りはある程度、選手に任すという部分が無かったら、特に国のトップ代表はなかなか成長していかない。あんなに監督が仕切ったら、聞こえないときに選手が困る。

中西:それはね、僕たちがやっていたときも、自分が選手だったときも色々困っているわけです。例えば、3バックでやっていて、監督とコミュニケーションを取って、僕は自分がキャプテンだったときにチームをここがこうしたほうが良いんじゃないかと話合いをして、大人の解決をしてチームを作っていかなければいけないと思うんですけど。代表のチームはある程度選ばれなくてはいけないんで、監督のいうことを聞いていないと自分がメンバーから外されてしまうという怖さが常にあるんですよ。でもそれをも乗り越えて、監督がしっかり大人になって、選手に対してお前らの意見も言って欲しいと。

セルジオ:だからその通りでね、例えばセットプレーのときそうじゃない。いつも行くけどもあの時間俺行かないからあなたが行きなさい。とかね。そういう連係の中で全部ミーティングできまったものばかりやってないと思うんですね。そこがやっぱりもう少し見えたらいいなと感じがするんですけどね。

中西:その中で、さっきの話の続きなんですけど、3バックやってて、一番困っ        ているのは両サイドの中盤の選手を、3バックの右サイド、左サイドがどう掴むか、あるいはウィングバックがどう掴むか。両サイドの後ろのスペースをどう掴むかが課題だと思うんですよ。それを解決できなかった試合が、サウジアラビア戦の決勝戦であったりとかね。オリンピックで負けた試合、アメリカに負けた試合、それがポイントだったと思うんですけど。そういう所で選手が臨機応変に、例えば4バックになってみたりだとか、局面において、勝っている時であれば5バックにしてもいいと思うし、負けてるときであれば逆にリスクを犯してでも。

セルジオ:自然にそれを今リードした、リードされた。今前半、後半っていうのをね。例えばね、サッカーってね、1人退場になっても仲間、ラフプレーして10人になったとしても、10人と11人で戦わなければいけない工夫がみんなの中で働くんですよ。そのときにね、どんなシステムを作ろうとしても1人足りなくなっちゃうんだから、それでも一人が足りなくなったから、絶対負けるという事が無いじゃないですか。よく勝つときあるじゃないですか。ここがやっぱり11人・11人でもそのときそのときの変化でやれば、十分フラット3でもフラット4というものに頼らなくても、要するに柔軟がある戦術、ときにはフラット2でもいいんですよ。特にセットプレーでコーナー行くときに大体2人しか残らないでしょ。そんな怖くないんですよ。逆襲のチャンスに見えるんだけどちゃんと守れる。そういう例えとしてやっていけば十分出来るんですけども。それを試して欲しいのね、強いところに。試さなかったらわかんないだから。

中西:例えば今回4人、攻撃陣が何人いるかにもよりますけど、よりたくさんの人達を後ろに持ってきただけで、8人、例えば5バックで3ボランチ。8人を守備に割いたことで守ったわけですよ、数的優位でね。さっきセルジオさんが言った、10人でも勝てるというのは要するに、みんな10人だけど11人分の動きをしなければならないから責任領域がハッキリするんですよ。

セルジオ:基本的には、前減らして後ろは減らさない、これは基本ですよ。

中西:その責任領域をハッキリさせるのが僕は、トルシエの早くからの一番の問題点であって。、ディフェンスのときに俺はこの地域だけ守っていればいいとか、俺はここだけ守っていればいいとか、そういうことじゃなくて、みんなが自分以外のところもカバーできるような、おれはここもやるけどここもやるよと、と。そういう風にみんなが意識してチームとして動いていけば、絶対問題が起きない。だから3バックとか5バックとか、システムにこだわり過ぎずに、ある程度臨機応変にね、やっていくことが、それをトルシエと上手くコミュニケーションを取った誰かが言い合わなければいけないんですよ。

セルジオ:例えばね、伊東選手、稲本選手、名波選手が3ボランチ、コノ3ボランチがずっとここにいなくていいんですよ。3っていうのは、1人が堂々といっても2人が残るとこですよ。そのためにね、確か森島が調子悪くて選ばれていないんですよ。森島がここに帰ると同時に行っちゃうんですよ、点を取りに。特徴としたら。それがチームとしたら、中田にも負担がかからないで、トップにもすぐフォローが出来る。森島がいないときに、森島の代わりは誰だっていうことを作らなければいけないですね。例えば、小笠原にするか、藤田にするか、奥にするか。部品としてみなくてはいけないんですけど、どうも似た体質の選手をここにおいて、どうみてもこういう選手って、リーグみても大量の得点は挙げてないのね。そこがチーム作りとして選んでも使わなかったら、だから藤田は森島の代わりだったらすごく分かるんだけど、そこで使わないなら意味は無い。

中西:基本的にディフェンスのことに関しては、ある程度していけばいいと思うんですけど、そこも監督ともっと話をしていけばいいんですよね。森岡のインタビューをこの間してきたんですけど、僕はそれが森岡だと思うんですよ。中田もいろんなことを言うけど、ディフェンスはやっぱり森岡がトルシエに意見をして、ここをこうしたほうがいいとか。例えばフランス戦、まず何を失敗したかというと監督から明確な指示が出なかった。立ち上がりに、気合を入れていこうとかは簡単なんですけど。じゃあ、プレスはどこからかけていけばいいのか、とか。フランス戦のときは、みんなアドレナリンが出すぎていて、高い位置からいきすぎて、FWが高い位置からいく。しょうがないから、ボランチも高い位置に、スペースを埋めるためにいっこ前に出る。そのボランチのスペースを埋めるために3バックも上がる。後ろにアンリ、ピレス、デュガリー。早くて対応できない、裏にスペースがあったら。それが僕はフランス戦の一番の問題だったと思うんですよ。だから、この間森岡とインタビューして「今度はプレスの位置を下げて、今まで日本がやってきたように自分達の地域に入ってきたところでボールに強くいった方が良いんじゃないか」って話をしたんですよ。そしたら森岡が、今回その戦い方で臨んでくれたんですよ、スペイン戦。それでやっぱりできた訳ですよ。それプラスα、最後に、セルジオさんが言った、守りをした中から前に飛び出せる選手。そういう意味じゃ森岡が監督の間に入ったことがよかったんじゃないかと思う。

セルジオ:森島がいなくなってから、ちょっと攻撃につながらなくなったと思う。1トップにするときに、やっぱりもう1人がいってくれなかったら苦しくなると思う。守りにはなんとかなるけども、攻撃にはちょっと苦しいっていう部分がある。

中西:それはやっぱり名波と伊東(輝)だったと思うんですよ。そこに常に新しい選手、点を取れる選手を起用しないですよね。

セルジオ:そうそう。彼らの特徴としては、森島タイプじゃないですね。藤田タイプじゃない。

中西:点が取れないですね。

セルジオ:そうそう、その部分が素早く、すぐ足し算でいけるという。

中西:常に、このポジションの選手はこういうイメージがあって、こういう選手を使いたいというのはあるんですけど、そうじゃなくて、いる選手によってシステムも戦い方も毎回変わってるんで。それが3バックなのか、5バックなのか、3ボランチなのか、しかも型に捕らわれているんで。選手が、まあ森岡がDFに関してはリーダーになって、こういう守り方を相手にしたほうがいいとか、中田がリーダーになって、攻撃はこういう形でもっとやって欲しいと思うんですけど。