武内絵美:来年にワールドカップがありますよね、今の時期に行くってことはどうですか?

中西哲生:まぁその選手個人に関しては今すぐ行きたいと思ってる選手たくさんいると思います。でも日本代表チームにとっては、それだけ合同で練習する期間がなくなったりするわけで、トルシエ監督も困ると思いますね、
 やっぱ日本代表が強くなっていくうえでその、チームとしてまとまったというのも大事ですけど、中田選手のように海外でガンガンもまれてね、自分のレベル上げていったうえで、その日本にその強さもたらすっていうことも大事だと思います。どっちが大事っていうのは一概に言えないと思うんですよ。だからチームの中で数人は海外でプレーしてて欲しいと思いますよ。ぼく2年前にあるものに書いた時、―もうその時は中田選手も大活躍してたんですけど―、2002年までに、あと3人か4人海外で活躍できる選手が増えれば2002年は安泰だという風に書いたんですけど…。大部分の選手が行ってしまうとちょっと厳しいと思うんですけど、まぁ現実的にそれは厳しいと思うんでね、まぁ2002年(=韓日W杯)が終わってから行くっていうのもいいと思うし、行ける選手はタイミングを逃さずに行って欲しいですね。タイミングが一番大事なんで。

武:タイミングっていうのは?

中:自分が今必要とされてるチームに必要とされてるタイミングで入るわけです。要するにいくら行きたいと思っても、欲しいチームがなきゃ行けない、あとお金が合わなきゃ行けない、あと言えば、日本のチームが出してあげるという、寛大さがなきゃいけない、その3つのタイミングがないと、やっぱりうまくいかないじゃないですか、移籍って。
 だから移籍っていうのはタイミングなんで、いくら自分が行きたいといっても相手が欲しくなければ行けないわけですし、外国人枠が埋まってれば行けないわけですし、試合に出れないんだったらあまり行く意味がありませんしね。そういう意味じゃ自分のチームの状況と自分の状況、相手の状況、相手のチームの状況、相手のチームの選手の状況って、その全てのタイミングがピタッと合った時しか移籍って決まらないんで、タイミングを逃さずに行って欲しい、そのタイミングのことを僕は言ったんですけどね。

武:あの、海外移籍、海外に行くということは、Jリーグ自体のレベルアップにもつながっているんですか

中:う〜ん、Jリーグ自体のレベルアップにはつながっていないですね。ただ、戻ってきた選手がまたJリーグにもたらすものも大きいわけですよ。それは名波選手が向こうに行っていて、Jリーグに戻ってきて彼のプレーは変わったわけですよね。そういう意味じゃ彼を見てまた学ぶこともあるわけですし、すごくJリーグ自体にもプラスアルファは当然あると思うし、日本人選手のレベルアップということはJリーグにはいい方向につながると思うんでね。
 あとその、日本人選手が海外で活躍して、向こうで頑張ることによって、向こうの選手が日本のことをより知るということもあるんですよね。そうすることで向こうの選手でレベルの高い選手も『日本でプレーしてもいいかな』と思うかも知れないじゃないですか。それでレベルの高い外国人選手が来ればまたJリーグののレベルもまた元に戻ってくると思うんで。  

 

 

武:Jリーグにずっといるだけでは、ダメなんですかね?

中:ダメではないですね。それは自分が、より高いものを常に求めてね、自分自身に厳しくあって、常に高いものを求めながらプレーして行くことが大事であって、Jリーグでうまくいってるから世界でうまくいくかというと、そうではないわけですから。そういう意味じゃ海外に行くこともひとつの手ですけど、Jリーグの中でも高い意識を持ってプレーすることが大事ですよね。
 でもそれは非常に難しいんで、より早くレベルアップしたいなら海外に行くことが精神的にも肉体的にも成長できると思うんで、いいと思います。

武:でも逆にあの、日本でプレーしていて、海外に行くとやっぱり向こうでの扱いというか向こうでは海外選手になりますよね、こちら側が。そうなると状況というのは変わりますかね。

中:うん、かなり変わると思いますね。あの、外国人枠もありますし、試合に出るチャンスというのも、その、相当いうならば日本でプレーしているJリーグの選手が海外から助っ人を呼ぶようなものですからね。ある意味スーパーでなきゃいけないと思うんですよね。

武:期待はやっぱりかかってきますよね。

中:そういう精神的なプレッシャーとか、助っ人として呼ばれているんですけど、ある程度その、何ていうんですかね、自分はレベルが高いということを示すためにもコミュニケーションをとってね、向こうの選手はやっぱり、こいつ助っ人として呼ばれているのに本当に力はあるのかと。絶対、そういう目で見るに決まってると思うんですよ。しかも自分のポジションが侵されるような選手であれば、当然いろんな意味で軋轢があると思うんですけど。そういうものを跳ね飛ばすのが、やっぱ中田のようにコミュニケーションをうまく取ったりとかね、チームの中で自分の存在感を高める為にいろんな事をすることだと思いますけどね。

武:じゃあ、改めて海外移籍を希望している若手の選手に何かアドバイスというか、ありますか。

中:うん、やっぱりその…、行きたいという事は簡単ですけど、プレーしたい、自分がその、行き詰まってて行きたいというのもありますけど、いろんなタイミングが必要なんで。行きたいという意思表示をしておくことが大事なんで、それよりも行くまでに自分がしなければいけないことをまずやって欲しいですね。生活の部分であったり、言葉の部分であったり。あとは自分自身が向こうのグランドに慣れるためにいろんなトレーニングを積んで欲しいですね。そういうトレーニングがあるんで。特別なね。よりいい準備をして日本から離れるような毎日を送って欲しいと。
 それが僕が一番言いたいことですね。

武:ですね。じゃあ選手のプレーとしてだけではなくて、人間として海外に、語学の通じない所に行く、そのための順応性が大切という事ですね。

中:はい、実力は大丈夫ですから。