〜佐藤ルミナ取材後記〜

 

昨年の12月17日、佐藤ルミナの敗戦を目の当たりにした瞬間、直感的に思った。
『この人がチャンピオンになるまでを追いかけたい』と。
自らの力で伝説を作り上げ、修斗をメジャーシーンに押し上げてきた男、佐藤ルミナ。
 そんな男が、2度もチャンピオンシップで敗れたら、どんな気持ちになるだろう。 最初の取材に向かう道中で考えたのはそんなことだったと、今でも記憶している。
 しかし、実際に顔を見せた彼は、ごく普通、いや、むしろ明るい表情でその場にいた。 それはさらなる未来を見つめ、そこに向かっているかのように前向きな佐藤ルミナの姿。 ハードな練習で、カメラが邪魔な日もあっただろう。それでも気を遣ってか、カメラに向かってジョークをとばす姿があった。インタビュー中、当の昔の敗戦の記憶に触れてしまっても、 表情ひとつ変えず、誠実に答える姿があった。そこには、自ら誇示しなくても、内から湧き出るような静かなる『強さ』を身につけた佐藤ルミナがいた。
 そんな表情が詰め込まれたこれまでの取材テープを見返すうちに、僕はこう思った。 『佐藤ルミナは、まだまだ強くなる』と。
 8月26日の復帰戦で自身初の判定勝ちを収め、ランキング4位・佐藤ルミナはその後 2位にランクを上げた。
 3度目となる王座挑戦は、もう目の前である。

                    

柏レイソル・北嶋秀朗

 

 2000年を締めくくるJリーグアワードの何気ない取材の最中だった。彼のある言葉が僕の心に迫った。
「2番はもういい、一番をとりたい」
それまで笑顔だった北嶋選手が一瞬、悲壮感にも似た表情を浮かべた。その時彼の瞳に映ったものは何なのだろうか?それが知りたくて北嶋選手の取材を開始した。
 昨年はその天性のストライカーの素質を存分に発揮し、コンスタントに日本代表にも選出されるようになっていた。だがその反面逃したものも大きかった。「優勝」そして「得点王」。だからこそ、「来年こそは」と誓う一流のアスリートの飛躍とはどんなものか知りたかった。
 しかし、予想に反して僕が目撃したのは「成長」と言う壁に直面した北嶋選手の姿でした。「努力してるように見られるのが得意じゃない」「いつもやってることです」と言いながらも、練習後に自ら志願して居残り練習。黙々とひたすら汗を流す光景に、どんなアスリートにもこういった礎になる時間が必要なんだなと実感しました。
 そして、放送終了後の9月19日。昨年末の韓国戦以来となる日本代表候補のトレーニングに、北嶋選手が名を連ねました。もちろんこれが直接結果に繋がるわけではありませんが、それでもチャンスを手にしました。彼が言う「ラストチャンス」を是非掴みトって欲しい。今度はその「闘い」を見たいものです。

 しかし、今回の取材で一つ大きなミスを犯してしまった。今回幸運にも取材を兼ね北嶋選手と食事をする機会があったのだが、その支払いの際に自分がタイミングを謝ってしまったのだ。結果、北嶋選手に「おごってもらう」形になってしまったのである…。 北嶋さん、是非今度その御詫びをさせてくださいね。

                    

【GET−SPORTSディレクター 片山 淳】