10割狙いの深層 〜斎藤春香の打撃境地

 

 9月9日の放送は、斎藤春香選手の打撃ポリシーについてドキュメントした。宇津木麗華さんにも山路さんにもない、探究者的姿勢。いつかあの奥深さを伝えようとその機会をうかがっていた。それが今回である。
 しかし具体的な話はあまり紹介していなかったので、少しだけ紹介したい。  春香さんの目指しているのは、10割バッティングや究極のタイミングであるが、それ以上に、常々口にしていることがある。それは「チーム貢献度100%の打撃」である。
 それは、勝利のためのバッティング。

 「むかしは全打席ホームラン狙いでしたよ」という春香さん。若かりしころはそんなこともあって送りバントができなかった。
 アトランタでは3連続ホームランをたたき出したが、そこには送りができなかったという裏事情があったという。結果チームは4位に終わり、春香さんは自らのバッティングを 見つめなおす。そして春香さんはひとつの境地にいきついた。全ての局面で、状況に即したバッティングを100%できるようにしようと。バントやエンドランの練習も欠かさず 行っているのも、そうした理由からである。春香さんは語る。
  「最終目標はチームが勝つことじゃないですか。自分がホームランを打っても。違うことが原因で負けてたり、チームが負けてたら無になっちゃうわけですよね。だから10人か9人かでスタメンで出て、全員が与えられた仕事をまっとうしないと勝ちにつながらないって分かったんです。全部打席入って全部ホームラン打てればいいですけど、そうじゃないですもんね。だから、全てのことができる打者になりたいです」 春香さんは現在、ホームラン王などタイトルなどへの欲求は一切ないという。その時々に即したバッティングをすることで、結果がついてくればいい。あくまでも、チームが勝つこと。それだけである。

 春香さんの一打は、長打だけではない。
 優れた打撃力を持ちながら、それを前面に押し出さず、巧みに技を使い分ける。  そんなことをしている打者が、この世に何人いるだろうか。全く持って、奥が深い。  ソフトボールは日本リーグ後期が始まった。現在所属の日立ソフトウェアは2位。その中で春香さんは、4番DHとして打席に立つ。そして、時としてバント。時として刻む。打つときは、打つ。それは、勝利につながる一打。
 斎藤春香・31歳の打撃探究は、とにかく終わらない。

                    

【GET−SPORTSソフトボール担当ディレクター 長田 誠】