Vol.2 誰も知らない、石川多映子。
 

 番組ではこれまで、いしかわ君の特集企画を単独で2回、複合で2回放送した。

 その際、作品のテーマは大体「努力で勝ちとる」風なものを中軸に据えた。雑草とも比喩されたそのパフォーマンスを凌駕するいしかわ君の努力には、多くの人が感じ入ってくれると考えたからである。

 ここでは、そうしたいしかわ君を、これまで紹介されなかったエピソードと併せて紹介してみる。

 

▽ベンチの奥で…

 ある日いしかわ君の投げる試合を取材していた時のこと。

 味方の攻撃の際、いしかわ君みんなと一緒に応援せずに、ひとりでベンチの奥で下を向いているではないか。ソフトの試合は、大体野球場のグランドを、仕切りを設けスケールを小さくして行われる事が多い。
その際ベンチはグランド上に設けられる。元あるベンチは、荷物置きになっていることが多いのだが、
その元あるベンチの奥でいしかわ君は、ひとりで下を向いている。これはどうしたことなんだ?

 「あれは味方の攻撃で心が乱れないように、あえて見ないようにしてるんです。せっかくのチャンスがダメになったとか、
見てると『あ〜あ』ってなっちゃうことってあるでしょう。
そういう風に思っちゃうのもいやだし、逆にいい具合に点が入ってもそのシーンが頭にあって慢心しちゃうんです。
だから私は攻撃は見ない。頑張ってくれてるみんなには申し訳ないんですけど、より平常心で投げたいんで…」

 といしかわ君。

よりよいメンタルコンディションで臨みたいということだったんですね。試合を見に行って、姿が見えなきゃ、そこにいしかわ君はいる!

 

▽目標

 いしかわ君は「まだまだ」という言葉をよく使う。

 それは前回紹介した斎藤春香さん同様、自分の理想を高く置いているからであろう。五輪が終わった秋から冬、自分はいしかわ君の「今後」を見据えた取材を行ってきた。目的を達成したアスリートである。次の目的は見出せるのか。榛原バッテリーキャンプは、まさにそんなクエスチョンをぶつけた取材である。それを象徴する答えが返ってきた。番組では使わなかったが、紹介したいと思う。

Q ;いしかわ君の理想って。、目に見えるものなの?

多映;あります。てゆーか、自分のピッチングを見て、まわりがそう感じるというのは、あります。人物像で言うとですね… メジャーリーグのランディ・ジョンソン。その人って凄いじゃないですか。ピッチャー的にはコントロールミスしないし、ああいうピッチャーになりたいですね。自分はコントロールが命なんで、あの選手のコントロールとか勝負強さを見習いたいです。

 いしかわ君は実はほとんど野球は見ない。それでもその名が出てくるということは余程の目標なのだろう。技巧派として名を馳せ、次なる目標に向かういしかわ君。最後にひとつ質問。

Q ;2001年の目標は?

多映;勝負どころに強いいしかわになりたい。勝負どころに強いいしかわをお見せして、尚且つ自分がその場を楽しんで投げているいしかわがいれば…いいです。それが全て。

  日本リーグは4月末、鹿児島と長野から始まる。夏にはまた全日本が召集され、2002世界選手権での「金」に向けた戦いが始まって行く。

 現在いしかわ君は地元・戸塚で今季リーグに向けて頑張っている。そしてこのHPが更新されたころ、全日本代表選考会に新たな気持ちで臨んでいるはずである。

 いしかわ君の今後に、期待したい。

【GET SPO RTS ディレクター  長田 誠】