2.男子シングル、注目の試合は?

――では今年も楽しみな試合が続くグランプリシリーズ6大会、そしてファイナル。このうち、今シーズン荒川さんが注目している大会を教えてください。まず男子シングルでは?

荒川 今年の男子は、各大会にいい感じで有力選手がばらけましたね! どの大会もなかなか魅力的……。私はまずはアメリカ大会で、昨年のジュニアチャンピオンのアダム・リッポン(アメリカ)の登場を楽しみにしています。彼はまだ18歳と若い。でもオリンピックを見据えて、今年からシニアに上がってきました。彼がシニアでどこまで名前をアピールできるのか……これは見所だと思います。先ほどはプレ五輪シーズン、楽な気持ちで、という話をしましたが、ジュニアからデビューの選手たちだけは、必死になった方がいい。必死になって当たって砕けてもいい年齢ですし、若くしてオリンピックを目指すなら、必死になってメンタル的にも鍛えなければならない年齢です。上のお兄さんたちが楽な気持ちで過ごしているうちに、食いつけるくらいの戦いができるといいですね。今食いつけないと、来年はその隙もありませんから。

――そんなシニア1年生たちの中でも、注目はアダム・リッポン!

荒川 彼はジャンプの大きな技があるわけではない。大技無しのままジュニアとしてはトップを掴んだけれど、シニアではどこに自分の位置を置いてくるのか。練習中だというトリプルアクセルが入るかどうかも楽しみですしね。アメリカ大会では、エバン・ライザチェックジョニー・ウィアー(ともにアメリカ)ら、トップのメンバーも、たぶんまだ4回転は跳んでこないと思いますので、アクセルが綺麗に入ればあるいは……という気もします。その点では、やはり若手の小塚崇彦選手も、アメリカ大会はチャンスかもしれないですね。4回転合戦にはならないだろう初戦で、きっちり今出来ることをやって、プラスの評価をもらって。ライザチェックやウィアーとも対等に戦える力を見せてほしいところです。世界選手権となると、上に立つ人が多すぎて食いつくのも大変ですが、この二人くらいならあるいは、という雰囲気もある。そんな若い選手の奮闘を見られるのも、グランプリシリーズの面白さです。世界のトップの普段は絡めないような選手たちと、直接ぶつかることができるのですから攻めていってほしいと思います。

――まずはアメリカ大会、若い選手の挑戦に、注目!

荒川 次に楽しみなのは、日本大会での織田信成選手と高橋大輔選手の対決かな。またそこに絡むウィアーが4回転を使ってくるかどうか……。グランプリシリーズ初出場の無良崇人選手も、オリンピックを狙うのだったら、一つでも上のグループに食いつきたいところですね。ウィアーは先日のチャンピオンズオンアイス(9月)にも元気に来日してくれて、いつものきれいなスケートを見せてくれました。織田君も今年は4回転、入れてくると思いますよ! 彼は器用なので、もうちょっとで跳べそうという段階に、かなり前からきていましたが、なかなか試合で入れてくるまでの完成度はなかった。それが今年は、わりときっちりと跳べてきている。復帰戦ということで、彼も思いっきりやってくるでしょうしね。また高橋選手は、ショートプログラムでの4回転を宣言。グランプリシリーズも6戦まで来ると、みな調子を上げてきていますし、日本大会では4回転の必要性がかなり高まっているでしょう。

――アメリカ大会から日本大会まで戦って……やはりファイナルは、いつものメンバーが有力でしょうか。

荒川 そうですね。バトルの引退は残念でしたが、ウィアーブライアン・ジュベール(フランス)、ライザチェックたちは、今年もがんばってくるでしょう。ジュベールの状態はまだよくわからないのですが、フレンズオンアイス(7月)で共演してくれたライザチェックからは、その後ケガの話などは聞いてないですし、彼は昨シーズンから全試合ショートプログラムで4回転を跳んでいる。

――ファイナル進出のチャンス、誰もが狙ってきますね。

荒川 織田選手不在の間に活躍した昨年の小塚選手のように、誰かが抜けた穴を埋めて、そこを確かな自分のポジションにしてしまう、跳びこんできたチャンスは、絶対ものにしていく……。そんな強さが求められますね。シニアデビュー世代も、小塚選手の世代も、トップ選手グループも、世界は団子状態。男子は特に、近いレベルでたくさんの選手が競っています。少しでも上を見ていかないと、すぐに回りにのまれてしまう。でも逆にいえば、トップが不動の女子よりも、下の選手は食いつくチャンスが大きいのが、今の男子シングルですね。



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