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瀬古が斬る

第48回全日本大学駅伝を斬る

青学大の優勝は、まさに王者の戦いだった。途中早大に先行されたが、決して焦ることはなかった。想定内のレースだった言えるだろう。50秒差をあっさり逆転したエース一色はさすが。2区や4区ではなく、アンカーに使えたことは大きい。青学大はそれだけ層が厚いということだ。

2位早大は健闘したと思う。最終区での逆転だけに優勝させてあげたかった気もするが、十分な結果だ。1区~3区、4年生が走った。大学駅伝は4年生が強いところは基本的に強いのだ。

3位山梨学大は、ニャイロだけが強いのではない。全体的に力がついているので、この結果が得られた。

4位駒大、6位東洋大は、正直に言って優勝候補と思っていなかった。陣容的にこのぐらいの結果が妥当だったと考える。

5位の中央学大は大健闘だ。1年生3人、2年生3人を起用。新鮮で今後が楽しみなチームといえる。

残念ながらシード権は逃したが、7位の東海大は楽しみだ。有望な1年生が多く入ってきているし、今後強くなるのは間違いない。

8位の拓大も、健闘したといえるだろう。中盤はシード争いに絡んでいた。

とにかく今回は青学大の強さが目立った。MVPはもちろん一色なのは間違いない。彼は怪我もしないし、暑さにも強そうだ。東京五輪のマラソンに期待したいところだ。

瀬古が斬る 今大会展望

青学は去年、優勝を狙って、できなかったので、今年は失敗しないと思う。全体が伸びている。1,2年生も育っている。神野君が卒業しても有り余る戦力。1年生がいい走りをしているので楽しみ。原監督がマラソンもやろうという意識で長い距離を踏ませている。安定感がでてきた。全員がマラソンをやろうという雰囲気になっているので、いい雰囲気になっている。距離が長いほど得意なチームなので、出雲が一番心配だった。そこで勝ったということは、全日本ではもっと有利な展開になるのでは。4年生が強いチームは力がまとまる。全日本も盤石だし、箱根に向かっても隙がないのでは。

(青学の対抗馬は)山梨学院。若さの東海大学。東海大は鬼塚君や關君というすごい新人が入ってきた。去年の高校ランキングの上位ほとんどが東海に入学している。両角監督の手腕ですね。本当に優勝を狙いにくる1、2年後にはすごいチームになっていると思う。台風の目になる事は間違いなし。伸びしろが読めないので、一気に開花して大爆発する可能性はある。5000の記録はいいが10000がまだまだ。その辺の走り込みをしっかりできればもっと伸びる。ただ距離が長いと1年生はちょっと不安。安定感には欠ける。東海大は長い距離、アンカーが他のチームに比べて手薄。いかに若い選手が繋いで、アンカーに余裕を持たせられるか。1年生が皆いい走りをして、アンカーに1分くらい貯金を持たせればチャンスはある。

山梨学院も優勝候補の筆頭だと思います。アンカーまでに青学を慌てさせればチャンスありますね。高校駅伝の優勝メンバーが全員入ってきましたから。今の3年生とニャイロ、この全員が走ったら東海と青学も慌てると思います。ニャイロは当然アンカーだろうからそこまで70秒くらいの差で持ってくれば優勝はあり得る。戦える陣容ではあると思います。ニャイロ選手は日本人には負けないという自信がある。長い距離も短い距離も走れる。トップで渡したら100%勝てます。アンカーにニャイロがいるということはどこの大学にもない強み。これをうまく活かさないともったいない。

東洋は、去年の服部勇馬君みたいな長距離も短距離もいける選手が少ない。去年と比べたら戦力ダウン。駒澤、早稲田とともに第二グループ的位置。去年のような優勝するほどの力はないのかな。ただ、去年勝っていますから。全日本の勝ち方は知っているチーム。出雲みたいな戦い方はしないと思います。

駒澤は一時期の勢いがなくなってきている。大エースがいなくなった。スピードランナーも他のチームと比べたら戦力ダウンは否めない。けがをしていた中谷君をどこに使ってくるか。アンカーまで待てないと思うので、前半に使ってくると思うんですけど。そこで流れを一気に変えていかないと厳しい戦力。中谷君頼みになっている。最近の駒澤からしたら危機。

早稲田は優勝するチームにしては戦力が足りない。エースがいない。アンカーを走る選手が他のチームと比べて手薄。ただ、出雲で負けたことがいい方に繋がると思うので。皆で危機感を持って。うまくいけば3、4位あたり、少なくとも5番以内には入ってくると思う。駒澤も東洋も去年よりは戦力が落ちているので、そこをうまく利用して抜いていく必要がある。青学とは力の差がかなりあるので、勝つには相当な努力が必要。

予想順位をつけるなら、1位・青学、2位・山梨、3位・東海、4位・駒澤、5位・早稲田。早稲田、東洋、駒澤で4~6位の争いがある。東海は一人失敗するとばたばたといきそう。1年生主体だから少し心配。うまくいくと青学の前に行っちゃうかもしれない。そういうおもしろいところが東海にはある。青学は去年、失敗したから今年は失敗はないです。選手層も厚いし、盤石で来るかと。賭けはしない。

今年はずば抜けた選手がいない。自分で逃げていく選手はいないので、先行逃げ切りパターンはない。上位チームは様子見。3区までは並んで来て、4区で抜け出すかどうかという感じ。今年の全日本大学駅伝は4区を見ろ。4区で勝負が決まります。4区で抜け出したところが優勝候補の筆頭ですね。4区はエースが来るんです。エースはチームを引っ張る原動力。そのエースが頑張ったチームが勝ちます。アンカーではないと思います。青学が4区で抜けたら決定打。そこは東海、山梨が前にいて欲しいなと思います。

瀬古利彦
1956年三重県出身 DeNAランニングクラブ総監督

言わずと知れた「伝説のマラソンランナー」瀬古利彦氏。
1980年代、日本、そして、世界のマラソン界をリード。マラソン全戦績15戦10勝、福岡、東京はもちろん、ボストン、ロンドン、シカゴ・・・世界のビッグレースを総ナメにした。その勝率と共に切れ味するどいスパートで一時代を築いた「マラソン界のカリスマ」。
早稲田大学時代は、エースとして箱根駅伝で大活躍、まさに大学駅伝から世界へと羽ばたいていったパイオニアである。低迷する男子長距離・マラソンを憂う瀬古氏が、今、「復活」のカギとして最も期待しているのが学生長距離界だ。そんな期待も込めつつ、瀬古氏ならではの厳しくも優しい視点と切り口で、レースを解説。