トップ > 予選会 > 瀬古が斬る
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激戦の関東予選は、第1組前のオープンレースが激しい雷雨で途中打ち切り。その後、選考レース対象の第1組から第4組は予定時刻に行われたが、断続的に雨が降る過酷な戦いとなった。しかし気温が下がった分、選手にとってこの時期にしては走りやすい状況になったと思うし、番狂わせも少なかった。
1位神大、2位順大、3位東海大、4位上武大、5位大東大、6位城西大、7位中央学大という予選通過は、極めて順当であった。意外な大学がサプライズで入ったという印象はない。
例えば神大は、第1組2位(赤松宏樹・4年)、第2組5位(浅井宗一郎・1年)、第3組7位(柏部孝太郎・4年)&9位(我那覇和真・3年)、第4組7位(柿原聖哉・4年)と、各組で一桁順位に1人は食い込んだ。こういった安定感は、駅伝に重要だ。予選を突破した7校は、大崩れをした選手もおらず、よく仕上げたと思う。
帝京大は3組目までの6位から、最終的に8位。日大は3組目まで11位から、留学生ダニエル・ムイバ・キトニー(4年、第4組1位)による逆転を狙ったが、最終的に9位。それぞれ惜しい結果となった。しかし、今回の関東予選参加校上位の大学は、実力差はほとんど感じられない。その日の出来によって1位も予選落ちもある大混戦だ。実際、8人合計の総合タイムで、1位と2位の差が1秒以内、1位と7位の差が約58秒。本戦行きを分けた7位と8位の差は約15秒、つまり1人当たり2秒以内だったのだ。
個人的に目立って見えたのは、城西大の村山絋太(4年、第4組2位)と中央学大の潰滝大記(3年、第4組3位)。村山は以前に比べ、好不調の波がなくなった。アジア大会5000m代表にもなった、成長のあとが見られる。潰滝はアグレッシブな走りで、いつも先頭で引っ張る能力がある。将来、マラソンでの活躍を期待したい選手だ。この両者には、学生を代表するランナーへと飛躍してほしい。
今回予選会免除のシード校(駒大、東洋大、明大、早大、山学大、青山学大、日体大)に目を向けると、やはり駒大と東洋大が一歩抜けていると見る。昨年に比べ、それぞれ窪田、設楽兄弟とエースは抜けたが、駒大は村山謙太(4年)、東洋大は服部勇馬(3年)を中心に、力のある選手がまだまだいる。予選会通過の7校にとって、正直なところ、簡単には追いつけない差を感じる。さて、夏のトレーニングを超えた本戦での変化がどうなるのだろうか!?
また、駒大村山、東洋大服部には、東京五輪に向けた成長に期待したい。2020年は彼らが中心の世代となる。大学駅伝だけの枠に留まらない、世界のマラソンシーンで活躍する選手となってほしい。
1956年三重県出身 DeNAランニングクラブ総監督
言わずと知れた「伝説のマラソンランナー」瀬古利彦氏。
1980年代、日本、そして、世界のマラソン界をリード。マラソン全戦績15戦10勝、福岡、東京はもちろん、ボストン、ロンドン、シカゴ・・・世界のビッグレースを総ナメにした。その勝率と共に切れ味するどいスパートで一時代を築いた「マラソン界のカリスマ」。
早稲田大学時代は、エースとして箱根駅伝で大活躍、まさに大学駅伝から世界へと羽ばたいていったパイオニアである。低迷する男子長距離・マラソンを憂う瀬古氏が、今、「復活」のカギとして最も期待しているのが学生長距離界だ。そんな期待も込めつつ、瀬古氏ならではの厳しくも優しい視点と切り口で、レースを解説。