第40回全日本大学駅伝を斬る
3連覇を達成した駒大は、誰がヒーローということではなくみんながムラなく、全員で優勝をもぎ取った。すべての選手が喜べる、駅伝としては最も素晴しい勝ち方だった。
最後に2大エースの一人、深津卓也(3年)がいることが強みであり、5区、6区など余裕の走りが出来ていた。無理にいかなくても、最後に勝っていればいいという体制。深津をアンカーに置けるのは大きかった。
2位の早大は、10月の出雲駅伝では1年生がよくなかったが、今回は彼らが意地を見せ、チームの流れを作った。竹澤健介(4年)も脚に痛みのある中、よく走った。彼のチームの主将としての気持ちが、1年生にも伝わったのでは。今回は1年生から4年生までバランスよく、チームワークよく走っていた印象だ。
3位の山梨学大は、M・モグス(4年)O・コスマス(1年)の2人の留学生が強いだけでなく、日本人選手も今回はよく健闘した。それが3位につながった。駅伝は、留学生だけで勝てるものではない。
4位の東洋大は、1区・そして2区柏原竜二(1年)のいい流れを切らさず、後に続く選手たちが、最後まで粘って粘って走った。距離の長い箱根駅伝だと、もっと伸びると思う。
5位の中央学大は、木原真佐人(4年)が復活の走りを見せるなど、よくがんばったと思う。箱根駅伝3位の実力は伊達じゃなかった。6位の日大は、出雲駅伝など短い距離はいつもいい成績をおさめるが、長い距離をみんなが走れるようにならないと、全日本や箱根で勝つのは難しいだろう。G・ダニエル(3年)頼みでは、限界がある。もうちょっと底上げしてほしい。
7位の第一工大は、途中までシード権もいけるかなと思ったが後半失速してしまった。アンカーのK・キブゲノン(1年)もモグスほどの力はないので、せめて6位と1分差をもっていきたかった。

とにかく今回は駒大のチーム力の強さが際立っていて、また来年も勝つのではという予測が出来る。駒大を破るような大学が出てこないと面白くない展開だ。
瀬古利彦プロフィール
1956年三重県出身
財団法人日本オリンピック委員会 理事・財団法人日本陸上競技連盟 理事
言わずと知れた「伝説のマラソンランナー」瀬古利彦氏。
1980年代、日本、そして、世界のマラソン界をリード。マラソン全戦績15戦10勝、福岡、東京はもちろん、ボストン、ロンドン、シカゴ…世界のビッグレースを総ナメにした。その勝率と共に切れ味鋭いスパートで一時代を築いた「マラソン界のカリスマ」。
早稲田大学時代は、エースとして箱根駅伝で大活躍、まさに大学駅伝から世界へと羽ばたいていったパイオニアである。低迷する男子長距離・マラソンを憂う瀬古氏が、今、「復活」のカギとして最も期待しているのが学生長距離界だ。そんな期待も込めつつ、瀬古氏ならではの厳しくも優しい視点と切り口で、レースを解説。