【大学便り】有力校の夏合宿
日本体育大学
全日本大学駅伝で準優勝という成績を残しながら、箱根駅伝ではまさかの12位に終わった日体大。「新チームになってもいいムードに乗り切れなかった」と別府健至監督はシーズン前半を振り返る。しかし、夏合宿がスタートすると、2年生が停滞気味だった空気を吹き飛ばした。北海道・別海合宿(8月15~28日)には選抜19人中7人の2年生が参加。昨年の全日本で活躍した野口拓也、出口和也、谷野琢弥の3人がチームを盛り立てると、筱嵜昌道、松田佑太も力をつけた。キャプテンの野口功太も「2年生に勢いがあるので、4年生も自覚を持って後輩たちを引っ張るようになりました」とチームの変化を話しており、秋には強い日体大が見られそうな雰囲気だ。
中央大学
スピードキング・上野裕一郎(現・ヱスビー食品)が卒業し、春から浦田春生駅伝監督(バルセロナ五輪10000m代表)が就任した中大。選抜20名が参加した北海道・弟子屈合宿(8月18日~28日)では順調にトレーニングを消化した。練習メニューの基本的な流れは昨年までとは変えていないというが、25km、30kmの距離走や時間走をベースに「途中のラップを落とさないようにして、ラストは少し上げる」(浦田監督)かたちで走り込んだ。「故障も少なく、みんなしっかりと走れています」と副キャプテンの森誠則も夏合宿の成果を話すなど、スーパーエースが卒業した名門が、浦田新体制のもと確実に進化の道を進んでいる。
東海大学
Aチームが8月17から9月3日まで北海道(八雲、千歳)で合宿を行うと、トラッシーズンでは振るわなかっチームにようやく明るい兆しが見え始めた。新居利広コーチは「昨年と比べて、戦力的にダウンしているので、ケガ人が出ないように気をつけました。同時に1、2年生の強化に重点を置きました」と夏合宿のポイントを話した。そして、1年生の栗原俊、刀祢健太郎、2年生の河野晴友、平山竜成らを中心に「ある程度は強化できたと思います」とその成果を感じている。北海道合宿では「雰囲気作り」にも意識を置いて取り組んできたという東海大。充実の夏合宿で箱根駅伝"途中棄権"のショックを振り払い、駅伝シーズンでの飛躍を期す。
山梨学院大学
山梨学大が毎年夏合宿を行う車山高原は絶好のロケーションだ。近くの白樺湖畔は、1周4kmほどの安全なロードコース。景色のいいビーナスラインを霧ヶ峰方面へ行くと、スピード練習ができる競技場と、ウッドチップなどで整備されたクロカンコースがある。山梨学大に粘り強い選手がよく台頭するのは、クロカンを中心にじっくりと土台を作る練習があるから。今年は1次~3次のすべての合宿に"満点の出来"を求め、密度の濃いトレーニングを消化した。消化率の良い選手ほど疲労が大きく出たが、アフターケアへの高い意識と、チームの団結力で乗り切った。一方、北海道マラソン(8月31日)ではOBの高見澤勝(佐久長聖教員クラブ)が優勝し、チームの士気が高まった。
東洋大学
8月中旬の黒姫合宿は例年通り"足慣らし"的な位置づけ。内容が本格化したのは8月24日から9月1日に山形・蔵王で行った坊平合宿だ。練習の大部分を1周3kmのクロカンコースで行い、「最低でも1日40kmぐらい」(川嶋伸次監督)とひたすら距離を踏んできた。走路が芝生だったことも幸いし、故障者でも1日50~60kmを走り込んだという。
今季前半のトラックレースで大活躍した柏原竜二はいまやエース的存在。1年生ながら練習の消化具合はチーム内でもトップクラスで、部員からの信頼も厚い。スピードランナーの宇野博之も期待のルーキー。大西智也ら頼れる上級生を軸に、駅伝では公約の"トップスリー入り"を目指すことになりそうだ。
帝京大学
全日本大学駅伝は厳しい選考会を突破して出場権獲得。関東インカレでも好成績を挙げており、帝京大への評価は日増しに高まっている。夏合宿は8月18日から標高1800mの群馬県・万座で開始し、8月27日に新潟県・妙高高原へ移動。9月3~18日は北海道・士別で汗を流した。「合宿にこれというテーマはウチにはないです。ベストパフォーマンスを出せる準備をする、ということだけです」と中野孝行監督。過剰な距離を練習させる必要はないという考えから、ポイント練習は量より質を重視している。2年、4年の主力がますます充実で、3年生も奮起して力をつけてきた。飛び抜けたエースはいないが、高水準のレギュラー争いがチーム力を引き上げる。
日本大学
全日本大学駅伝選考会は薄氷を踏む通過だったが、逆に言えば名門の底力を見せた一戦でもあった。当時、本調子だった選手は皆無。あとは上昇に転じるのみだ。4月から急遽新たな任に就いた堀込隆ヘッドコーチと、コーチが信頼する野中章弘主務、笹谷拓磨主将、阿部豊幸副主将が試行錯誤しながらチームを運営。夏合宿も協議した結果、昨年までの北海道合宿をやめ、長野県・菅平と山梨県・山中湖のセミナーハウスをベースに組んだ。個々の状況にばらつきがあることから、個別のペースで走る形態からスタート。そのさじ加減が奏功し、新たな故障者もなく、足並みがそろってきた。集団での距離走で追い込んでいくのは合宿後半に。苦しい時期を乗り越え、名門のプライドを取り戻そうとしている。
情報提供/月刊陸上競技
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