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毎週土曜 夜

放送内容

2018.02.10 #196

荒井美波(あらい みなみ)
[ 直筆文字作家 ]

宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の直筆原稿…ではなく、よく見ると文字が針金で出来ている。生み出したのは、荒井美波。作家の直筆原稿の文字を針金で再現する直筆文字作家。
作り方は、まず直筆原稿の文字と同じ形や大きさになるように、針金を忠実に曲げる。できた針金は、原稿用紙に見立てたキャンバスに、直筆原稿の文字と同じ配置になるように刺す。この地道な作業を繰り返し、作品を作っていく。

「ぐちゃぐちゃな文字でも忠実に再現していきます。原稿を書いた作者の癖を表現したいと思っています。」

平面に書かれた文字を針金で立体に変える荒井の作品。そこに込められたデザイン・コードとは…

【文字の奥にある人間味】

『雨ニモマケズ』の原稿から感じ取ったのは…
 
「直筆原稿を見ると『雨ニマケズ、風ニマケズ』と書いた後に、言葉のキレが悪かったのか、あとから“モ”を足しているんです。ここで一度、宮沢賢治が思考した痕跡が見られますね。」

荒井は、後から書き足された『モ』の文字を、他の文字より高く作ることで、宮沢賢治の迷いを目で見える形にした。
太宰治の『人間失格』では、文字を書き直した部分を極端に高くしている。

「出版された本を読んでいるだけでは、気付かないような作家の葛藤や悩みが実感できるかなと思います。」

作家の内面にこだわる荒井だが、自分のこととなると…

「制作に没頭しすぎると、すごい量の針金が服に付いたりしますね。たまに、気付かずにそのまま料理を食べたりすると、ご飯の中に針金が落ちてきて、初めて気付いたりしますね。」