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伊藤
[ ペーパーアーティスト ]

2015.09.19

 

伊藤航(いとうわたる)
[ ペーパーアーティスト ]

暗闇に浮かび上がる、紙だけで作られた純白の作品「海の上のお城」。生み出したのは、ペーパーアーティスト・伊藤航。

「幅2.4メートル、高さ1メートルのこの作品には、城だけではなく、教会や学校、観覧車や電車などが走っていて、街を形成しています。最初はロケットを作ろうと思ったんですが、それが城の先端に見えて、作っていくうちにどんどん壮大な街になっていった感じです。大学に在学中の4年間をかけて作った処女作です。」

その後、伊藤は、身近にある題材にのめり込んでいく。掃除機や電話機、飛行機の滑走路など様々な人工物を紙だけで作り上げていく。

「自然物よりも人工物が好きなので、街の中で見かけたものや、人の手で作ったようなものを作品にできないかなと考えていますね。」

見慣れたものをまっ白な紙で表現する伊藤の作品。
そこに込められたデザイン・コードとは…。

【色を無くして形を引き出す】

「真っ白な紙を使い色をなくすことで、形のきれいさや形の強さを引き出せるのかなと思っています。工場の入り組んだ配管を紙だけで作った時には、実際に工場で働いている方がその作品を見て、“自分たちの職場ってこんなにきれいな形だったんだな。普段は機械油で汚れているから気づかなかった”とおっしゃっていたので、形のきれいさが伝えられているのかなと思います」

東京タワーを連ねたアート作品も、細部の形状に注目してほしいという。

「東京タワーのイメージって、すごく赤が強いと思うんですよね。その赤色を抜くといろんな形のものに見えてきますよ。普段何気なく見ている構造物にも隠れた面白さがあると思います。ちょっと遊び心があったり、柔らかい曲線なども人工物の魅力の一つかなと思います。」