松川栞(まつかわ しおり)
[ 空間模型作家 ]
一箇所だけ穴が空いた、奥行き20センチの木箱。その穴を覗くと、長いテーブルの上にティーカップやポットなどが並んだ「お茶会」の風景が広がる。
作ったのは、松川 栞(まつかわ しおり)。遠近法を駆使し、木箱の中に奥行きのある風景を作り出す「空間模型作家」。主に日用品を使って、小さな世界を作りだす。
「ミニチュアのティーカップの材料には、プラスチックのコップを使いました。ただ小さく作るのではなく、テーブルの手前に置くものは大きく作り、奥に置くものは小さく作っています。そうすることでより遠近感のある空間になるんです。」
別の木箱の中には…
「フランスのステンドグラスがある建物を表現しました。ステンドグラスは一枚一枚、細かく絵柄を入れて作っています。」
見る者を異空間へといざなう松川の作品。そこに込められたデザイン・コードとは…
【ベストポジション】
「その作品にとってのベストポジションから覗いてもらっています。覗き穴をつけて見る位置を固定することで、様々な仕掛けを仕込むことができますね。」
松林を表現した作品に仕込んだのは、半透明のクリアファイル。
「林の中にクリアファイルをいれることで霧のように見えます。霧を再現することでより遠近感を表現することができますね。」
木造の廊下を表現した作品に施したのは、光の演出。
「廊下の窓から太陽光が当たっているようにしたかったので、窓の外に照明を設置し、その照明自体は箱で隠れるようにしています。」
外見はただの木箱にしか見えないため、展示会ではこんなことも…
「一見、いくつかの木箱が置いてあるだけなので“何だこれ?”というような表情をする方も多いんです。でも、穴を覗いて“ワッ!”って笑顔になってくれるのを見ると、やっぱり嬉しくなりますね。」