鬼原美希(きはら みき)
[ 綴れ織作家 ]
羽の生えた女性をモチーフにした絵画…ではなく、無数の糸が絡み合う織物。
作者は鬼原美希。
着物の帯などに用いられる綴れ織(つづれおり)という技法で作品を作るアーティスト。白い経糸(たていと)の間に緯糸(よこいと)を織り込む技法で、一日に織れるのはわずか10センチ。
「絵画でいう絵の具を糸に置き換えてスケッチ感覚で仕上げていける。
一番時間がかかった作品だと、原画を描くことも含めて半年くらいかかってしまいましたね。」
恋人の瞳に映った自分の姿など、日常の何気ない出来事をモチーフにする鬼原。その作品に込められたデザイン・コードとは…
【日常はドラマチック!】
表現したいのは日常に潜むドラマチックな瞬間。
侵略を意味する作品「invade」は、歯の治療を受けている様子を独特の視点で切り取っている。
「私が大口開けて歯医者さんを侵略しようとしているようにも見えるし、歯医者さんが器具で私を侵略しているようにも見えるし…異常空間だと思って。」
恋人に別れを告げられ、号泣する鬼原自身を表現した作品では…
「別れを“ヤダヤダ!”って駄々をこねている私なんですよ。冷静に考えると意外と別れのことだけを考えているわけではないなって。」
恋人にカレーを作った思い出が浮かんだかと思えば、関係ないロックンロールが鳴り響いたり、泣きながら頭の中で様々な思いが交錯していたことを表現した。
「何でこの時泣いたんだろうとか掘り下げていくと、気づかなかった大事なことがそこに隠れていたりとか…思い出してほしいんですよね。自分のパターンで。」