題名のない音楽会 毎週日曜あさ9時

10月6日の楽曲紹介

♪1:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲ト長調 K.423
作曲 : W.A.モーツァルト
ヴァイオリン : 樫本大進
ヴィオラ : 川本嘉子
1783年、モーツァルトが前年に結婚した妻との間に第一子である長男が誕生した27歳の時に作曲。ミヒャエル・ハイドン(パパ・ハイドンの弟)が大司教の命で「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲」を作曲しなければならなかったが、重病だったためミヒャエルを敬愛するモーツァルトが代わりに作曲。ミヒャエルは、モーツァルトの自筆譜を思い出の品として、ずっと大切にしていたと言われる。ヴァイオリンとヴィオラという2つの旋律楽器のみという特殊な編成のため、両奏者が低音も担当する難曲。今回、樫本大進がこの曲を選んだのも、信頼を寄せる川本嘉子となら、ということで実現。

第2楽章では、ヴァイオリンとヴィオラがまるでオペラの二重唱のように旋律を奏で合う緩徐楽章。18世紀当時、音楽界の主役はソプラノ歌手であり器楽ソロ奏者には「ソプラノが歌うような」演奏が求められた。この曲はモーツァルトが得意とした女声二重唱のような華やかな趣きを持つ曲想。

2つの楽器の絡み合いは、この作曲の契機となったミヒャエル・ハイドンの対位法から影響を受けている。樫本大進曰く「コンサートマスターと室内楽のヴァイオリニストの役割はまったく違うが、全体的に見れば、オーケストラは大きな室内楽を演奏している、という気持ちがする」とのこと。樫本大進は、室内楽とオーケストラを活動の両輪と考え、演奏活動している。