題名のない音楽会 毎週日曜あさ9時

1月20日の楽曲紹介

♪1:交響曲第6番「悲劇的」 第1楽章 より
この作品は、アルマと結婚した翌年1903年から作曲。2人の女児にも恵まれ、ウィーン宮廷歌劇場で芸術監督を務めていたマーラーは、公私に渡りまさに幸せの絶頂期であった。一方、世の中は世紀末ウィーンの退廃した空気で淀んでおり、冒頭はそんな世相を反映したかのような暗さである。西原稔氏曰く、マーラーは、6歳の時に起こったプロイセンとのオーストリア戦争で、オーストリアの敗残兵の行進を目撃した可能性が高く、その幼児体験が“暗い行進曲”を生み出す原点だとしている。
♪2:交響曲第6番「悲劇的」 第4楽章 より
マーラーはハンマーについて「英雄は敵から3回攻撃を受け、3回目に木のように倒れる」とアルマに語った。作曲過程で打数は5回から3回、2回となっていくが、3回目は英雄すなわち<自分の死>を暗示した。現在、演奏会ではマーラーの最終決定に基づきハンマー打数を2回とすることが多い。しかし、今回の佐渡裕の指揮では<マーラーの死>を意味する3打目を加えて演奏。これは佐渡の師匠であり、現代のマーラー人気を築いたレナード・バーンスタインの解釈による。
この「悲劇的」という副題は、マーラー自身が指揮をした初演時に、曲の印象から付けられた。また、この作品はマーラーの運命を暗示する「予言的作品」と捉えられることがある。これはこの「悲劇的」や歌曲「亡き子をしのぶ歌」の発表後長女の死、自身の心臓病の発覚、そして仕事でも宮廷歌劇場を辞任に追い込まれるなど、順風満帆だった生活が作品のごとく不幸に見舞われたためである。これは妻のアルマが晩年に書いた「回想録」の記述によるが、内容は全面的には信用できないものである。
作曲 : G.マーラー
指揮 : 佐渡 裕
演奏 : 日本フィルハーモニー交響楽団