今回の地球家族は、香港で日本のラーメンで勝負している小村由樹さんとその家族。
日本から飛行機でわずか４時間の香港は、日本からの観光地としても有名です。高層ビルや近代的なビルの間に昔ながらのエネルギッシュな街が広がっています。



小村さんが香港に移り住んだのは１９９０年のこと。それはある劇的な出会いから始まりました。その年、アルバイトで貯めたお金で友達と中国を旅行していた小村さんは、その旅の途中でジェニファーさんに出会ったのです。意気投合した二人はその後二ヶ月間中国と香港を一緒に旅して回り、徐々に結婚の意志を固めていきました。そして、なんとその旅行の終わりに香港で式を挙げ、そのまま香港に移り住んだのです。



当然小村さんには仕事がありませんでした。ジェニファーさんは新聞広告や電話帳で手当たり次第に電話をかけ、小村さんの仕事を探しました。言葉の壁と戦いながら始めたツアーガイドで、生活もなんとかできるようになった頃、香港の中国返還で旅行客が激減し、仕事への危機感が募りました。そこで、昔から好きだったラーメン店を開こうと考えたのです。



小村さんが開いたラーメン店｢ジャズラーメン｣は、中国大陸に近いファンレンという街にあります。店内は、カウンターが調理場を囲む純和風な造りで、小村さんの大好きなジャズが流れています。香港のラーメンは、ワンタンやつみれ、青菜などを乗せ、様々な香辛料が入った複雑な味のスープを使うのが主流です。小村さんの好きな日本のラーメンの味とは全く異なります。そこで小村さんは、日本のラーメンをこの地で広めようと考えたのです。



約９年間のツアーガイドで貯めたお金をはたいて開いた｢ジャズラーメン｣のオープン初日は、台風でした。お客さんもまばらで最悪のスタートとなりました。元々香港の人々にはなじみのない味での勝負。開店当時はなかなか香港の人たちに受け入れられませんでした。しかし、豚骨をじっくり煮込んで作ったこだわりのラーメンの味は徐々にお客を増やし、今ではなんと順番待ちがでるほどの人気ラーメン店となりました。



素人から始めたラーメン店を５年間がむしゃらに頑張りつづけた小村さんは、香港からかつての国境を越えた先にあるシンセンにマンションを購入しました。今は休みのときだけ訪れていますが、いずれはこのマンションを拠点にして店を広げていこうと考えています。
小村さんをどんな時もずっと支えつづけてきたのが、奥さんのジェニファーさん。現在では９歳になった長女の美樹ちゃんも学校から帰ってくるとお母さんのお手伝いをします。美樹ちゃんは将来お父さんと同じラーメン屋さんになりたいと思っています。将来二人が並んで働く姿が見られるかもしれません。