【ch1】Avicii追悼コンサート FOR MENTAL AWARENESS IN LOVING MEMORY OF TIM BERGLING

「“観る”音楽 Avicii追悼ライブ 集大成の先に見えたもの」

音楽は聴くものである。筆者も生まれてこの方そういう風に認識してきた。
ただ、今回のライブ映像を観て、映画を見たときと同じ涙、感情があふれ出てきた。
このライブには追悼という文字以上に強い感情が放出されているライブであった。

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まず、はじめにWithout Youのイントロとともに登場した Sandro Cavazza。

曲中で亡きAviciiに対して
「そばにいるかのような感覚だけどいないんだよね。
でも今夜は会場の6万人、世界中の皆が君を想いながら歌うよ。」
と気持ちをぐっと引き込むスピーチ。

続く2曲では1曲目では気付かなかった大勢の生オーケストラの壮大さ、
オーケストラで聴くAviciiの曲は斬新で違ったカッコよさに気づく。
Aviciiが亡くなった後に見つかった手記の中で、
かつてWake Me Upで組んだAloe Blaccと一緒に仕事がしたいと書いてあり実現した、生前未完成だったSOS。
歌い出し前のスピーチもリスペクトにあふれた感動的なものだった。

Fade Into Darknessでは会場6万人の共鳴を目の当たりにする。
闇に屈せず負けないという歌詞とリンクするかのように
会場中の観客が暗転するスタジアムを自発的にライトで照らし出し、
幻想的な空間を作り上げた。

I Could Be The Oneもこの日はダンスフロアで聞く普段の姿とは違って
Johanna Söderbergが発する歌詞の一言一言がスッと耳を通り抜けて心に響いてくる。
改めて歌詞のすばらしさに関心する。

Audra Maeが歌い上げるDear Boy、 Addicted To Youは
力強い歌声とともにエネルギーを感じる時間となった。

Aviciiとのプライベート写真とともにVargas & Lagolaが思い出を語り
Friend Of Mine、You Make Me、Tough Loveを熱唱していくが
友人の死を受け止め、歌い上げる姿と力強さには心を揺さぶられ、あふれるものがあった。

Adam Lambertは圧巻の美声でLay Me Downを歌い、
会場に華を添えながら明るくした。

Aviciiとは旧知の仲だったLucas Krügerにとって
特別な夜のスピーチとステージは
“彼”の死を再認識させるほどリアルに魂の叫びを感じた。
目を閉じて聴いても心に響くが、
Lucas Krügerの眼の奥にあるもの、眼差しの先に見える景色、
観客の表情と合わせて見返してみてほしい。
続くAviciiの親友Carl Falkが切なそうに、けれど力強く目の前にひろがる
昔夢見ていた光景についてのスピーチもさらに感傷的になる。
モニターに映し出されるAviciiの若かりし頃のフィルム風のムービーは
それだけでどこか懐かしさと哀愁の漂うものになっていた。一転して、
Lonely Togetherを熱唱し会場のボルテージを底上げしてくれたRita Oraは力強く、
抜群の歌唱力でこの1曲のだけでなくもっと聴きたいと思ってしまったが、
そもそもこの1曲4分だけのためにスウェーデンにやってきて猛烈に場を盛り上げて立ち去る仕事人みが痺れた。
このあたりからは普段Aviciiになじみの薄い方でも一度は耳にしたことのあるメロディーの連発なのではないか。

The Nightsというタイトルで父からの人生の教訓について描かれる発想力に再度驚かされているうちに
再び観客のライトによる幻想的な光景が広がり、歌詞の持つ言葉の重みを増してくれる。

テンポよくHey Brotherと続き6万人の大熱唱に圧倒されながらもあっという間に時間が過ぎていく。

Simon Aldredが歌うHeavenで会場は安らかで澄み切った空気になったように思う。

Waiting For Loveではモニターに映される気球が雲海を登っていくさまが何かを暗示しているようにも感じ、
Wake Me Upでは煌びやかな紙吹雪とは対照的にどこかエンディングのはかなさもにじみ出ていたように今となっては思う。

A Sky Full Of StarsではWaiting For Loveから映像で続いてきた、(もしくはこの特別な1夜)のジャーニーを終え、
とても純粋で神聖な空間に足を踏み入れたかのような気分になる。

世界的なブレイクのきっかけとなったLevelsが突然鳴り響く驚きも束の間で
コンサート全体を振りかえると
夜や闇、星や愛など歌詞に描かれる、相反する対称性が生み出す美しさや尊さ
映像や観客や表情から見て取れる動的な感情
アーティストの歌声、生オーケストラの力強さ、生命力
すべての要素がこの2時間を至高な時間にしたのだと気づかされるが
最後にモニターに映される“Tim”の笑顔には体の芯から震える何か熱い気持ちがこみあげてきて
死という現実について本能的に考え込んでしまう。この日に歌っていた人たちが乗り越えてきた悲しみが膨大なエネルギーとなり、
この会場から世界中に放出され、明日へエネルギーとして視聴者に受け取られたように感じる。
芸術的な美しさ、人生観の刺激されるドラマがこのコンサートには秘められているのではないか。
Aviciiを知らない人も、Aviciiの曲を知らない人も
Aviciiのライブに行ったことが無い人はもちろん、
そもそもアーティストのライブに行ったことが無い人、観たことが無い人にもぜひ観ていただきたい。
Photo : LenaLarsson/Oskar Brewitz
(文・冨田 和裕)

 

Avicii追悼コンサート FOR MENTAL AWARENESS IN LOVING MEMORY OF TIM BERGLING

1226日(木) よる1100



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