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身体で表現する芸術 |
(2008.08.09) |
中国が国家の威信をかけて行った北京オリンピック開会式も終了し、いよいよ競技が始まります。
オリンピックの試合が行われる会場で、最後の調整練習をするというのは選手にとって特別なものでしょう。本番を想定しながら、会場の雰囲気、照明、器具の様子などをチェックしていきます。
水立方ウォーターキ ューブ
水立方ウォーターキューブ(国家水泳センター)に行ってみると、まだ競技が始まっていないはずの飛込み台周辺になんだか大変な人だかり。
ああ・・・あれは・・・!!
中国の人気スター選手郭晶晶ではありませんか??
アテネで飛込2冠を達成して一躍スターダムに上り、今回の北京五輪でも、コーラのCMなどに引っ張りだこ。今回の北京五輪でも最も注目されている中国選手です。
ファインダーをのぞいていたカメラマンが「やあ、郭選手、かっこいいねえ。なんだか歌舞伎役者みたい!」と叫びます。
なるほど、そう言われてみると、つんとした獅子鼻が写楽の歌舞伎絵を思い出させます。
会場整理にあたるはずのボランティアも飛込み台の付近をぐるりと囲み、カメラを向けています。
郭晶晶選手(中国)
その中で堂々と飛込みを続ける郭選手。
このオリンピックの直前に、香港の大富豪との交際が報じられ、妊娠説や不出場説まで流布していました。また、記者会見で記者の質問に「そんなことに答える必要はない!」と答え、高慢ちきな女王というレッテルも貼られてしまいました。
スター選手が被りがちな悪意に満ちた見方もある中、まったく意に介した様子もなく、今は飛込の競技だけに集中しています。
そして飛込み台から、空中に飛び出す姿の美しいこと。
「空中に舞う」、まさにそんな表現がぴったりです。
ほかの選手よりも滞空時間が長いように見えるのは、そのモーションの残像が美しいせいでしょうか。
ボランティアやメディア関係者の目がくぎづけになり、ほう〜っというため息が会場を支配するのです。
初めてその動きを目の当たりにし、ぜひ本番を見てみたいと思いました。
郭選手の人気が高いのは、容姿でも話題のせいでもなく、やはりその動きの美しさからなのです。
スポーツは人間の身体で表現する芸術。
その言葉をかみしめた瞬間でした。
いよいよ、その祭典が始まります。