vol.2
自分を追い込む力 < Reported by 徳永有美 >
 
先日、7月12・13日に札幌の平岸プールで日本代表選手のオリエンテーション合宿が行われました。
ほとんどの選手が参加したこの合宿。
なかでも私の注目は北島康介選手です。
彼のここ何ヶ月の成長ぶりには目を見張るものがあります。
身も心も信じられない位のスピードで豊かになっています。

去年の世界水泳以降、会うたびに彼の身体は大きくなっていきました。
特に胸板が厚くなり、腕もふた周りほど太くなりました。筋トレの成果が現れているようです。
そして、それ以上に成長を感じるのが「心」。
シドニー五輪を経験し、世界水泳では念願のメダル獲得。
そこで、「自分は日の丸を背負い、世界で闘う男なんだ」という自覚が強く芽生えてきたのだと思います。
あれ以来、彼はカメラの前で話すことの意味を自分なりに考えました。
受け答えがしっかりしてきたのはもちろんのこと、マスコミに自らの目標などを話すことで自分自身にプレッシャーを巧く与えていく。
「有言実行」の男と呼ばれるようになった由縁がそこにあります。

世界水泳が終わった後、私はこれから北島選手がどのように水泳と向き合っていくのだろうと考えました。
きっといつか彼にとって高いハードルが出現する日が来るだろう。
彼はそれをどんな風に乗り越えていくのだろう。
メダルを獲り、自信に溢れる彼にもいつか悩む日が訪れるのだろうと。
「攻め」続けることに疲れる日も来るのではないか。何となくそう思ったのです。
しかし、そんな心配は全く必要ありませんでした。
彼は三木二郎という後輩と共に、妥協することなく水泳と向き合い、高いレベルで自分と闘いつづけていたのです。

日本代表の上野ヘッドコーチがこう話してくれました。
「今の日本代表選手のなかで『自分で自分を追い込める力』を世界と闘えるだけのレベルで持っているのは北島康介と山本貴司(バタフライ)だけかもしれません。
あれだけの集中力と厳しさを持って練習・レースに取り組み、成績も見事についてきている。
やはり、最後に勝つのは『自分を追い込める人間』なんですよ」北島選手はなぜそこまで自分を厳しく追い込めるのか。
それはきっと有言実行の彼が、今回ばかりは簡単に口にしない目標・夢がいよいよ自分の手で掴めるかもしれないという現実があるからなのかもしれません。
その夢をつかむ難しさを誰よりも感じ、誰よりも信じている。
それらのモチベーションが水泳への闘志に火をつけているのかもしれません。
簡単に口にしない目標−「それは表彰台の頂点に立つこと」なのだと思います。

2年近く、北島選手を見てきて思ったことがあります。
去年の世界水泳で北島選手の顔つきはレースごとに「勝負顔」に変わっていきました。
そして、パンパシを前にして彼の顔は「勝負顔」から「プロの顔」に変わり始めています。
自分の夢・目標を達成することだけでなく、人々に自分をどのように見せることができるのか。
そこまで意識し始めている北島選手。
極限まで自分を追い込んでいく北島康介。パンパシでの彼が楽しみです。

 
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