2/15 コラム/徳永有美
 
 トクナガ走る ☆ Vol.5

「 清水宏保選手のオリンピック 」

清水選手のソルトレーク五輪が終わりました。銀メダル。今まで「清水選手の敵は人間ではない」と思っていました。敵は清水選手にしか分かり得ない未知の領域…究極の限界。そんな清水選手でも4年に1度の瞬間にすべての照準を合わせることが、とてつもなく大変だと分かりました。

五輪の舞台とは、何て研ぎ澄まされた究極の世界なのでしょう。今シーズン、腰痛と戦ってきた清水選手は100%の力を一度も出せずに、五輪を迎えます。言ってみれば一発勝負。前日の1本目を2位で終えて清水選手は「順調に来ていない分、プレッシャーがあった。自分に対しての安定感が欲しい」と話していました。これは彼のすごく素直な気持ちだったと思います。

そしてこの日、34秒65に終わり、総合2位で銀メダル。滑り終わった様子を見ていて、持っている能力はこんなものではないだろうけど「今の彼」の状況で出せる力としては、これがすべてだったのだろうと思います。

清水選手はこの5年間で五百のタイムを1秒07縮めています。距離にして16メートル。5年前の自分は16メートル後ろにいるわけです。彼にとっての限界とはどんな世界なのか。清水選手のソルトレーク五輪は終わりましたが、清水宏保という選手が目指す理想に向けては一つのプロセスです。誰よりも悔しいのは彼のはず。何もかもを黙らせてしまうような強い視線の先には一体、どんな清水宏保がいるのだろう。

<この原稿はデイリースポーツにも掲載されています。>