2/11 コラム/坪井直樹
 
 ソルトレーク人情

「迷子になっても安心な街」

「下をご覧なさい!グレートソルトレークがあるから!」

ソルトレークシティに向かう飛行機の中、隣に座った老夫婦が期せずして私の専属ガイドになってくれた。バカンス帰りというこの2人。結局、到着までの2時間、「何か飲みたい?」などと、まるで子供の初めてのお使いを心配そうに見守る親のよう。本当に親切な方たちで驚いた。

でも街に入ってさらに驚いた!親切なのは街の人みんなだ!
 
取材で道に迷えば、どこからともなく人が来て目的地まで連れていってくれる。街頭インタビューを拒否する人は1人もいない。道で目が合ったら必ず満面の笑み…。そう、これには理由があるのです。

モルモン教の総本山があり、市民のほとんどがモルモン教徒。人々は忠実に「助け合い」「歓待」という教えを尊重し、常に親切心を忘れない。当のアメリカ人が「ここは一番親切な街」というソルトレークシティ。ホスピタリティとオリンピックの融和が実現すれば、この街で開催された意義も大きくなる。
 
あの9月11日以降、初めてアメリカで行われる大きな国際大会。すでに数え切れないほどカバンを開け、靴を脱ぎ、ボディチェックを受けた。テロへの警戒で厳重すぎる警備に辟易(へきえき)している時には市民の笑顔が癒してくれる。街にはそんな不思議なバランスが存在する。この気持ちはここへ来てみないと、なかなか芽生えない。

<この原稿はデイリースポーツにも掲載されています。>