2/9 コラム/中山貴雄
 
 キングオブスキー

複合の荻原健司選手北野建設は、ジャンプ後のインタビューで「飛ぶのが怖かった」と、ためらうことなく話した。「今シーズンの自分の実力を考えたら、緊張して飛ぶのが怖かった」。しかし、K点ちょうどのジャンプを2本そろえられたことで、クロスカントリーでしっかりと自分の勝負ができる、高まった集中力を決して緩めず、次を見据えた戦う男の顔をしていました。

複合というスポーツが、キング・オブ・スキーと呼ばれ、そのチャンピオンこそが、ヨーロッパの冬のスポーツの中で最も尊敬されることを、荻原選手の海外での活躍で知りました。美しく遠くへ飛び、力強く雪上を滑り切る。勇気を試され、過酷な状況を乗り切るコンバインド(複合)の王者こそが、敬意を持ってキング・オブ・スキーと称えられるのでしょう。

荻原健司はキングでした。八重歯が目立つ荻原選手の笑顔のゴールシーンを、何度もニュースで紹介してきました。しかし、ヨーロッパ勢も黙っていません。ルール改正に、自身のジャンプの不調も重なり荻原選手から、いつしか笑顔が消えていきました。

インタビューの最後に「今までの大会では、この位置で滑れば大体何番に入るか分かっていたんですが、明日はコース内で先頭の選手をしっかりと見ることができます」と言った。ミスター・キング・オブ・スキーに、熱い視線が戻ってきた瞬間でした。

<この原稿はデイリースポーツにも掲載されています。>