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えっ?火事?
嘘でしょう? なんで?
さっきまでの花火が原因で??
慌ててマイクをジャックに差込んで「ええ、こちらアテネ。競技場から数キロはなれた山で今火の手が上がっています」とリポートを始めました。
これが私の最初のアテネリポートとなってしまいました。
調べてみると、火事は本物でした。
場所はなんと、今回のアテネ五輪組織委員長アンゲロプスさんの私邸の庭に続く森。
焼けた森は一ヘクタールにも及んだそうです。
アンゲロプスさんといえば開会式でジャック・ロゲIOC会長の隣で延々と演説をしていたあの女性です。
実はこのときアンゲロプスさんは私邸に各国の首相や王族を招いてパーティーを催していたのです。幸いにも英国のブレアー首相、トルコの首相、パパ・ブッシュは危険だと警護の人びとに止められていたため、パーティーには出席していなかったのですが、まさにセレブな人びとがそこには集っていました。スペインのクイーンソフィア、ブルガリアの旧国王シミョン、ノルウェーのプリンス・ハーケン、ドイツのホルスト・ケラー、オリンピックスタジアム設計者カラトラバなどそうそうたるメンバーです。IOC委員も多く出席していたようです。
近所の人々はこの火事をテロの空爆によるものだと思ったといいます。
消防車が45台出動し、招待客たちはとる物もとりあえず逃げたそうです。
アンゲロプスは3・5トンの花火を盛大に打ち上げてパーティーを盛り上げようとしたのですが、とんだ結果になりました。本来花火を打ち上げてはいけない場所ですし、これだけの花火を打ち上げるときには消防署や市や警察などさまざまな許可を得なければならないのですが、彼女はその手続きを一切踏んでいませんでした。
アンゲロプスの豪腕ぶりを好ましく思ってこなかった人々が多かっただけに、今回の事件を自業自得と見るむきも多いようです。
ローマに火を放ったネロと同じだという厳しい批判の声も聞かれます。
即逮捕すべきとの強硬意見も聞かれます。
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アンゲロプスさんの不祥事を伝える |
ギリシャの富豪を夫に持ち、英国王室などにも出入りをし、将来のギリシャ大統領の座を狙っていたアンゲロプス。
思わぬところで彼女の本性が露呈したとにやつくアテネっ子たちも多いようです。
この事件は、若者たちが懸命にトレーニングをし、青春をこの一瞬にかけるオリンピックという舞台の裏側で、オリンピック貴族の特権をもてあそぶエゴ丸出しの大人たちのばかげた行為を代表するものという気がしてなりません。
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