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11月19日 幻のパンツ★下北マンボ


おしゃれのサイクルは10年とも20年とも言う。
あなたは、幻のパンツ「下北マンボ」を知っているだろうか?

私は今こそ、この「下北マンボ」の流行復活を願ってやまない。
今、「下北マンボ」とインターネットで検索しても、確かな情報はあまり得られない。

下北マンボとは昭和40年前後、
東京・下北沢のENNY(エニー)というお店でだけ売られていた、
細身で派手なプリント柄のパンツのことだ。
この派手なパンツを颯爽と着こなすのがオシャレだったそうだ。

世に言うマンボズボンとも違うし、サブリナパンツとも様子が違う。
それを知る人は、「下北マンボは下北マンボなのよ」という。

当時は、アメリカから入ってきた木綿のプリント生地が増えだした頃だった。
下北沢には、輸入された生地や可愛らしいボタンなど、
手芸用品店が多く並んでいたという。そこで生地を買って、
そのお店に持ち込んで、自分だけのオリジナルパンツを作ってもらう人も
少なくなかったという。

私の母親は、当時流行したその下北マンボを愛した人のひとりである。
ネットを検索しても、母と同じように当時から下北マンボを愛した人たちが、
その復活を願う個人ブログのページが多数出てくる。

私が中学生の頃くらいまで、ENNYというお店は存在した。
その良さがいまいちわからないままに、母に連れられ、
お店に入っていった思い出がうっすらある。
赤や黄色、まるで色鉛筆のセットを眺めているような
カラフルなパンツが店内に所狭しと並べられていた。
でも、もうその店はない―。

O脚だし、最近太り気味だし、細身のパンツはちょっとやめようかな?
なんて思うこともあるのだけれど、
細身のパンツというものは、私にとって絶対的に揺るがない憧れである。
ワードローブ基本アイテムのひとつでもある。

ずいぶんと大きくなって、
細身の派手なパンツ・下北マンボを思い出したときには、時既に遅し…。
思い出すたびに、検索。がっかり…。検索。がっかり…
なんていう時を幾年か過ごした。

ところが、今年の夏。
「流行りもの散歩」下北沢編があるという話をしている中で、
また私の中で「下北マンボ」熱が再燃!
諦め半分ならぬ、諦め9割で検索すると…!
吉祥寺に、かの下北マンボをENNYのために作っていたという、
セレクトショップを発見したのである!
検索結果を見て、左クリックがこんなにも汗ばんだのは久しぶりのことである。

体格がどうであれ、どうしても着たい服というものが時々ある。
無理をしてでもお金を出したい服、背伸びをしてでも着たい服、
そういうものがあってもいい。
そこに現れる自分の執念のようなものに、
いつしか懐かしさを覚える日が来るのならそれもエピソードになっていいと思う。

そんなわけで、
後日、そのお店を訪ねてわたしは熱望していた下北マンボをGETしたのであった。

 

当時のENNYラベルを残した、デッドストック品(実は「根掘り葉掘り 
松井アナウンサー編」で私が着ている紫のギンガムチェックがそれ。)と、
現在のお店のブランドで出している商品(「流行りもの散歩」の下北沢編で
街を歩いていた私が着ていたものがそれ)を1枚ずつ。

最近ではジーンズも数万円するものもある中、
セミオーダーでも数千円の下北マンボ。
これはちょっと嬉しい。
…と理由がつけて2本買った言い訳をしたい。
大人になったので、大人買いも許されたい…。

本当はもっと鮮やかな大柄が欲しかったのだけど、
それはまたいつか自ら布を持ち込んで作っていただこうと、
夢のかけらを残して吉祥寺を去った…。

今年は、男性には不人気だというが「レギンス」が大流行中である。
(レギンスとはスパッツとも呼ばれていたシロモノである。)
ぴったりしたパンツが人気なのであれば、
下北マンボは復活してもいいのではないだろうか?
無地が流行れば柄物が次に来る。
女性はかわいいプリント柄に目が無いのだから…。
しかも限定ものとなれば、みんな飛びつく時代でもある。
今こそ、今こそ!復活を願ってやまないブームである。

さて、下北沢という街は、戦後闇市から徐々に広がっていった街である。
おしゃれな青山・銀座などとは違う、エキゾチックでエキセントリックな街だ。
あの下北独特の雰囲気は一度歩けば、虜になる。

下北マンボが姿を消したように、新しい開発とともに、
駅前の商店街の姿が失われることが決まっているそうだ。
寂しいことではあるが、時代の波には逆らえないと商店街の人々は話していた。
それもまた、下北沢なのだ、と。

変化というのは、常に喜ぶ人と惜しむ人がいるものだ。
せめて消えてしまったとしても、記憶にだけは残っていて欲しい、と願う。
(これを読んで下北マンボについて何か思い出された方は、教えてくださいね。)

また次回です。
 
 
    
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