前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 


10月20日 お洒落に命を懸けた女の物語

お洒落に命を懸けた女の物語
ココ・アヴァン・シャネル   レビュー

お洒落に興味がある人なら、跳び付いて見たいと言うだろうし、
お洒落に興味がない人は、きっと勇気をもらうだろうと思う。

それから、
もし心のどこかで
「お洒落することは、バカらしいことだ」なんて感じている人がいたとしたら、
そんな人にこそ見て欲しい。
アナタの考えこそがバカらしいことであると気がつくに違いないから。

これは、お洒落することに命を懸けた女の物語だ



偉大なる冒険者 ココ・アヴァン・シャネル様

映画を拝見いたしました。
こんなにもパワフルな女性を見たことがありません。

それも、この映画はアナタの人生のほんのひと時に過ぎない。
それが最も驚くべき、そして恐るべきところです。
アナタは映画のラストシーンから、それからまた何十年も生き続け、
人々を常にあっと言わせるスタイルを確立し続けていったのですから。

自分を信じて、自分の心のままに進む。
これはどんなことでも勇気がいることです。

ことにお洒落というのは、ついつい人の意見を信じがちで、
本当に自分が良いと思うものが流行と違うと、弱気になります。
「流行こそが好み」、という人が多い中で
アナタはパイのような帽子を笑い飛ばし、
男が身につける黒をよそおい、
男物のシャツを羽織った。

漁師たちのボーダーカットソーを取り入れ、
お洒落というものの根本を変えてしまうことに成功した。

これは〜だから、と決め付けない
柔軟で冒険する心を持っているから出来るお洒落。
もともと上流階級のお嬢さんとして育っていたら、
アナタにはそんな考えは浮かばなかったでしょう。
枠の外から見た上流階級をうらやんで、その半面で嘲笑する中で
その視点は生まれたに違いありません。

そして合理的なものの捉え方で
働く女性たちの「きちんと着」を作り、
お洒落がただの造形美だったところに、着心地までプラスしてみせた。
これが後の私たちが生きる世の中にどれほど影響を与えているか、
私たちは本当に「肌で」感じているのです。

革新的なアナタが羨ましくもあり、
同時に少しそのパワーに畏れすら抱きます。

アナタの人間味を垣間見たのは、恋するアナタでした。
愛する男の前でのアナタは実に美しい。
ワガママで、甘えん坊で、怒りもあらわにし、そして輝いている。

驚いたのは、恋人と寄り添うアナタを見ているとき、
アナタばかりがきらめいていて
ファッションはほとんど印象に残らないことでした。

「お洒落は引き算だ」、という言葉をよく耳にします。
シンプルなお洒落こそが、一番自分を引き立たせることだということですが、
頭では分かっていても、ここぞと言う時にはやはり、
誰でもめかしこんでしまいがち。でも、アナタが選ぶスタイルは
服だけじゃなくてそれを着たアナタ、そこまでで、
初めて「ファッション」なんだということがわかりました。

その勇気、好奇心、粘り強さ、先見の才能…どれを取ってもアナタに憧れます。
アナタはこの先二度と現れることのない、ファッション界のあくなき冒険者でしょう。

最後に。
私はまだ黒を認めたくありません。
…というより、甘えたくないのです。

黒を着ているのがお洒落という観念にまだハマりたくないのです。
確かに黒は便利です。
そして私のことも良く見せてくれる気がします。

でも黒さえ着ていれば安心だ、という考えはまだ持ちたくない。
まだいろいろな色を着て、
お洒落を勉強せねばならないと思っているのです。
やっぱり黒なんだよね、
というまでにはまだ20年くらいあってもいい気がしています。

黒に頼り過ぎないで、いたいんです。
黒にもいろいろあります。

私を美しく見せる黒。
私を安っぽく見せる黒。

黒をうまくコントロール出来る様になるには
それなりの「人間の深み」が必要な気がするのです。

アナタが身にまとう黒が
威厳があって、上等なものに見える中に、どことなく悲しみもたたえているように。

大人のオンナの必須色、黒。
もう少し、頼らずやってみたいと思います。

いえ、
今しか着られない黒を楽しめたらいいなぁと思っています。

実は、シャネルのお店にきちんと入ったことがありません。
身分不相応な気がして、落ち着かないのです。

持っているシャネルといえば、アメ横で買ったチークだけ。

先日、シャネルの5番の香りが知りたくて、
映画を見た後、デパートの化粧品売り場に行きました。

あまりにセクシーな女性の香りだったので
逃げ帰ってきました。

ココ・シャネル様
もうあとちょっとしたら
私にも、カメリア模様やキルティングのハンドバッグ、
シャネルスーツが似合う日が来るのでしょうか?

そんな日が来るならば、私は楽しみでなりません。

(a-friends シネマ メルマガより転載)

 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー