前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > 映画コラムトップ > バックナンバー
 
 

Vol.35 (2009/03/17)  映画「ベンジャミン・バトンー数奇な人生―」

今回は、2009.1.9配信の● テレビ朝日のメールマガジン a-friends シネマ ●
「女子アナ☆試写室」に掲載したコラムです。


BS朝日「ニッポンのつくり方」最終回収録にて。


とってもきれいな花束を頂戴し、感激しました。

BS朝日『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』の放送が終了致しました旨、
ご報告が遅くなりすみません。
私自身も大変学ばせていただいた番組でした。
皆さん!どうもありがとうございました!

取り上げた映画は『ベンジャミン・バトン―数奇な人生―』。
アナウンサーズへの掲載が遅くなってしまいました、ごめんなさい(>。<);
『グレート・ギャツビー』のF・スコット・フィッツジェラルドが1920年代に書いた短編を基に、
『フォレスト・ガンプ/一期一会』のエリック・ロスが脚本化。
80歳で生まれ、そこから若返っていく主人公・ベンジャミンの誰とも異なる人生の旅路を描く、
一流が結集してこそ完成した感動作です。



『ベンジャミン・バトン―数奇な人生―』     萩野志保子

来た。
すごい映画が久しぶりに来た。
そんな興奮に打ち震える映画鑑賞でした。
試写であっても、
この日この時この映画を見たことが思い出に残るほどの、
紛れもなく、特別な映画鑑賞となりました。
『ベンジャミン・バトン―数奇な人生―』は、
「映画」の中の「映画」です。

映画館で見たい映画。
例えばアクション映画、例えばSF映画の一大スペクタクルを味わうために、
大きなスクリーンで大音量の方がいいから。
という意味合いではなく、
その映画を映画のまま味わうために、映画館で観たい、
と感じるこうした映画は、きっと久しぶりなのでは?
たかだかまだまだ若輩者の私なんぞより、
もっと古くから銀幕を知る人生の先輩方こそ、
そうした映画に飢えてはいませんでしたでしょうか?
その映画を観るために出かけるところから始まる、
上映時間を事前に確認してチケットを買うところから始まる、
その日一日を、その映画のために始め、
その映画の余韻でその日を終えるような、
その映画が自分の人生のひとつになるような。

そんな映画鑑賞ができる映画です。

80歳で生まれ、年をとるごとに若返っていく男=ベンジャミン・バトンの物語。
成長すればするほど、皺がへり、髪の毛が増え、
成長すればするほど、若く若くなっていく。
人々と同じ時の流れに生きながら、
逆の「成長」を強いられる特別な運命を背負ったベンジャミン。
彼の人生を通して、
逆方向の時の流れを生きることの残酷を、
わたしたちは目の当たりにします。
ベンジャミンが、
見た目は老人、心は子供の頃に出会った、少女のデイジー。
互いに思い合い、求め合い、愛し合いながらも、
逆向きの時の流れを生きなければならない二人。
人生のちょうど真ん中でやっと同世代になった二人は、
その喜びを分かち合い、あふれる愛情を強く確かめ合います。
でも、
二人は、同じ時を生きられない。
やがてデイジーが年をとり、ベンジャミンが子供に戻っていくことを知っている。

私は、
その運命の残酷に胸を引き裂かれながら、
とまらない嗚咽に翻弄されながら、
「今この一瞬を脳裏に焼き付けよう。」
自分自身も必死になっていました。
彼らにとって、一瞬一瞬がどれほど尊いものか。
人生への愛おしさに、涙があふれて止まらなくなるのです。

初めての外の世界も
友情も
初めての恋も
初めてのキスも
出会った時は自分より若者であった父が、
自分より先に死んでゆくことも。
全てを胸に刻んで、ベンジャミンは生きて、死んでゆく。

ベンジャミンを、老人から美しい青年まで演じたブラッド・ピット。
デイジーを、若く美しい娘から老いてゆくまで演じたケイト・ブランシェット。

今の私にとって彼らは、
ベンジャミンとデイジーでしかありません。

それほどに、映画の深淵に臨んだまま、戻ってくることができません。

こうして原稿を書きながら、
また涙が出てきてしまうのです。

大切な人たちとの大切な一瞬。
一瞬を同じ時間だけ積み重ねていけることの喜び。
それがどれだけの幸福であることか、
きっと誰もが、愛おしく、切実に、思い知ることができる映画です。


『ベンジャミン・バトン数奇な人生』
http://wwws.warnerbros.co.jp/benjaminbutton/
 ※2月7日(土)より 丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
  配給/ワーナー・ブラザース 2008/アメリカ

   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > 映画コラムトップ > バックナンバー