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身長
177cm
出身地
埼玉県さいたま市
出身校
県立浦和高校→
早稲田大学
入社年月日
1992年4月1日
星座
天秤座

2013/10/28    相次ぐ自然災害…、竜巻の被害現場から見えてきたこと 

今年は、台風や豪雨、そして竜巻と本当に自然災害が多い年となりました。
先日の台風26号では、伊豆大島で多くの人命が奪われるなど甚大な被害も出てしまいました。私自身も、次の台風27号が迫りくる中、報道ステーションの取材で伊豆大島に滞在しましたが、これまで見てきた災害の中でも際立って規模の大きい土砂崩れに、正直驚かされました。

今年の台風の多さの背景には、この夏の異常気象が関係しているとみられます。
振り返ってみると、そもそも、この夏は異常なまでの猛暑でした。
専門家は、温暖化が進むと、海水温が上昇し大気中の水蒸気量が増すため、台風が大型化すると分析しています。
そしてもう一つ、海水温の上昇により、竜巻も増加するとも指摘しているのです。
実際、今年は竜巻の発生もきわめて多い年となりました。
調べてみますと、住宅が半壊するなどの大きな被害を伴う竜巻の発生件数は、今年は現時点で例年の倍以上と突出しているのです。

私は9月に、埼玉県越谷市、熊谷市、栃木県矢板市と、3つの竜巻被害の現場を取材しました。
そして、各地の被害現場を取材する中で、それぞれの現場の風景が、田畑などが広がる平坦な場所に住宅が隣接していて、どこも非常に似ていることに気づきました。


越谷竜巻現場

なぜこうした同じような平らな場所で竜巻が相次いで発生するのか、その答えを見つけるべく、先日、報道ステーションの特集の取材で、東京工芸大学の田村教授の協力のもと、実験を通してそのメカニズムを探りました。

実験では、竜巻シミュレーターを用いて、水蒸気をファンで吸い上げ竜巻を再現し、地表面が平らな場合と住宅地を見立てた障害物を並べた場合とで、竜巻の形状にどのような変化が現れるのか、検証しました。


竜巻シミュレーター

実験では、平らな場所の上では竜巻はしっかりとその形状を維持し、中央に芯のようなものも見えましたが、それが住宅街の模型の上に差し掛かると、芯が見えなくなり渦が乱れることがわかりました。
さらに、住宅街の模型を通り越して平らな場所の上を通ると、今度は再び、芯が現れしっかりとした竜巻の形状が再現されたのです。

竜巻の発生は、巨大な積乱雲が上空に発生することなど気象面での条件が大前提ですが、実験からは、地表面の形状も竜巻の発生や形状に大きく影響していることが裏付けられたのです。

実際、越谷市では竜巻は田畑などの平らな所で勢力を増し、住宅街を直撃してやや勢力を弱めるものの、次の田畑で再び勢力を強めるということを繰り返し、約19キロにわたって被害を及ぼしたとみられるのです。

また、去年、大きな被害を出した茨城県つくば市の現場でも、最大の被害を出した北条地区の目の前は、やはり広大な田畑でした。
ここでも、竜巻は田畑を通っているときに勢力を強め、住宅街を直撃したとみられるのです。


つくば竜巻現場

実は、日本は世界的に見ても竜巻が多い国で、特に関東地方の単位面積当たりの竜巻の発生件数は、竜巻大国アメリカの竜巻街道と呼ばれる大平原と比較しても、1万平方キロメートルあたり1.9個(米国)対1.3個(日本)とあまり変わらないのです。

さらに、調べてみますと、実は、つくば市や熊谷市、さらに宮崎県の高鍋町では、それぞれ過去にも比較的近い場所で複数回竜巻が発生していたのです。

では、こうした竜巻の被害にどう備えればよいのでしょうか?
竜巻の発生を事前に予測するのは非常に難しく、気象庁が5年前から導入している竜巻注意情報もその適中率はわずか5%ほどです。

こうした中で非常に参考になるのが実験を指揮した田村教授のお話でした。教授によれば、竜巻が発生する前には、必ず黒い雲が上空に現れ、さらに雷が鳴るそうです。
もし、事前にそうした兆候を目にしたら、雨戸やシャッターを閉めるのが効果的だそうです。
竜巻の被害では、窓などから侵入した突風が屋根を吹き飛ばすというケースが多いそうで、それを雨戸やシャッターで未然に防げば被害は大分軽減できるということなのです。

確かに、越谷の現場では、たまたま留守にしていて雨戸を閉めていたお宅ではほとんど被害がありませんでした。また、熊谷の竜巻は真夜中の発生だったので多くの家では雨戸を閉めていて、竜巻の強さの割には被害が少なかったのではないか、と田村教授は見ています。

実験で明らかになったような、竜巻が発生しやすい農地などの平らな所と住宅地が隣接している場所は、日本中どこにでもあります。
温暖化が進むことが予想される今後、これまで以上に、竜巻を身近な災害としてとらえ、その地域の地形と歴史からも対策を考える必要もあるのではないかと、今回の取材を通して感じました。

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