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ここだけ!ことばメモ
  reported by 萩野志保子

『ちい散歩』で出会った、にほんごのいいおはなし、
ぜひ寄り道していってくださいね^w^/


それは去年のことになりますが、
08,11,11放送の『ちい散歩』のナレーション収録のことでございました。
その日のお散歩は、葛飾区柴又の隣町、京成高砂。
ちいさんが訪れた「日本刀鍛錬道場」にて、とっても興味深いおはなしが。

チントントン ッカッカ
チントントン ッカッカ

なんとも小気味よい音が響きます。
3名の鍛冶職人達が、熱した鋼を、見事な呼吸で打ち合っているのです。
動作、音、すべてに無駄がなく、軽やかです。

『ちい散歩』のナレーションは、
映像を見ながら、テレビを見ていらっしゃる皆さんと同じように、
映像を止めずまさにライブのように録音していくというスタイルで行わせていただいています。
私自身も、テレビの前の皆さんと同じタイミングで、
初めて目にしたり耳にしたりした出来事に、その印象で声を発しています。

ですから、
鍛錬された末に醸し出される美しい呼吸、
熟練の鍛冶を目の当たりにし、
まさに見惚れ、聴き惚れてしまいながらのナレーションとなりました。

地井さんがお話をうかがったのは、刀鍛冶の吉原善一さん(41歳)。
お父上が次期の人間国宝とされる、職人の中の職人、
まさにプロフェッショナルの鍛冶職人でいらっしゃいます。



刀鍛冶:吉原さん親子 左が義一さん、
右にいらっしゃるのがお父様の義人さんです。

チントントン ッカッカ

の「ッカッカ」にあたる槌の動きは、鋼自体を打つものではありません。
お餅つきで言えば、木槌側ではなく、餅を動かすために手を入れる側のような感じ。
もちろん餅ではないので仕事の意味は違いますが、
鋼自身ではなく、台を「ッカッカ」と叩くのです。

そこを地井さんが訊ねました。
あれは、(鋼が)もういいころだよ、というのを打つ側に教えているものなのかと。

そうです。
それが、「相槌(あいづち)」なんです。

と吉原さん。

私たちが何気なく使う「あいづちを打つ」という言葉は、ここから来ていたのですね!

「槌」という漢字を使いますから、
打つ「槌」が語源になっていることは容易に想像できますが、
だとしても、
単にそれだけではなく、
本来の「相槌」自体が、これだけ洗練された、意味のある動きや仕事をするものだということに感慨を覚えました。
だって、
ただ「うんうん」と頷くだけでは、本来の「相槌」の仕事にはなっていないということですものね。

相手を感じて、状況を見極めて、という心配りがあっての「相槌」なのだなあ。

惰性の頷きでは、会話のリズムを生むどころか、話の腰を折ることになる。
妙に納得した、ことばの語源でありました。



約20年前の義人さんと義一さん。
親子での、まさに真の「相槌」です。
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