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宵のうち…は何時頃のこと?情趣ある言葉が消えてゆく?- |
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3月29日に気象庁は天気予報などに用いる気象用語から
「宵のうち」を今後使用しないと発表しました。
「時間帯を表す用語は誤解無く伝わることが重要」だと理由を説明しています。
そもそも「宵のうち」とは何時頃をさすのでしょうか。
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宵のうちって?
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田原 |
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坪井君、萩野君、宵のうちって何時頃のことだと思う?
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萩野 |
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えーと、いまの季節だと、夜6時以降7時半くらいですかね。
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田原 |
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へえー、ずいぶん細かいね。
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萩野 |
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宵の「うち」ですからね。
時間の幅よりもタイミングを表現しているのかなと。
暗くなり始めの時間。日没後の短い間、という感じです。
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坪井 |
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日が暮れる頃の5時か6時からの2時間くらいかな。
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田原 |
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もしかして生活時間によって認識が違うかもしれないな、って思うんだけど。
深夜まで活動している都市型の生活をしている人は8時から10時くらいで、
そうでない人だと6時から8時とか、
生活時間によって「宵」の捉え方が違うんじゃないかなあ。
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三人 |
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確かに人によって「宵のうち」の捉え方が違いますねえ。
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辞書には「宵のうち」は次のように出ています。
明鏡国語辞典、日本語新辞典 |
「宵」…日が暮れてまだ間もない頃。
夜がまだそれほど更けていない頃。 |
広辞苑、大辞林 |
「宵の口」…日が暮れて、間もないとき。宵のうち。 |
これらの辞書には「宵の口」はあっても「宵のうち」を見出しに立てているものはありませんでした。
それでは、気象庁では「宵のうち」を何時頃と考えているのでしょうか。
アナウンス部が誇る気象予報士 市川アナに解説してもらいましょう。
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気象予報士 市川アナ
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市川 |
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気象庁では「宵のうち」が表す時間は、この様に18時〜21時と定めています。
しかし「宵のうち」と表現すると、皆さんが捉えている時間にバラツキがあり、
いまひとつ時間がピンとこない、というのが現状です。
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三人 |
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じゃあ今後「宵のうち」の代わりにどういう言葉を使うの?
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市川 |
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「宵のうち」は今後「夜のはじめ頃」に言い換えられます。
<気象庁ではこのように表現しています>
(時刻) |
(用語) |
(今後使用される用語) |
00時〜03時 |
「午前3時頃まで」 → |
「未明」 |
03時〜06時 |
「明け方」 |
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06時〜09時 |
「朝のうち」 → |
「朝」 |
09時〜12時 |
「昼前」 |
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12時〜15時 |
「昼過ぎ」 |
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18時〜21時 |
「宵のうち」 → |
「夜のはじめ頃」 |
21時〜24時 |
「夜遅く」 |
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*詳しくは気象庁のHPをご覧ください。
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へー、そうなのか
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萩野 |
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そうかあ。「宵のうち」は夜6時から9時までとしていたんですね。
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坪井 |
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確かに具体的に時間を決めておかないと、
日没が規準だと、季節によって変わってしまいますね。
冬は5時頃からだし、夏は7時頃でもまだ明るいし。
2〜3時間の差が出ますよね。
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田原 |
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でも、普段「宵」という情趣のある言葉をあまり使わないから、
せめて気象用語では使って欲しいな。
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市川 |
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そうですね。確かに美しい言葉ですよね。
でもやはり、テレビを見ている人、全員が分かる表現をすることが大切だと思うので、
仕方がない流れなのかなぁとも感じます。
例えば雨が降り出す予報なら、
正確な時間が知りたいと思う人が多いと思うので、
私が天気予報をお伝えする時も、なるべく「夕方6時頃から」とか「あと何時間後には」とか、
分かりやすく時間で伝えるようにしています。
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田原 |
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そういう背景があって「宵のうち」が消えてしまうのだね。
天気予報は、防災情報という重要な要素もあるから、
より具体的な時間が求められるのは当然ともいえるね。
でもなんだかちょっと味気ない気がするな。
消えてしまうのは残念だね。
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ニュースの現場でも…
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さて、他に時間に関する言葉で、放送でよく使われるものを探してみました。
坪井 |
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「夜半」や「未明」という表現。これはニュースでよく耳にしますね。
「夜半(やはん)」
・・・ |
0時をはさむ前後それぞれ30分くらいをさす。(気象庁)
(日常的に使われることが少なくなっている用語なので
用いない、とも説明しています) |
「未明(みめい)」・・・ |
夜半を過ぎてまだ明るくならない頃。(大辞林)
夜がまだすっかり明けきらない頃。(広辞苑)
午前0時から3時頃まで(気象庁) |
なんですが、
最近だと、火事が相次いだときに「未明」という表現が何度も出てきて、
報道スタッフの間で「未明って何時くらいを指すんだっけ?」と疑問が出たりして。
ところが、正確に答えられる人がいなくて…。
正確さを求められるニュースの現場でさえ、
ちょっとした議論になったことがありましたよ。
ただ「未明」としておくと時間の幅ができるので、
発生時刻に関して詳細が分からない時には使いやすい言葉ではあるんですけどね…
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宵って素敵な言葉
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萩野 |
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そもそも、季節で変動する、意味に幅のある単語ですものね。
それにしても「宵」って素敵な日本語だから、
今回のことを機に廃れていくなんてことにはならないで欲しいなあ。
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情緒豊かな言葉を大切に
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田原 |
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うん。今回の改正に対しては、多くの人から「宵のうち」がなくなるのは反対だという意見が寄せられたようだよ。
「宵のうち」などの情趣ある言葉が気象用語から消えてしまうのは残念だけど、
より正確な気象予報には、情趣よりも具体的な時間表現が求められるのは仕方ないのかも知れないね。
でもその一方で、
日本語らしい情緒豊かな言葉は、科学や文明の進歩と共存してこそ、
後世に日本文化や豊かな表現を伝えてゆくことが出来ると思うんだ。
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三人 |
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そうですね!
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坪井 |
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古きよき言葉を守ろう!という気持ちを持ち続けたいですね。
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古きよき言葉を守ろう |
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