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- 最近「とか」とか乱用気味!?-
  Reported by 萩野志保子
 
今回は、「〜とか」について考えてみます。

@「遠距離の彼とコミュニケーション取れてるの?」
  「うーん、メールとかかな。」

A「冬とか寒いじゃない?だから遠出しないんだ。」

最近多用される、こういった表現。
この「とか」の使われ方って、本来の用法と照らし合わせるとどうなんでしょうね?
そこで、まず「とか」を辞書で引いてみました。

  【とか】
  並列助詞
  体言またはそれに準ずる語、および活用語の終止形に接続する。
  事物や動作・状態などを例示的に並べ上げるの用いる。

  1 一般には、「…とか…とか」というように、列挙するものの末尾の事項にまで「とか」をつける。
  ★毎日、掃除とか洗濯とか食事の支度とかに追われ、ゆっくり本を読む暇もない

  2 時には、「…とか…とか…」というように、末尾の事項に「とか」をつけないこともある。
  ★わざわざおいでいただかなくても、電話を下さるとか手紙でお知らせくださることで結構です。

  【とか】
  連語
  [格助詞「と」に副助詞「か」の付いたもの]
  不確かな想像や伝聞などを表す場合に用いられる。
  ★あの人の祖父は今も達者で、九十いくつとかだそうです。
  ★山本さんは具合が悪く、寝たっきりだとか聞いている
  ★山田とかいう人


ふむふむ。とすると、冒頭の@の例文
@「遠距離の彼とコミュニケーション取れてるの?」
  「うーん、メールとかかな。」
は、
「うーん、メールとか(電話とか)(で連絡取れてる)かな。」
ということですから、
辞書の
  【とか】並列助詞
  2 時には、「…とか…とか…」というように、末尾の事項に「とか」をつけないこともある。

の意味を持ちながら、
二つめの事項(電話など)さえ省略して、更に動詞も省いてしまった、
略語の態ということになりますね。
 
では、Aの例文の「とか」は?
A「冬とか寒いじゃない?だから遠出しないんだ。」

この使い方はなんぞや!とお叱りを受ける代表的な使われ方。
我々アナウンサーも職業として気をつけていますが、
これだけ多用されるからには何か背景や意味があるだろう、と考えてみました。
そこでふと思い当たったのが日本語と、英語・ラテン語の特性の違いです。
Aの人が話したいのは、
今年の冬だとか、あの冬だとか、全く限定のない毎年巡り巡ってくるいわゆる冬のことですよね。
いわゆる冬、概念としては、言ってみれば”a winter ”。
でも、日本語には英語のようにthe(定冠詞)とa(不定冠詞)がありません。
単数形と複数形もない。
以前なら、等をつけることで複数を表し「いわゆる」を表現したけれど、
今の普段の会話に「〜など」は堅い。

冬を「一般的な冬」と表現するのに「いわゆる冬」というのも堅い。
そこで、
「今年コートとか買った?」と、
「とか」が出てきたのではないでしょうか。
この文ですと、いわゆるコート、上着、ジャケットのようなものを買った?ということになりますが、
英語の定冠詞で表現するような事情の時だとどうでしょう。
例えば、相手が☆☆店のコートを買いたいことを事前に話していてお互い認識しているときは、
「ちょっとまりちゃん、(あの)コート買った!?」

となる。こういうとき「とか」は自ずと使わないですよね。

とすると、最近よく使われる「とか」は、
不定冠詞の一般的概念を強調したい(広い意味にぼかしたい)けれど、
日本語の特性上それにぴったりくる用法が無いがために、
求められて流行り出した使われ方なのかもしれません。
ずばり「その物」ではなく「いわゆる〜的なもの」(不定冠詞的用法?)。
 
読んでくださって思うところあれば、読者の皆様ぜひ色々教えてくださいっ!
田原所長・坪井研究員始め、アナウンス部員達ともっともっと考えてまいります。
2007年も、よろしくお願いいたします^w^
日本語研究室 田原所長と、ニューススタジオにて
(土曜日深夜ANNニュース&スポーツ)。
ニュース原稿の文章も、本番前の限られた時間で
あーだこーだ相談し合っているんですよ。
日本語独自の特性があるからこそ、
難しくて奥が深いですね。
「普段から考えなくちゃ」と自戒の念を込めて。
2007年も、
坪井さんのウィットに富んだ「流行り言葉へのツッコミ」、
お楽しみに!
    
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