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- 「なので」の正しい使い方- | ||||||||||||||||||||
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最近視聴者の方からアナウンサーの言葉遣いについてのご意見が多く寄せられています。その中に、気になるご指摘があるので取り上げました。 それは、「〜なので」のという言葉の使い方です。本来は文の途中で理由などを説明するときに使います。しかし、その「なので」を文の途中ではなく、文頭に使用するケースが非常に多く見受けられ、アナウンサーの言葉遣いとしては、とても違和感があります。 視聴者の方も同様に感じているようです。ご意見を沢山いただきました。 例) 「こんどみんなで食事に行くけど、一緒にどう?」 「そうですねえ。私最近とても忙しいんです。なので、ちょっと予定が立てにくいんです」 本来「なので」は断定の助動詞「だ」の連体形「な」+理由や原因を表す接続助詞「ので」 によって構成されるため、他の言葉と結びつく言葉なのです。独立した接続詞でありません。ですから、文頭に「なので」を用いて文章を始めるのは、文法的に間違いです。 しかし、文章を二つに分けなければ、次のように正しく使うことが出来ます。 「そうですねえ。私最近とても忙しいので、ちょっと予定がたてにくいんです」 実際に後輩のアナウンサーは例文についてどう感じるか、報ステ三人娘に聞いてみました。結果はこうなりました。 |
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さすが!三人ともに、「間違い」だということはわかっていますね。 間違いの理由は? |
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言い直すとしたら、どのように直しますか? |
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他の接続語を使って二つの文章にするとしたら、何を使いますか?印象は変わりますか? |
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もう一人、石井アナです。 |
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石井さんも、「なので」使い方については完璧な答えです。 しかし、言い換えるとしたら、どのような言葉を使うかは、四人ともまちまちですね。 話し言葉で例文を二つに分けようとする場合に使用できる、理由を説明するための接続語は次のようなものがあります。 したがって ですから(だからの丁寧形) ですので(なのでの丁寧形) だから ではなぜ、これらではなく「なので」を使うのでしょうか? 実際に使って比較してみましょう。 「そうですねえ。私最近とても忙しいんです。したがって、ちょっと予定が立てにくいんです」・・・・因果関係ははっきり分かりますが、かなり堅苦しい説明口調に聞こえます。 「そうですねえ。私最近とても忙しいんです。ですから、ちょっと予定が立てにくいんです」・・・・丁寧な言い方で違和感はありませんが、忙しいから と理由がはっきりします。 「そうですねえ。私最近とても忙しいんです。ですので、ちょっと予定が立てにくいんです」・・・・丁寧な言い方で違和感はありません。 「そうですねえ。私最近とても忙しいんです。だから、ちょっと予定が立てにくいんです」 ・・・・そうですねえ の丁寧さと、だから の対等関係がアンバランスです。 「だから」は対等関係か目下の人に対して使われることが多い言葉です。 「だから言っただろう」「だからお前はだめなんだ」など、子供の頃に叱られた記憶はありませんか?または友達同士の会話で「だからなのか」と納得したり、「だから違うってば」と誤解を指摘したりしますね。友達には「だからあ・・・」とは言っても、目上の人には言わないですよね。「部長、だからそうじゃなくって・・・」などは、失礼な言い方です。「だから」は対等関係か目下の人に対して使う言葉です。目上の人につかうのは避けましょう。 ところで、これまでとは違う言葉の使い方が広まるには、それなりの理由があると考えられます。時代による生活習慣の変化や、生活様式の多様化、家族構成の変化、他人や社会との関わり方によっても、言葉の使い方は、日常生活の中から大きく変化してきます。 専門家は次のように分析しています。 |
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まず、「ので」と「から」の違いについて考えてみよう。 むかし「ベンチがアホやから、野球ができない」と言って、ある選手がチームの首脳陣と激しく対立し、退団したことがあったね。この内容が首脳陣の怒りを買ったのは言うまでも無いが、実は「アホやから」の「から」に、さらに怒りを増幅させる原因があったといえるんだ。 つまり「から」は「ので」に比べ、原因を特定し突き詰める意味合いがあるんだよ。ベンチの采配責任を明確にして、それが適切ではなかったのではないか、と突め寄ったことになるんだね。そこまで言われると、さすがに首脳陣との間に出来た溝は埋まらなくなってしまうね。 さて、一方の「ので」はそこまで強く何が原因だ、と特定する意味合いはないんだ。 別の例で考えてみよう。水洗トイレにこんな張り紙があるのを見かけるね 例 詰まりの原因になりますので、備え付けの紙以外は流さないでください 詰まりの原因になりますから、備え付けの紙以外は流さないでください この張り紙には、たいてい「ので」が使われています。 「ので」は、結果が起こる原因としての因果関係を表しますが、「から」は詰まりの原因になるのは、備え付け以外の紙を流すことだ、あなたのその行為が原因なのです、とかなり限定的なきつい意味になります。 「から」は原因をはっきり突き詰める、限定的な意味がある。一方「ので」はその点もっと原因の輪郭がぼんやりしてるね。つまり、「から」よりも曖昧にしてやわらかく表現しているともいえるんだ。「から」を使うと、きつく聞こえるから、「ので」でやわらかく表現しようとしているのではないかな。その点では、これも最近多く見られる曖昧表現のひとつだね。 |
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ところで、「なので」の「な」は断定の助動詞の連体格だから、〜の様子だという意味になり、断定の度合いが弱くなる。 例)花がきれいだ。(断定)きれいな花。(花の様子を説明) で考えると分かりやすいね。 「ので」は因果関係の言い方が弱いから、その前にある言葉も強い断定を意味する「だ」ではなく、連体形で意味が弱くなった「な」が来ている。 な+ので(断定と因果関係の意味合いが比較的弱い) だ+から(断定と因果関係の意味合いが強い) というように同程度の意味合いの強さによって言葉が結合しているんだ。 この辺は言葉はうまくできているね。 また、「なので」の「な」には敬語などの待遇表現が含まれていない。 文頭に持ってくると、「だから」に近い、強い印象が生まれるのではないかな。 「だから」に対して「なので」はやわらかいから、途中につかうのはいいけど、文頭に持ってくると断定の印象が強くなるため、丁寧な形になった「ですから」を使う方が違和感が無いね。 次に、人との距離感について。 文中に「ので」を使うと、きちんと因果関係などを筋道を立てて、一つの文章として説明しなくてはならない。しかし、きちんと説明したりすると、文章が長くかしこまった感じになるのだけど、そういう話し方に慣れていない若い人が多いのではないかな。 言葉遣いや敬語などは、さまざまな人間関係の中で培われていくもの。 しかし若い人の中には、人間関係や社会環境に合わせた使い分けをするための言葉のバリエーションを十分に持ち合わせている人が少ないと思う。 また言葉遣いを学ぶ人間関係が希薄なため、きめ細やかな表現や言葉遣いを身につける機会が少ないのかもしれないね。 距離を置くのは失礼? その一方で、敬語を使うと相手と距離を置くことになるから、よそよそしくなる。その方が失礼に当たるのではないかと考える若い人も増えているね。 だから、待遇表現が含まれていない「なので」を頻繁に使う傾向が生まれてくるのではないかと考えられるんだよ。 |
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