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- 言葉の雑学その2 〜土地カンで捜査のプロがカンカン!?〜-
  Reported by 田原浩史



事件取材をしていると、捜査当局の専門用語に触れる機会があります。
皆さんも刑事ドラマなどでご存知の言葉も多いと思います。
しかし、その中には、いつのまにか本来の意味とは違った使われ方をしていたり、元来のものとは違った漢字が使われていることがあるのです。
先日取材現場で、元警視庁捜査一課長 田宮栄一さんと「土地カン」について、こんな話をしました。

元警視庁捜査一課長の田宮さん

マスコミの責任ですよ!

ここで皆さんに問題です。「土地カン」のカンはどういう字を書くでしょう?
「土地カン」とはその場所や周辺の地理がよく分かっているという意味で使われます。
例えば、「容疑者は土地カンのある人物であると考えられる」などです。

答え) テレビ朝日では「土地勘」と表記する決まりになっています。
しかし、本来は「土地鑑」であると田宮さんはいいます。新聞やテレビがいつの間にか誤った字を使っているうちに定着してしまったようですが、正しくは「土地鑑」です!と力説していました。また、誤字を広めたのはマスコミの責任ですよ!とお叱りを受けました。

力説する田宮氏

田宮さんは意味の違いを次のように話しています。
鑑識捜査の「鑑」を使った「土地」だと、その土地をよく知っていいて、周辺の地理に詳しいという意味になる。
一方、あてずっぽうの「勘」を使った「土地勘」だと、そこに行けばなんとなく、大体分かるという意味合いになり、大変な違いです。

辞書で調べてみると・・・

そこで、文字の意味を辞書で調べてみました。「漢和大辞典」の説明の一部を掲載します。
・・・前例をみてよしあしを考える。また、よく見て品定めをする。検討する。
・・・心の底で直感的にぴんとくる心の働き。第六感。
「広辞苑」には「土地鑑・土地勘」と両方出ています。「その土地の地形、地理などについての知識」という意味です。

さらに『日本語「日めくり」一日一語』(読売新聞校閲部 中公新書クラレ)には次のような説明がありました。
1948年刊の『最新警察辞典』(立花書房)には「土地鑑」の表記で、「犯人が犯行現場に地理的に通暁しているかいなかをいう」(つうぎょう・・・あることに非常に詳しい知識をもっていること『日本語新辞典』)とでています。56年刊の『警察隠語類集』(警視庁刑事部編)も同様で、刑事係警察官が主として用いる用語とする。 (下線部は田原がつけました)

日頃使われている言葉の中には、誤用が定着して一般的に使われるようになったものが
いくつもあります。
言葉は時代によって変化しています。
私達アナウンサーは、このような背景を知った上で、正しくそれらの言葉を使わなくてはなりません。日々是勉強ですね。
    
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