2025/08/04 次世代型地熱発電に高まる期待!
AIは非常に便利です。私も海外記事の翻訳などでよく利用しています。もはや私たちの生活に欠かせない存在となっていますね。
一方で、AIは多くの電力を消費します。今後、AIやデータセンター、電気自動車などの普及に伴い、電力の需要はますます増加すると見込まれています。この増大する電力需要を、今後どのように賄っていくのかは、重要な課題です。
私はこれまで、日本や世界で、さまざまな新しいエネルギー源について取材してきました。その中でも、特に日本にとって大きな可能性を秘めていると感じているエネルギーの一つが「地熱」です。
地熱発電の開発現場にて
ドイツの地熱発電所にて
日本は世界有数の火山大国です。4つのプレートがひしめく日本列島の地下には、大量のマグマが存在しています。災害大国という側面を持つ一方で、見方を変えれば、地下には膨大なエネルギーが眠っている「潜在的なエネルギー大国」とも言えるのです。
日本の地熱資源量は世界第3位。1位はアメリカ、2位はインドネシアです。しかし、実際にその資源をどこまで活用できているのでしょうか。地熱発電の導入容量で比較すると、1位はアメリカ、2位はインドネシアと変わりませんが、日本は第10位と大きく後れを取っています。
そして、日本の電源構成に占める地熱発電の割合は、わずか0.3%にとどまっています。なぜ、日本では地熱発電の開発が進まないのでしょうか。
温泉資源との共存や、国立公園などによる規制もありますが、最大の要因は、「地熱開発のリスクの高さ」です。
現在の地熱発電の開発手法では、地下1,000~3,000メートルに存在する地熱貯留層と呼ばれる熱水や蒸気の溜まり場を掘り当て、生産井で汲み上げ、地上で蒸気と熱水を分離して、その蒸気でタービンを回し発電します。熱水の多くは還元井を通じて再び地下に戻されます。
地熱貯留層のイメージ
地熱発電の大まかな仕組み
日本の地熱貯留層は、複雑かつ細長い形状のものが多く、地下深くにあるこの地熱貯留層を正確に掘り当てるのは難しいといいます。成功率は約30%、1本の井戸を掘るのに数億円もの費用がかかるそうです。このリスクが民間企業にとっては大きな障壁となり、新規参入をためらう要因になっています。
しかし今、世界ではこのようなリスクを大幅に軽減できる「次世代型地熱発電」の開発が進み、実用化が近づいています。
その一つが、クローズドループ方式と呼ばれるものです。
その概念を簡単にご説明すると、地上から2本の井戸を掘り、それらの先端を地下深部で接続します。地下に一定の熱源さえあれば、片方の井戸から注入した水が熱源によって温められ、熱水となってもう一方から出てくるという仕組みです。この方式であれば、地下深くの地熱貯留層を掘り当てる必要がありません。
クローズドループ方式のイメージ図(Eavor社より提供)
カナダの新興企業エバー(Eavor)社は、クローズドループ方式による次世代型地熱発電の開発を進めています。ドイツ南部・ミュンヘン近郊では、日本の中部電力も参画するプロジェクトで、今年中の運転開始を予定しています。
ドイツで開発中のクローズドループ方式地熱発電所(Eavor社より提供)
クローズドループ方式に関する調査によれば、日本のような火山国では、地下深部に十分な熱源が存在するため、理論上は、日本のほぼ全土で発電が可能だとされています。つまり、これまで山奥でしか開発できなかった地熱発電が、より都市に近い場所でも利用できるようになる可能性があるのです。
世界では米国や欧州などで、クローズドループ方式以外にも、EGS(強化地熱)方式など、さまざまな次世代型地熱発電の開発が、実用化を目指して進められています。アメリカ・トランプ政権においても、地熱発電への税制優遇は維持されました。地熱発電は、化石燃料開発で培われた掘削技術を応用しやすく、設備利用率が75%以上と高いため、ベースロード電源としても高く評価されています。
開発にかかるコストをどれだけ下げられるかなど課題もありますが、AIなどによる電力需要の高まりが予想される中、次世代型地熱発電が電力を安定的に供給する重要な存在になることが期待されます。これからも取材を続けます。

