ことばのアレコレ

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  • AYAKA OGAWA

2018/3/093.11と『広辞苑』

小川彩佳です。

この冬、10年ぶりに岩波書店の『広辞苑』が改訂されました。
テレビでも新聞でもさまざまに報道があったので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

この新版、第7版には、新たな言葉がおよそ1万項目も、追加されています。
「がっつり」「ちゃらい」など若者が中心となって使っていた言葉がついに広辞苑入りしたり、「ブラック企業」「モラルハラスメント」といった、社会問題化した言葉が加わったりと、注目点は沢山。
もともとあった言葉でも、説明文が変わったものもあります。
例えば、「フェミニスト」。
第7版では、

フェミニスト【feminist】①女性解放論者。女権拡張論者。②女に甘い男。

こんな風に記載されていたのが、第7版では…

フェミニスト【feminist】①女性解放論者。女権拡張論者。②女に甘い男。女性尊重を説く男性。坂口安吾、市井閑談「このおやぢの美点は世に稀な―であることである。先天的に女をいたはる精神をもち」

第6版の表現は保ちつつ、赤字部分が加わったんです。
女性尊重を説く男性…。いいですねぇ。「#Me Too」の時代を映すかのような改訂です。
引用も新たに加わっています。こんな男性が増えたらいいなぁなんていうメッセージが聞こえてくるかのようですよね。

こうして、時代と共に変わり、生まれる言葉をみていると、「言葉は生きている」んだと感じさせられます。大切に守りつつも、豊かに自由に、育てたくもなります。

そんな今回の『広辞苑』の改訂で、最も特徴的といえるのは、東日本大震災に関連する言葉が多く、収録されたこと。
特に専門的な知識を要する原発に関する言葉を加えるため、今回1955年の初刊行以来初めて、「原発担当」の編集者を置き、項目追加の作業を行ったそうです。

例えば、こんな言葉。

はい-ろ【廃炉】高炉や原子炉の運転を停止し装置を撤去すること。また、その炉。

はま-どおり【浜通り】福島県東部の海岸地方の称。内陸地方の中通りに対していう。

あんぜん-しんわ【安全神話】安全に関する神話。根拠もなく絶対に安全だと信じられていること、「原発の―が崩れる」

これまでこうした言葉が『広辞苑』に収録されていなかったということからも、東日本大震災、そして原発事故が、いかに「未曾有」の出来事だったかを、改めて思い知らされます。

追加された新語は、「日本語として定着した語、または定着すると考えられる」言葉だそうです。

間もなく3月11日。東日本大震災から、7年。
「定着した言葉」を通して、記憶と、言葉の纏う空気、あの日心に強く受けた感覚も、改めて心に刻みこみたいです。

担当アナウンサー

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