ことばのアレコレ

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  • AYAKA OGAWA

2017/11/09トランプ大統領は、「破天荒」?

アメリカのトランプ大統領の初来日。
松山英樹さんを交えての総理とのゴルフに始まり、
天皇皇后両陛下とのご会見、
北朝鮮による拉致被害者の方・家族会の方々との面会などもありましたね。
連日、メディアは熱視線を送っていました。

そんなトランプ大統領を表現する言葉としてよく使われる、「破天荒」という言葉、ありますよね。
ワイルドで型破り、「はちゃめちゃ」、というような意味合いで、トランプ大統領にぴったり…と思いきや。
実はこの「破天荒」。
本来、そうした「豪快で大胆な様子」という意味ではないということ、皆さんご存知でしたか?

正しくは、「誰もしなかったことをすること」「前代未聞」「未曾有」(『広辞苑』第6版より)という意味なのです。
文化庁が平成20年度に行った「国語に関する世論調査」でも、64.2%が「豪快で大胆な様子」と答え、「誰も成し遂げなかったことをすること」と答えた人は16.9%にとどまったという、この「破天荒」という言葉。
漢字のイメージから、荒くれ者!という、どちらかというとネガティブな雰囲気漂いますが、実はとってもポジティブなほめ言葉、なんですね。

「破天荒」は、「北夢瑣言(ほくむさげん/ほくぼうさげん)」という故事からきているのだそうです。
『成語林』にはこのように記されています。
唐代後期は、貴族の官僚よりも科挙(官吏登用試験)を及第した官僚のほうが優位に立った。
荊州(けいしゅう=湖南・湖北などの一帯)は科挙の受験生が参集する。
毎年、郷試(地方試験)に合格した挙人(科挙受験の有資格者)は、「解(=学に通達した者)と呼ばれ、これを中央に推挙して科挙を受けさせることを「解送」と称したが、荊州からの解送者はいつも中央で落第した。そこで世間では荊州を「天荒(= 未開の地)」と呼んだ。ところが劉蛻(りゅうぜい)という挙人が初めて科挙の進士科に及第したので、人々が驚いて「破天荒」と言った。(『成語林』旺文社より抜粋)

時は、唐の時代の中国。
官僚になるための試験の合格者がなかなか出なかった荊州という地域があり、
そこは天荒(=未開の地、人材のいない土地)と呼ばれていました。
その「天荒」からついに合格者が出たことから、「天荒を破った!」となり、
「破天荒」という言葉が生まれたんですね。

でもそう考えると、政治経験のないビジネスマンからアメリカ大統領に就任するという、「前代未聞」「前人未到」を成し遂げたトランプ大統領にならやっぱり、ぴったりの言葉ともいえますね。

そのトランプ氏が大統領に選ばれて1年が経ちます。
「破天荒」な大統領の下のアメリカ。
これからどうなっていくのでしょうか…?

担当アナウンサー

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