現場こぼれ話

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  • SHUMPEI TERAKAWA

2020/01/16大切にしたいもうひとつの思い

「オーーーーー!バモ、ニッポーン!
         ニーーッポン!ニーーッポン!バモニーーッポン!!」

結果的にその試合でグループステージ敗退の決まった
サッカー東京五輪アジア最終予選を兼ねた、AFCU23選手権の第2戦。

試合開始の1時間半前、
実況に向かうための最終確認をメディアセンターでしていた僕の耳に、
はっきりと、そして力強く、お馴染みのあの歌声が、聞こえてきました。

それもスタジアムの外から。

ちょうど
若きサムライたちが
シリアとの負けられない一戦に向けスタジアムに到着する時間でした。

僕は、急いで席を立ち、小走りでその歌声のもとへ向かいました。

そこには、胸の奥、からだの中心が、カーっと熱くなってくるような
第1戦では見られなかった光景が広がっていました。

第1戦、サウジアラビアに敗れた日本代表。
オリンピックには開催国として出場は決まっているものの
「史上初の金メダル獲得」を目指す日本にとって、
まさに試金石ともなる大会で、
グループステージの自力突破には勝つしかないという厳しい状況でした。
直前の取材でも、選手たちからは
「気持ちをみせる」「結果にこだわる」……そんな言葉が多く聞こえてきていましたが、
一方で、負けてはいけないプレッシャーも少なからず抱えているように
僕たちには見えていました。

そんな中で迎える一戦を前に
サポーターが、まさに、「俺たちもついている」と言わんばかりに
全力で、まっすぐに、バスから降りてくる選手たちにエールを送っていたのです。

タイのバンコク。
陽が落ちても、気温は30℃。この日は特に湿度も高く
じっとりとした空気が全身に張りつくような、暑さ。
照明の数も少ない薄暗がり。

そこに響く、人の数では計れない分厚さのある声援と、手と手がぶつかる音。

残念ながら、試合には敗れました。
ただ、そこには、サポーターの声に後押しされ、懸命に走り続けた選手たちがいました。
そして、選手たちとともに、肩を落としたサポーターの姿がありました。

あの声は、あの思いは、必ずや選手に届いていたと信じています。

2020年。オリンピック・パラリンピックがやってきます。

選手のそれだけではない、たくさんの思いの交錯に、
ひとつひとつ心を震わせて
スポーツの素晴らしさや、感動を伝えたいと、改めてそう感じた出来事でした。

担当アナウンサー